外食チェーン店・カレーハウスCoCo壱番屋創業者の宗次徳二さん(77)が、郡山市にクラシック音楽専用のコンサートホールを寄贈する意向を示している。土地を確保し、建物を建設して寄贈する考えだが、場所選びが難航しており、10年以上経っても実現していない。そのため、「せっかくの機会なのだから市でもサポートすべきではないか」という声も出ている。
公共施設見直し方針で維持管理が課題


宗次さんの音楽ホール寄贈構想を最初に報じたのは5月26日付の福島民友。郡山ロータリークラブ(佐藤修朗会長)の創立90周年記念式典で講師として宗次さんが招かれた際に構想を明かした。
宗次さんはクラシック音楽愛好家として知られる。6月7日配信の河北新報オンラインニュースによると、会社経営から退いた後の2007年、名古屋市に約28億円の私財を投じてクラシック専用ホール「宗次ホール」(310席)を建設。2021年には東京・調布市の桐朋学園に約230席のホールを寄贈している。
郡山市には2014年、震災・原発事故からの復興支援の一環として音楽ホールを寄贈したいと申し出て、当時市長の品川萬里氏と面会。市街地を視察し場所選びを行った。
にもかかわらず、まだ実現していないのは、宗次さんが希望する「JR郡山駅周辺」に音楽ホールを整備できるほどの適地がなかったためだ。河北新報オンラインの取材に対し、宗次さんは「候補地は一つに絞られているが、地権者との交渉などで最終決定に至っていないため明らかにできない」と明かしている。
ホールの規模は「室内楽に適した250~300席の小ホール」を想定しており、「クラシック音楽を廃れさせず、努力してきた演奏家の出演機会を増やすという目的に沿ったものにしたい」という。
市ではこれまで音楽ホール寄贈構想について公表したことはなく、今回の新聞報道で初めて明らかになった。当時、本誌も郡山市役所関係者や市議から、音楽ホール寄贈に向けた動きがあるというウワサを聞いていたが、10年以上、何の動きもないので、てっきり頓挫したものだと思っていた。講演の中であえて触れたのは、「まだあきらめたわけではない」という宗次さんの意思表明なのだろう。
郡山市は市民による音楽活動が盛んで2008年に「音楽都市」を宣言している。そうした中で、本格的な音楽ホールを求める声は根強く、市は2013年に音楽堂整備基金を立ち上げた。最初に積んだ5億円に加え、市内の音楽団体が寄付を続けており、市議会昨年12月定例会の時点での総額は5億0754万円となっている。2015年12月定例会では、「音楽専用コンサートホールの早期設置について」という請願が採択されている。
それだけ音楽ホールを熱望する声が多いということだ。
ただし、市議会2025年6月定例会の一般質問で、音楽堂整備について問われた際、執行部は次のように答弁している。
「けんしん郡山文化センター、音楽・文化交流館(ミューカルがくと館)、中央公民館多目的ホールなど音楽環境の整備に努めてきた」
「一方で市の文化施設は老朽化が進むけんしん郡山文化センターの長寿命化を最優先課題として取り組んでいる。音楽堂の整備については、今後の人口減少による利用需要の変化や厳しい財政状況、既存施設の老朽化による更新費用の増加等を見据え、郡山公共施設等総合管理計画に基づき検討していく」
音楽堂整備についてかなり慎重になっている様子がうかがえる。
市は慎重な姿勢に終始
市内の経済人の中には「せっかく宗次さんが私財で音楽ホールを整備してくれると申し出てくれているのだから、音楽堂整備基金を活用し、官民連携で大々的に整備するべきだ。県の旧郡山合同庁舎跡地を活用する手もある」という意見もある。
しかし、担当部署である市文化振興課の担当者は「民間でそうした施設ができれば音楽環境の充実につながるので喜ばしいが、市としてどのように関わっていくかに関してはまだ分からない部分が多い。まずは老朽化が進むけんしん郡山文化センターについて、改修や建て替えを視野に庁内検討チームで議論し、必要な機能を整理して、そこから音楽堂に関する議論が始まる形になると思います」と慎重な物言いに終始するばかりだ。
ネックとなるのは、建設費は宗次氏が負担するが、寄贈後の維持管理費は市が負担することだ。本誌2月号「郡山市103公共施設廃止の波紋」という記事でも触れた通り、市は昨年、管理している公共施設の使用年数や稼働率などをチェックした。その結果、39施設が「サービス廃止」(=建物評価は高いがサービスは廃止すべき)、64施設が「廃止」(=サービスは廃止し建物も解体すべき)という評価だった。
昨年、市が住民説明会で配布した資料によると、同市は市域面積が大きい分、公共施設も多く、築30年以上の建物が約75%を占める。次期計画では更新費用は8266億円、投資可能額は3975億円で、更新費用が投資可能額の約2倍に上る見通しだ。すべての公共施設をいまのまま維持して更新していくのは不可能な状況となっているのだ。
2月号記事では同市富久山町の公民館の分館が廃止対象になっており、利用している住民から戸惑いの声が上がっている様子をリポートした。私財を投じて施設を寄贈する人は、市にとって何よりありがたい存在のはずだ。しかし、新たに維持管理費が発生することを考えると、もろ手を挙げて寄贈の申し出を受け入れるわけにもいかないのだろう。
前出・河北新報記事によると、「品川前市長とは3、4回会い『市は全面的に協力する』旨の覚書を頂いた」という。品川氏は市長選でも音楽ホール建設を公約に掲げていた。
今回宗次氏、品川氏への取材はかなわなかったが、10年以上動かなかった構想は再び動き出すのか。「音楽都市・郡山」の構想が今後どのような形で結実するのか注目される。

























