【川内村】遠藤雄幸村長インタビュー【2024.6月】

【川内村】遠藤雄幸村長インタビュー【2024.6月】

経歴

えんどう・ゆうこう 1955年1月生まれ。原町高、福島大教育学部卒。㈲わたや社長。川内村議を経て、2004年の村長選で初当選。今年4月の村長選で無投票で6選を果たした。

 ――4月に行われた村長選挙で、無投票で6選を果たされました。

 「これまで、村民をはじめ職員の皆さんに支えていただき、村長職を20年務めさせていただきました。無投票で6期目の重責を担うことになりますが、そういう意味では僕は幸せだと思っており、感謝の言葉しか見つかりません。今後も緊張感と責任を持ち、しっかり職務に精励していきたいと思っています。川内村は震災・原発事故で大きな被害を受けました。さらなる復興・創生を進めていきながら、帰還促進にも努め、村民の幸せのために全力投球していきたいと思います」

 ――国道399号、県道小野富岡線が開通しました。

 「経済的な交流や観光分野の効果は大きいと感じています。実際、週末になると村の観光資源でもある『かわうちの湯』や『いわなの郷』には、多くの観光客が訪れるようになりました。国道399号と小野富岡線のちょうど結節点にあるのが川内村で、そういう面では観光だけではなくさらなる経済的な効果を期待しています。道路がつながったことで、いわき市小川町まで約30分で行けるようになり、いわき市がより身近になりました。今後はいわき市の商工団体と川内村商工会などが連携することによってイベント等の開催や特産品の開発につながってほしいと思います。

 救急医療の面でも、近隣のいわき市や小野町、平田村に公立病院、総合病院があり、以前に比べて安心感が格段に上がりました。高校生はいわき市の高校に通う際は下宿などをしていますが、今後は中通りの高校を含めて通学の面でも利便性が向上し、かなりの波及効果があると思っています。また、国道399号は『あぶくまロマンチック街道』とも呼ばれ、昨年、当村と飯舘村、浪江町、葛尾村、田村市の5市町村で推進協議会を設立しました。それぞれ連携をしながら特産品の開発を行うなどの取り組みを進めていきたいと思っています」

 ――新庁舎整備の検討を行っています。

 「現庁舎は築54年で、東日本大震災やその後の地震で被害を受けました。その都度、修繕を行ってきましたが、新庁舎建設の機運は高まっています。建設候補地についてはもう少し議論が必要と考えており、今後、議会とも相談しながら進めていきたいと思います。同時に旧中学校の利活用に関しても、議会に説明しながらその方向性を打ち出していきたいと思っています」

 ――旧中学校の利活用に関しては昨年も話されていました。

 「利活用検討委員会で昨年から議論しており、まだ論点の中間報告の段階ですが、やはり賑わい創出の拠点となるような要望が多く、一例として、道の駅的な施設やスポーツの合宿所兼練習場、各団体事務所の入居スペースやコワーキングスペースといった意見が出ています。

 また、先ほど話した役場新庁舎整備の話と関連して、旧中学校施設をリフォームして役場庁舎にしてはどうかとの提案もあります。建設費はかなり抑えられると思いますが、旧中学校は建設から約30年経過しており、将来、再度改修が必要になってくる可能性があります。また地震など有事の際、庁舎は地域の防災の拠点にもなりますから、やはりしっかりしたものをつくりたいと思っています。いずれにしても、様々な提案を踏まえて議会と協議を行っており、今年度中には方向性を出せればと思っています」


課題を希望に変える

 ――農業の現状について。

 「まず水稲は震災前と比べて8割ほどで作付けが行われています。その中でも事業体や組合など、以前より規模拡大した形で稲作が行われています。そうすることで効率化が図れるほか、担い手不足をカバーしています。震災後にスタートしたワイン事業は、今年で10年目になり、少しずつワイン用ブドウの栽培面積や収穫量が増え、昨年収穫したブドウ等からなるワインの生産は約2万本を計画しています。これから瓶詰等の工程がはじまりますが、質のいいワインが醸造・生産されると思います。こういった新しい産業が少しずつ芽生えてきているのは、村にとっても喜ばしい限りです。併せて、生食用のブドウ栽培も年々増加し、現在、生産農家は約50軒になっています。稲作の際のビニールハウスを利用して生食用ブドウ栽培が行われています。主にピオーネやシャインマスカットが栽培されており、村の直売所などでも好評を得ています。そのほか、イチゴの栽培も行われており、品質にこだわり連棟ハウスによる高設栽培で行われています。また、最近ではピーマン生産を行う農家が出てきており、これから増えていく可能性があると思っています。

 一方で、近年、農地が集約されて大きな事業体が生まれていますが、従事者の高齢化は進んでいます。また、担い手不足問題は、農業に限ったことではなく、村全体での大きな課題の一つです。だからこそ、農地集約や圃場面積を大きくしていくことが必要だと思っています。いずれにしても、新たな作物、それに基づく産業が少しずつ内発的に生まれており、農業従事者の方も前向きに取り組んでいますから、村としてもできる限りの支援を行っていきたいと思っています」

 ――今後の重点政策について。

 「人口減少が進む中、企業誘致や子育て支援、医療環境の充実に取り組んできました。道路整備も進み、こういったツールを利用して人口増加に向けた取り組みを今後も進めていきたいと思っています。

 一方で、人口減少が避けらないなら、行政システムをそれに適応させることも考えていく必要があるのではないかと思います。例えば、教育施設はいままで保育所、小学校、中学校と別々にありましたが、3年前に統合しました。今後もなるべくコストがかからないようなハード整備をしていく必要があります。役場庁内の業務についても2年前にDX推進室を立ち上げました。業務の見直しを図りながら、AIやICTの積極的な利活用が必要だと思います。

 また、これまで新たな風や新しい価値を迎えるためにいろいろな制度設計をしてきました。そういった制度をさらに充実させていくことで、今住んでいる村民がゆとりや幸福感、あるいはその生活の質を高めていくことにつながると思います。そのために、これから制度設計や行政運営が必要と思っています」

 ――今後の抱負。

 「今後も感謝の気持ちを忘れないでいたいと思います。現在、さまざまな課題が山積されていますが、それら課題を希望に変えて新しいステージでチャレンジしていきたいと思います。村民の幸せのために全力尽くします」

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