玉川村の道の駅の管理・運営などを担う第三セクター・こぶしの里の現場責任者である所長が突如退任したという。理由は「一身上の都合」のようだが、村内では「実質更迭のようなもの」といった見方もある。真相を探った。
村内で囁かれる「更迭説」の真相

こぶしの里は、玉川村から指定管理委託を受け、道の駅たまかわと同所に隣接する農産物加工所の管理・運営を行っている第三セクター。2002年設立で、出資者は村、JA夢みなみ、玉川村商工会のほか、100人近い地元の農作物生産者で構成される。代表取締役には歴代の村長が就いているが、充て職のようなもの。実質的に現場を取り仕切っていたのは穂積俊一取締役所長だった。
その穂積氏が突如退任したとの情報が寄せられたのは年明け早々。それから少し間を置き、1月下旬に同社の法人登記簿を確認したところ、穂積氏の退任登記はされていなかった。ただ、本誌が確認したところ、穂積氏が昨年12月末で退任したのは間違いないことが分かった。ちなみに、1月30日時点での登記上の役員は、代表取締役・須釡泰一(村長)、取締役・穂積俊一、岩谷幸雄(商工会長)、佐久間悦男、倉鎌利治、小林喜裕、吉村明美、監査役・鈴木喜一、車田覚藏の各氏。
村内では「穂積所長の退任は実質更迭(クビ)のようなもの」という人もいる。
「穂積所長は、もともとは商工会職員として玉川村商工会に赴任してきた。そこで10年超勤めた後、こぶしの里の現場責任者になった。その大部分は(2007年から2023年まで4期16年務めた)石森春男前村長時代で、石森村長からは全面的に任されていたと言っていい。ただ、石森村長が退任し、須釡村長になってから2年ほどで穂積所長が辞めたのは、そういうことでしょう。すなわち、須釜村長のもとで新しい体制を作っていく、と」(ある村民)

一方で、ある議員によると「会計責任者の職員も穂積所長の後を追うように辞めた。今後のことを考えると、むしろそっち(会計責任者が辞めたこと)の方が大変かもしれない」という。
現場を取り仕切っていた2人が同時期に辞めたことで余計に「実質更迭(クビ)のようなもの」、「新しい体制を作っていくための措置」といった見方が広がったのかもしれない。加えて、今後の体制をどうしていくのかといった問題もある。
それらの点について須釡村長に話を聞いた。
「まず、こぶしの里(道の駅たまかわ)は村の魅力発信、それから農家の方々の所得向上(※野菜などを持ち込んで道の駅内の農産物直売所で販売)という点で、非常に需要な施設という位置付けです。その土台、仕組みを作ったのが穂積所長です。その穂積所長から昨年、『家庭の事情もあって、今年(2025年)いっぱいで辞めたい』との申し出がありました。最初は株主総会(6月)まで、それが無理なら年度末(3月末)まで待ってもらえないかとお願いしましたが、穂積所長の退任の意思が固かった。私も『家庭の事情もあって』と言われてしまっては、それ以上は何も言えないので、昨年12月末で退任ということになりました。ただ、引き継ぎの関係もあって、1月に入ってからも必要なときは来てもらっていました」
記者が「村内では『実質更迭のようなもの』と見ている人もいるようだが」と尋ねると、須釡村長はこう話した。
「そういう声があることは私のところにも届いています。ただ、『とんでもない。むしろ、私は考え直すように促したんですから』と」
同時期に会計責任者が辞めたことについては次のように述べた。
「(会計責任者の職員から)『穂積所長に先を越された形になってしまいましたが、実はやりたいことがあって、前々から(退職を)考えていたんです』と言われ、その方についても慰留したんですが、1月末で退職しました。幸いと言ったら語弊があるかもしれませんが、この時期(冬期)は農家の方の持ち込みがあまりないので、何とか現場が回ったという感じです。もしこれが収穫最盛期だったら、そうはいかなかったでしょうね」
今後の体制については現在構築中という。
「穂積所長の後任はまだ決まっていませんが、私が村長就任後、人材育成という意味も込めて、穂積所長の見習いというか、副所長格の職員を採用しており、いまはその方に職務代理のような形で対応してもらっています。役員も単なる取締役ということではなく、それぞれ担当分野を付けるようにしました。それによって意識も変わり、いろいろなアイデアが出てくようになりました。4月までに体制を固めて、〝全員野球〟で乗り切っていきたいと思っています」
穂積氏にも話を聞いたところ、次のように話した。
「退任は急なことではなく半年ほど前から考えていました。(村内では実質更迭のようなものと見ている人もいるとの問いに)そういうことはありません。玉川村には商工会に13年、こぶしの里に23年ですから、長く居過ぎたという感じですかね。いまは地元の泉崎村で農作物をつくっています」
須釡村長、穂積氏ともに「更迭説」を否定した。
道の駅石川の影響

一方で、穂積所長に加えて現場を取り仕切っていた職員が同時期に辞めたことに対して、「実質更迭(クビ)のようなもの」、「新しい体制を作っていくための措置」ということがもっともらしく語れていた背景には、隣接する石川町で道の駅が建設されていることも関係していよう。当然、同じ人が長期間、一定の職にあると、いい面もあれば、新しいことが生み出されにくいといった側面もある。すなわち、近隣に新しい類似施設ができる→当然影響が懸念される→体制を一新するなどして何か新しい仕掛けをしていく必要があるのではないか、ということだ。
「道の駅 石川」は昨年12月に登録され、今年夏のオープンに向けて建設が進められている。場所は国道118号沿い、石川町字大橋地内で、24時間利用可能なトイレ、広めの駐車スペース、ベビーコーナー、地元の新鮮な農産物や加工品の直売所、町内の飲食店が関わる飲食ブース、屋内交流施設やこども遊び場、ドッグラン、災害時に広域避難場所として機能する多目的広場などを備える。道の駅たまかわとは、直線距離で6㌔ほどしか離れていない。
指定管理者にはTTC(静岡県)が選定され、運営は同社の現地法人「さくらの杜」が担う。TTCは関東圏を中心に15の道の駅の管理・運営を行っている実績がある。
須釡村長はこう話す。
「穂積所長が退任前、ざっくばらんに『影響はありそうか』という話をしました。道の駅たまかわはここにしかないものを求める人が多いと言いますか、固定客が多いんですね。ですから、遠方から来た人がハシゴするという点で、相乗効果が期待できるのではないかと思っています」
一方で、前出の議員は次のように明かした。
「向こう(石川町)は新しい施設で言わばプロが経営する、こっち(玉川村)は役場の延長のような組織(第三セクター)ですから、太刀打ちするのは難しいと思いますよ」
こぶしの里の業績
別表に直近3年のこぶしの里の業績をまとめた(民間信用調査会社調べ)。昨期は300万円超の赤字で、年間1000万円を超える指定管理料があった上での数字だから、実態はもっと厳しい。
売 上 高当期純利益
2023年 1億0500万円 ――
2024年 1億0100万円 56万7000円
2025年 9600万円 −322万6000円
「こぶしの里の出資比率はもともとは村が50%超だったが、いまから10年以上前に生産者の出資者を募り、村の出資比率が50%を下回った。だから、議会では詳細が報告されず、正直分からない部分も少なくない。これを機に、そういったことも変えていく必要があるのではないか」(前出の議員)
地方自治法(第243条3の2項)では、自治体の出資比率が2分の1(50%)以上の法人については、毎年度、経営状況を説明する書類(決算書など)を議会に提出しなければならないと定めている。言い換えると、出資比率が50%未満であれば法的には決算書などを議会に提出する義務はないということになる。ただそれは「提出しなくてもいい」ということであって、「提出してはいけない」ということではない。自発的に議会に決算書などを提示して、それを踏まえて議論することはできる。今後はそういった対応も必要ではないかということだ。
いずれにしても、当初囁かれていた「更迭説」は須釡村長、穂積氏ともに否定したものの、道の駅たまかわが変革期を迎えているのは間違いない。

























