〝稚拙な横領〟を許した郡山ビッグアイ

〝稚拙な横領〟を許した郡山ビッグアイ

JR郡山駅前の複合ビル「ビッグアイ」の管理組合で、会計を担当する事務局長が長年に渡り横領していたことが分かった。その手口は極めて稚拙なものだが、それを長年許してきたのは、管理組合の構造的な問題がある。

背景に管理組合の複雑な構図

ビッグアイ
ビッグアイ

ビッグアイ管理組合は6月5日に会見を開き、事務局長が長年に渡り横領していたことを公表した。翌6日付の福島民友は次のように報じた。

「ビッグアイ」3755万円横領 20年超 事務局長、帳簿改ざん

JR郡山駅前にある複合ビル「ビッグアイ」の管理組合は5日、会計を担当する事務局長の男性(60)が、2004年ごろから4月末まで20年以上、約250回にわたり、組合員から集めた管理費や修繕費など総額3755万円を不正に引き出し横領していた、と発表した。出向元で市が筆頭株主の第三セクター「郡山駅西口再開発」は同日、男性の懲戒免職処分を決定。組合は全額返済されない場合、業務上横領容疑での刑事告訴を検討する。男性は、自身や親族が所有する不動産を売却し弁済する意向を示している。

組合は、市や県、民間企業などビルに入居する6団体で構成。男性は2003年から組合に出向していた。組合によると、男性は当初から事務局次長として会計業務を担い、当時の事務局長が管理する銀行印を無断で持ち出して払戻票に押印、銀行窓口から毎月1回、5、10、20万円のいずれかを引き出していた。隠蔽のため、帳簿には横領がなければ発生していたはずの利息分を架空計上し、帳尻を合わせた。25年4月に事務局長に就いた後も、同様の手口で横領を繰り返した。現金は所有するアパートの修繕費や生活費、遊興費に充てていたという。

原本確認せず監査

組合によると、会計監査を担う監事は組合員が歴任。監査の際には通帳原本を確認せず、男性が作成した決算書類を信じて監査報告書に署名・押印していた。外部の専門家がチェックする仕組みもなかった。

先月中旬、現在の事務局次長が関係団体からの決算書に関する質問に答えるため、男性に通帳原本の開示を求めたところ、「使途不明金をつくった」と認めた。

組合では、長年にわたって男性1人に資金の管理・実務権限が集中。ずさんなチェック体制が見過ごされ、不正を防げなかった。

組合は、監事を2人体制にするとともに、監査時の通帳原本の照合徹底や通帳と銀行印の分離管理などの再発防止に努める考え。5日、市役所で記者会見を開いた佐藤律子理事長は「透明で健全な管理体制を早急に構築する」と述べた。

本誌4月号では、ビッグアイが2001年4月の開業から4半世紀の節目を迎えたのを機に、特集記事を掲載した。地方都市の駅前再開発の先行事例と言える同施設の歩みを振り返ると同時に、「駅前から郊外へ」という流れは止められない時流になっていることを指摘した。そんな中でも、第三セクター・郡山駅西口再開発は、郊外型ショッピングモールとの競争にさらされながら、20期連続で当期純利益の黒字を確保してきた。曲がりなりにも体制が保たれてきたわけだが、それが最悪の形で崩れた格好だ。

一方で、この不祥事は、いち事務員の背任行為で片付けられるものではない。というのは、前述した特集記事の取材に当たり、市、県、民間所有者、第三セクター、管理組合が複雑に入り組む構造を目の当たりにしたからだ。

同施設は、1〜5階が商業施設「モルティ」、6〜7階が各種証明書発行や戸籍などの届出ができる「郡山市民サービスセンター」、展示室や各種コーナーを備えた「郡山市民ふれあいプラザ」、会議室などを備えた「郡山市民交流プラザ」で構成される「市民プラザ」、8〜14階が定時制と通信制課程がある県立郡山萌世高等学校、15〜19階が「事務所施設」(オフィスエリア)、20〜24階が高さ世界一としてギネス認定されたプラネタリウムがある「郡山市ふれあい科学館『スペースパーク』」で構成されている。

管理組合の内情

所有者は「ビッグアイ管理組合」だが、内実は複雑だ。市民サービスセンターがある6〜7階と、20〜24階のふれあい科学館は郡山市の持ち分、県立高校がある8〜14階は県の持ち分、商業施設「モルティ」やオフィスエリアは民間の持ち分というように、階層や区画ごとに所有者が分かれているのだ。それらが管理組合の構成メンバーとなる。

この構図が今回の問題を引き起こした一因と言える。

一つ、エピソードを紹介しよう。

県の持ち分について県教委に確認したところ、担当者は「8〜14階が県の持ち分で間違いありません。ですから、県(教委)も管理組合の一員です」との回答だった。その一方で、担当者は「実は、今回『政経東北』から問い合わせがあるまで、われわれ(※県教委本庁の担当者)もそのことを把握していませんでした。郡山萌世高校に確認して、(前述の持ち分や管理組合の一員であることを)初めて知りました」とも話した。

また、4月号記事では、ビルの修繕計画について、市都市政策課に尋ねた。その際、担当者は「基本的にはそれぞれの持ち分は所有者が費用を出し、エレベーターなどの共有部分は管理組合の『中期修繕計画』に基づき協議制で対応する」と説明していた。

市は自らの持ち分(市民プラザ等)の修繕や、指定管理者(郡山市文化・学び振興公社)に委託しているふれあい科学館の運営には公金を投入し、監査の目を光らせる。県も高校のエリアには責任を持つ。民間所有のエリアも同様だ。ただ、それらが合流する「管理組合」という共有のプラットフォームになると、当事者意識が希薄化しているように感じる。全員が施設(管理組合)の重要構成員でありながら、管理組合全体のお金の状況は把握していなかった。それが今回の事態を招いたと言えよう。

横領した事務局長は、2004年ごろから発覚に至るまで、ビルの維持・修繕費などがプールされている預金口座から、1回当たり5万〜20万円を250回以上にわたって不正に引き出していたという。横領によって口座残高が減少した帳簿上の辻褄を合わせるため、「架空の利息」を決算書類に計上していた。極めて稚拙な手口と言えるが、そんなことが何年も通用するくらい、管理組合の監査は機能していなかったということだ。

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