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【郡山市】品川萬里市長インタビュー【2024.6月】

【郡山市】品川萬里市長インタビュー【2024.6月】

しながわ・まさと 1944年生まれ。東京大学法学部を卒業後、旧郵政省に入省。郵政審議官を経てNTTデータ副社長、法政大学教授など。現在市長3期目。

 ――9月に市制施行100周年を迎えます。

 「大正13(1924)年に郡山町と小原田村が合併し、郡山市が発足してから今年でちょうど100年になります。昭和6年につくられた郡山市歌の中に『東北一は市の理想』という歌詞がありますが、これは昭和初期の市民の目指すところだったようです。本市の100年間の出生数を見ると市制施行50周年を迎えた1974年に4838人と最大数を記録し、その後は減少しています。ただ県内中核市の中では現住人口、法人数は最も多く、個人市県民税収入額も一番高い。人口が減少している中でも市県民税収入額が高いのは市民・企業の皆さんの努力によるものだと思っています。先人たちは長期的な視野に立って行政運営をされてきました。私たちも先人に勝るとも劣らない努力を続け、次の100年に向け発展・維持していく礎を築いていきます」

 ――市制施行100周年の主な記念事業について。

 「一昨年、市制施行100周年記念事業プロモーション委員会(大槻順一座長)を立ち上げ、記念事業への幅広いご意見を頂戴してまいりました。キャッチフレーズは『ひらけ 未来へ こおりやま』です。主な記念事業としては音楽祭、ラッセン氏の絵画の市内小中学校への巡回、本市フロンティア大使を務める『GRe4N BOYZ(旧GReeeeN)』による100周年記念楽曲の制作、同じく本市フロンティア大使の箭内道彦さんがアドバイザーを務めるうねめまつり、東北SDGs未来都市サミットの開催などが予定されています」

 ――記念事業の一環で開成山公園が生まれ変わりました。

 「2017年に都市公園法が変わり、民間の知恵や資金を活用するパークPFI制度が生まれました。この制度を活用し、主に開成山公園の西側に新しくカフェや子どもたちが広々と遊ぶことができる芝生広場を開設し、今年4月にオープンしました。開成山フロンティアパートナーズが指定管理者となり、公園の管理運営や様々なイベントを行っています。福島県は東北地方ですが、経済的には首都圏に入ると思っています。磐越道、常磐道、関越道がつながり首都圏の新たな環状線の役割を果たしています。本市は中央に東北道が走り、新幹線を使えば約80分で都心に行けます。近隣の市町村には福島空港もあります。経済的・地理的に優位な本市のリニューアルした開成山公園に遠方からも多くの方に足を運んでいただきたいですね」


 ――「ベビーファースト(子本主義)実現型」課題解決推進都市の創生」を掲げるなど、子育て支援に熱心に取り組まれています。  

 「私は初めて郡山市長選に立候補した時から『子本主義』というキーワードを訴えてきました。一方、日本青年会議所は子育て世代が子どもを産み育てたくなる社会を実現するため『ベビーファースト運動』を全国的に展開していますが、子本主義とベビーファーストは子どもを産み育てることの意義深さや人生の楽しさが感じられる言葉と考えており、この二つの言葉をもとに『子どもが安心して産まれ、育つまちの実現』を目指しています。実際に様々な取り組みを進めていますが、県内初の施策としてはLINEでの子ども・子育て相談や国の無償化に該当しない第一子保育料の無料化・軽減、県内市町村初の施策としては保育士・保育所支援センターの設置、全国初の施策としてはお子様連れでも安心して職業相談ができるハローワーク郡山マザーズコーナーの設置などが挙げられます。また、結婚―妊娠―出産―乳幼児期から入学前―入学から小中高まで様々な施策が利用できることを示したウェルビーイングロードマップを掲載したパンフレットを作成し、本市の子育て支援について周知を図っています。

 今年度当初予算を見ても高齢者支援は698億円、教育・子育て支援は346億円を計上していますが、これは子どもの人数より高齢者の人数の方が多いこともあり、1人当たりに換算すると、高齢者は79・1万円、年少者は92・6万円ですから、手厚い子育て支援を講じていることがお分かりいただけると思います。

 現状は若い世代が減少しているので、残念ながら少子化は止まりません。それでも、様々な施策を講じたり予算を確保することで『子どもが安心して産まれ、育つまちの実現』を目指していきます」
 ――デンソー女子バレーボール部が本拠地を愛知県西尾市から郡山市に移し、新たに「福島デンソーエアリービーズ」に生まれ変わります。

 「本市を経済的・地理的に適地と思っていただけたことを大変喜ばしく感じています。今回の本拠地移転により、市内にはバスケットボール、野球、アイスホッケーと計四つのトップスポーツチームが活動拠点を置くことになりました。スポーツは単なる勝敗だけでなく、見る者に大きな感動と勇気を与えてくれます。スポーツでまちおこしという考え方がありますが、選手たちの素晴らしいプレーが見る者に力をみなぎらせ、それが本市の活性化に結び付き、ひいては経済の成長にもつながっていくことを期待しています」

 ――ところで、エアリービーズはホームアリーナとなる「宝来屋 郡山総合体育館」に隣接する旧豊田浄水場跡地に練習用施設をつくりたいと市に申し入れていますね。

 「一部を借用させてほしいということで、今のところその方向で検討したいと考えています。チームの希望に沿えるように努めていきます」

 ――今年度予算編成について。

 「予算編成に当たっては、これまでの『バックキャスティング思考』による戦略的な施策推進に加えて、『フィードフォワード』という考え方を意識しました。フィードフォワードとは、今後こうなるかもしれないと予測し、それが非常に高い確率で起こりそうなら今何をやらなくてはいけないのかを考えて政策立案するやり方です。

 分かり易い例で言うと気候変動が挙げられます。今後ますます温暖化が進めば、農産物の適地は変わっていくと思います。コメは昼と夜の温度差が重要で、今後は湖南地方が適地になる可能性があります。ワイン用ブドウも、福島県が適地に変わっていくかもしれません。先々を見据え、バックキャスティング思考とフィードフォワードの考えで行政と産業界が協力して取り組んでいくことが今後大切になると思います」

 ――任期満了まで残り1年を切りましたが、今後の抱負を。

 「どの仕事でも定年や任期があるわけですが、私はどんな立場にあっても心掛けるべきは『今、此処で最善を尽くす』ことだと思います。その思いを持ちながら、残り任期を務めていきます」

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