2020年7月に、郡山市島2丁目の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店」で爆発事故が発生した。当時の報道によると、爆発前、厨房のガス管に、腐食によってできたとみられる亀裂や穴があり、そこから漏れたプロパンガスに何らかの原因で引火した可能性が高いという。
爆発事故の原因
その後、警察の調べで、事故の原因とされるガス管は2006年の店舗建設時に国の基準に沿わない形で設置されていたこと、腐食を防ぐ措置がとられていなかったこと、法定点検を行った保安機関はそれらを認識しながら詳しく確認せずに問題ないと判断していたことなどが分かった。管理を適切に行わなかったために事故が起きたとして、2021年9月、運営会社社長や、ガス管を設置した会社、点検をした保安機関の担当者など5人(爆発事故で死亡した内装業者1人を含む)を業務上過失致死傷の疑いで書類送検した。
以降、しばらくは捜査機関の動きは報じられていなかったが、今年3月、福島地検が全員を不起訴としたことが伝えられた。運営会社社長ら4人は嫌疑不十分、内装業者は死亡していることが理由。
これを受け、事故で重傷を負った市内の女性が4月12日、不起訴処分を不服として福島検察審査会に審査を申し立てた。
地元紙報道によると、代理人弁護士が県庁で記者会見し、「大事故にもかかわらず、誰も責任を負わない結果は被害者には納得できない。責任の所在を明確にし、なぜ事故が起きたのかはっきりさせないといけない」と話したという。(福島民報4月13日付)
事故後の裁判と賠償問題
こうした刑事の動きとは別に、民事(すなわち賠償)の動きはあまり進展していない。
本誌昨年6月号に「郡山爆発事故で市が関係6社を提訴 被害住民に『賠償の先例』をつくる狙いも」という記事を掲載した。
同記事は、事故を受けて市が2021年12月に、店舗運営会社やフランチャイズ本部などの6社を相手取り、現場周辺の市道清掃や災害見舞金支給に要した費用など約600万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を福島地裁郡山支部に起こしたことを伝えたもの。
市は裁判に至る前、情報収集を行い、6社と協議をしてきたが、賠償金の支払いに関しては話がまとまらなかった。そのため、裁判を起こしたのである。
昨年4月22日から今年5月23日までに計6回の口頭弁論が開かれているが、市総務法務課によると「現在(この間の裁判)は争点整理をしています」とのこと。
一方、以前の本誌取材で裁判を起こした理由を尋ねたところ、市総務法務課の担当者はこう話していた。
「市長が『被害に遭われた住民は多数おり、市が率先して責任の所在を明らかにしていく』ということを言っていたように、市が先頭に立って裁判を行い、責任の所在を明らかにすることで、被害に遭われた方に参考にしてもらえれば、といった思いもあります」
これは「追随してほしい」という意味ではなく、判例をつくることで被害にあった人にそれを参考にしてもらえれば、ということのようだ。その点でも、市が損害賠償を求めた裁判は大きな意味を持つが、判例ができるまでにはまだ時間がかかるだろう。
政経東北【2023年7月号】で『郡山【しゃぶしゃぶ温野菜 爆発事故】被害女性が明かす苦悩』を掲載
2020年7月に郡山市で起きた飲食店爆発事故から、間もなく3年を迎える。当時、現場近くの事業所におり、重傷を負った女性が本誌取材に応じ、この間の苦悩や、誰も責任を問われない現状へのやるせなさなどを明かした。(末永)