東邦銀行は6月26日に福島市の本店で株主総会を開いた。注目は、同行が市内で景観破壊や光害を起こしている先達山メガソーラーに他行と協調融資したことについて、反対する市民団体が株主として初めて経営陣に見解を問うたことだった。同行は「事業からは撤退しない」、「エージェントを通じて改善を求めていく」と回答し想定された波乱は起きなかったが、取り繕う姿勢が別の問題を招いた。前年までは株主総会のノーカット動画をネットに公開していたのに、今回は質疑応答の時間をカットして公開したのだ。紛糾とは言えなかった場面にもかかわらずひた隠す仕草には、同行の恐れが透けて見える。
メガソーラー融資の質疑応答をカット


本誌は6月号に「東邦銀行〝波乱必至〟の株主総会 業績好調も労基署指導とメガソーラー融資が火種」という記事を掲載した。2026年3月期連結決算では売上高に当たる経常収益は過去最高を記録し、3期連続の増収増益。株価が上昇し続ける。(表参照)。一方で地元福島市の吾妻山系先達山で景観破壊や光害を起こしているメガソーラーに融資した責任を市民団体「先達山を注視する会」が追及していた。経緯は6月号記事にまとめたので引用する。東邦銀行が言う「エージェント」は、SBI新生銀行を意味する。

東邦銀行は、SBI新生銀行がアレンジャーとなって組成したシンジケートローンに参画し融資に関わっている。事業主体であるカナダの再エネ投資会社・Amp Energy(アンプ社)がつくったAC7合同会社に2022年3月、プロジェクト資金として20億円を供与した。同ローンにはSBI新生銀行も74億円を融資しているほか、静岡銀行が30億円、新生信託銀行が17億円、秋田、七十七、鳥取、福井の各行がそれぞれ10億円、東北銀行が5億円供与し、総額186億円に上る。
脱炭素を進める投資は世の中の流れだが、先達山メガソーラーへの投資もその一環だった。ちょうど融資した年、佐藤稔頭取は週刊『金融財政事情』2022年11月1日号で「東邦銀行が先頭に立ち地域の脱炭素を推し進める」と次のように誇った。
《福島県は原子力発電所の事故もあり、太陽光パネルをはじめとした再生可能エネルギーに対する関心や需要が高い地域だ。再生可能エネルギー関連の融資実行額を見ても、22年までに延べ2765億円、実行件数で633億円に上っている》
これに対し、先達山メガソーラー問題の調査を続ける市民団体「先達山を注視する会」の松谷基和代表(東北学院大教授)は、本誌3月号で、東邦銀行経営陣に直接意見をぶつけるため株式を購入したことを明かし、次のように述べていた。
「大切なのは私たちが感じている疑問を多くの方に共有してもらうことだ。もし私が株主総会で質問した時、他の出席者から『やめろ』みたいな雰囲気が出てはまずい。東邦銀行にとってこの融資はいいのかどうかを、株主の皆さんに考えてもらう機会にしたい」
株主総会での質問はどうだったのか。
「最初に質問した2人の後から先注会メンバーが質問しました。6人からメガソーラー関連の質問でした。に関する質問が相次いだことに『なんだ』と怪訝な顔をする株主もいましたが、閉会後に『こんな問題があったのは知らなかった』と話を聞きに来てくれる人が複数人いたのが収穫でした。福島市外の方には景観破壊や光害の問題がある先達山メガソーラーに東邦銀行が融資していることはあまり伝わっていないようです」(松谷さん)
株主総会という開かれた場でされた質問を地元紙2紙も取り上げ、同行が地元で環境問題を引き起こしているメガソーラーへ融資している事実はこれまでも以上に広く知られることになった。
ここにきて松谷さんは、東邦銀行が株主総会で行われた先注会とのやり取りをひた隠そうとしている点を指摘する。
「東邦銀行は2024年に行われた第121回株主総会から1時間以上にわたって総会全部を記録し、公式ユーチューブチャンネルに公開しています。関連の質問でした。25年も同様です。ところが今年は経営陣からの説明だけを記録した25分の動画しか公開していない」(同)
松谷さんによると、株主総会の様子を音声や動画で記録することは禁じられていたため素直に従った。「後で株主にはすべてを記録した動画を送る」と言われたので安心したという。24、25年のノーカット動画は株主総会から2カ月後の8月下旬に公開されている。今年の動画は6月30日に公開され、例年よりも早いがなぜかわざわざ質疑応答部分をカットしている。24、25年の動画では、経営陣に長々と苦言を述べる株主がいたので、単に「経営陣を批判したからカットした」わけではないようだ。
改変されたメガソーラー関連質問
総会ではどのようなやり取りがなされたのか。記憶やメモを基に松谷さんが説明する。
「質問は1人につき1問、議長(佐藤頭取)が指名して質問専用の席に行き、終わると席に戻ります」
前年の動画で佐藤頭取は「質問は1人2回まで」、「質問席に来ていただくのは、動画を撮影しており、質問者の姿が見えないようにプライバシー保護のため」と説明していた。今年の株主総会では事前にオンラインで寄せられた質問の中で質問者が多かったものについて佐藤頭取が一括で回答した。読み上げた内容は同行ホームページに7月3日に「質疑応答概要および事前質問への回答について」の題でまとめられた。
それによると、11項目ある質問とその回答のうち7項目が事前質問への回答。この文書に基づくと、残り4項目が会場で出た質問と言える。1つ目は「南東北元気プロジェクトについて」、2つ目が「年間通して株主意見等を受付してほしい(ご意見)」、3つ目が「長期経営計画における計数計画の実現可能性について」、そして4つ目が「スキルマトリックスについて」。
松谷さんは首を傾げる。
「会場の質問者の数と合いません。1人1問で最初に2人、次に6人が先達山メガソーラーについて聞きました」
文書にあるメガソーラー関連の質問は、「事前質問を株主総会で回答した」と処理されている。東邦銀行の回答は次の通りだった。
「先達山太陽光発電事業に関する融資につきましては、株主さまや地域住民の皆さまから様々なご意見・ご懸念が示されていることを強く認識しており、 融資金融機関として重く受け止めております。現時点では、地域住民の皆さまから示されている様々なご意見・ご懸念を踏まえ、エージェントと連携し、景観・反射光等について早期かつ抜本的な対策の検討・実施を事業者に強く要請しております。今後もエージェントと連携し、地域との共生に向けた改善策を求めてまいります」
関連の質問でした。
株主総会参加に踏み切った思い
松谷さんの記憶によると、実際に行われたメガソーラー関連の質問は次の6つだった。質問と回答は先注会のホームページに載っているのでそちらを呼んでいただきたい。本誌では質問のみを掲載する。
①環境配慮に優れた取締役がいるのになぜ環境問題が起こっている先達山メガソーラーに融資したのか。
②取締役は先達山の問題について自分の言葉で語ってほしい。
③事業主体のアンプ社にはきちんと指導しているのか。
④事業からの撤退は考えないのか
⑤「地元の金融機関として事業に融資しているのは恥ずかしい」という失望の表明。
⑥東邦銀行が福島ユナイテッドFCのメインスポンサーであることに関連して、同クラブが公表したスタジアム構想のパースに画角から入るはずのメガソーラーが入っていないことについて。
⑤は意見の表明、⑥は皮肉を込めた質問なのでそもそも回答に窮し、東邦銀行がないものとして扱いたい気持ちは分かる。ただ、質問の構成や趣旨を改変したために、「そんなにメガソーラーに触れられたくないのか」と思われるようになった。極めつけが、質疑応答部分のカットだった。
質問の意図を同行にとって都合のよい内容に受け取り、トンチンカンな回答をした例もあった。質問①の「環境配慮に優れた取締役がいるのになぜ融資したのか」という質問を、同行は意図的にかどうかは不明だが「スキルマトリックスに関する質問ですね」と技術的な質問に取り違えられた取り違えたという。
松谷さんら先注会は、東邦銀行が言った「株主に総会の全容を収めた動画を送る」との約束を信じ待っているという。
「経営陣と直接対話するために小口株主となりました。総会で質問する手法は、これまで意見を伝える窓口が閉ざされていたからこそ取らざるを得ませんでした。『総会屋のよう』と思う人もいるかもしれませんが断じて違います。東邦銀行へは礼儀を尽くし、『録音、録画は禁止』、『質問は1人1つまで』の指示に従っています。私たちの質問態度が礼と敬意を尽くしたものかどうかを広く判断してもらうためにも、東邦銀行には例年通り質疑応答動画を公開してほしいです」
東邦銀行は例年であれば8月下旬に株主総会の全記録動画を公開しているが、今年はカットした動画を総会から4日後に公開しておりイレギュラーだ。「総会の動画を公開した」との言い分は成り立つが、よほど今年の株主総会の様子は知られたくないことがうかがえる。
本誌は総会動画の公開方針について、取り違えられた⑴質疑応答も含め公開する方針か、⑵株主向けの総会記録動画はどのような形で送るか、⑶今年の総会動画だけ質疑応答部分をカットして公開した理由など6項目について質問した。
同行総合企画部の広報担当者は、
「株主総会に関する内容は株主の個別の事項に関わるので公平性の観点から回答を差し控える」と回答。
本誌は例年通り8月下旬の公開を待っている。

























