東邦、福島、大東の県内3地銀の2026年3月期決算が出そろった。政策金利引き上げに伴い利回りが改善し、連結ベースで3行ともに黒字を確保(表参照)。黒字経営ならば金融庁からの合併圧力をかわし、独立性を維持できる。しかし、第一地銀の東邦銀行は業績堅調の裏で労働問題を巡る訴訟や福島市で景観破壊を起こすメガソーラーへの融資に関して企業倫理を問われている。市民団体が株式を取得し6月の株主総会でメガソーラーへの融資を問う動きがあり、一波乱ありそうだ。
業績好調も労基署指導とメガソーラー融資が火種


県内3地銀の2026年3月期連結決算
| 経常収益 | 経常利益 | 純利益 | |
| 東邦銀行 | 924億6500万円 (31.3%) | 170億9000万円 (52.6%) | 123億5300万円 (65.9%) |
| 福島銀行 | 151億7500万円 (13.1%) | 6億8700万円 (前期は11億7500万円の赤字) | 7億3600万円 (前期は12億5200万円の赤字) |
| 大東銀行 | 154億9900万円 (17.1%) | 24億9300万円 (23.6%) | 16億8000万円 (26.3%) |
金融庁は、将来の収益性や健全性に改善の余地がある金融機関を念頭に「地域金融力を強化する」の名の下、期限付き資金交付という「飴」と監督強化という「鞭」を打ち出し合併を後押ししている。福島県では、昨年12月、東邦銀行がHSホールディングス(東京都港区)から大東銀行の株式を取得し、新たな筆頭株主となったことが「合併か」と衝撃を呼んだ(本誌2月号)。大東銀行がは純利益がが16億8000万円(前期比26・3%増)で15期連続で黒字を維持し増配。27年3月期でも黒字を見込んでいるため、合併に応じる理由は見当たらない。
福島県で第一地銀が第二地銀の筆頭株主となった背景には、オーバーバンキングにあると言われる現状があった。東北各県の第一地銀シェア率(45~71%)を比べると、東邦銀行のシェア率(39・5%)は低い。商都・郡山に本店を置く大東銀行の買収に県外の金融機関や海外のアクティビストが関心を寄せていたとされ、東邦銀行が先手を制して「守り」のために株式を取得したとの話もある。復興予算が投下される浜通りや郡山に食い込む常陽銀行や七十七銀行など県外勢を牽制する狙いもあった。(本誌2月号より)
「攻め」の面も大きい。大株主として大東銀行の経営状況を把握し、経営統合を含む更なる協業深化に進むか、それとも「協業の効果を生み出せない」と株式を手放すかをじっくり検討する立場と時間を確保した。
東邦銀行と大東銀行は、ゆくゆくは合併を考えているのか。株式取得後の両行の決算発表の場では、その質問が集中したようだ。福島民報5月16日付が紙面を割いている。
《東邦銀行と大東銀行は15日、東邦が大東の筆頭株主となって初めての決算発表をそれぞれ行った。東邦の佐藤稔頭取は業務連携に向けて「さまざまな分野の連携に向け、5カ月ほど前から(大東側)に申し入れている」と述べ、早期の協議入りに意欲を示した。大東の鈴木孝雄会長兼社長は協議の進捗について「話し合いはしていない」と述べるにとどめ、連携に対する姿勢のちがいをうかがわせた》
同記事によると、東邦銀行の佐藤頭取の見解は次の通り。
《(前略)人口減に触れ、地銀として地域経済の持続的発展に向け「一緒になって、顧客に対する仕組みを作る必要がある」と強調。連携可能な点にはコスト削減や事業承継支援などを挙げ、「競争すべきところはし、連携するところは(一緒に)進めたい」と語った。
将来的な経営統合の可能性について「考えは一切ない」と否定した。県内での「競争」を維持しつつ、共通課題では「連携」する地銀間の新たな関係性を探る姿勢を鮮明にした》
大東銀行の鈴木会長兼社長の見解はこうだ。
《(前略)経営の独立性を保つ考えを示した。顧客から「県内の銀行の選択肢を減らさないでほしい」との要望や、順調な業績を念頭に「他行の傘下に入らなければならない状態ではない」との意見が届いていると説明した。
全国で地銀再編が進む状況に関しては「注目している。(金融機関双方が)互いに良い発展ができるマッチングはあると思う」と述べた》
市民団体の質問に答えるか
6月に予定されている両行の株主総会では、株式取得と連携の内実についての質問が多く出るだろう。加えて、東邦銀行は業績以外の質問で一悶着ありそうだ。
本誌3月号では、「東邦銀行を憂鬱にさせる二つのトラブル」を報じた。一つは、試用期間終了後に正社員に登用する契約を提示されて採用された元従業員が、期間を恣意的に延長され事前の説明にはなかった嘱託職員として雇用され続けたことは労働基準法に違反するとして賃金返還を求めて提訴した問題。裁判の過程では、別の労基法違反をうかがわせる事案を監督指導するために、労基署が同行本店に臨場していたことが明らかになった。
もう一つは、福島市で景観破壊や光害を起こしている先達山メガソーラーに融資したことを巡り、反対する市民団体が株式を取得し、株主総会で経営陣に見解を問う準備をしていることだ。
東邦銀行は、SBI新生銀行がアレンジャーとなって組成したシンジケートローンに参画し融資に関わっている。事業主体であるカナダの再エネ投資会社・Amp Energy(アンプ社)がつくったAC7合同会社に2022年3月、プロジェクト資金として20億円を供与した。同ローンにはSBI新生銀行も74億円を融資しているほか、静岡銀行が30億円、新生信託銀行が17億円、秋田、七十七、鳥取、福井の各行がそれぞれ10億円、東北銀行が5億円供与し、総額186億円に上る。
脱炭素を進める投資は世の流れだが、先達山メガソーラーへの投資もその一環だった。ちょうど融資した年、佐藤稔頭取は週刊『金融財政事情』2022年11月1日号で「東邦銀行が先頭に立ち地域の脱炭素を推し進める」と次のように誇った。
《福島県は原子力発電所の事故もあり、太陽光パネルをはじめとした再生可能エネルギーに対する関心や需要が高い地域だ。再生可能エネルギー関連の融資実行額を見ても、22年までに延べ2765億円、実行件数で633件に上っている》
先達山メガソーラー問題の調査を続ける市民団体「先達山を注視する会」の松谷基和代表(東北学院大教授)は、本誌3月号で、東邦銀行と敵対するつもりはないと強調し、次のように話していた。
「大切なのは私たちが感じている疑問を多くの方に共有してもらうことだ。もし私が株主総会で質問した時、他の出席者から『やめろ』みたいな雰囲気が出てはまずい。東邦銀行にとってこの融資はいいのかどうかを、株主の皆さんに考えてもらう機会にしたい」
福島県の第一地銀の立場が問われている。東邦銀行の株主総会は6月26日に福島市の本店で開かれる。

























