薬剤師法違反を誤解された【南相馬市】の薬局

薬剤師法違反を誤解された【南相馬市】の薬局

 昨年11月、本誌に「南相馬市にあるA薬局は薬剤師が1人だが、他の従業員は資格がないにもかかわらず調剤や接客をしている。これは薬剤師法違反に当たる」と情報提供があった。A薬局は実名だったがここでは伏せる。

 本誌は昨年5月号から同市を拠点に暗躍する青森県出身のブローカー吉田豊氏の動きを注意喚起のため報じている。吉田氏は市内のクリニックや薬局を実質経営し、一時はその薬局の2階に住んでいたため、A薬局と関連があるのではと思い調べたが、吉田氏が同市に狙いを付ける前に開業しているため、関係はなさそうだ。

 薬剤師法では、医師が処方した薬を調合する調剤業務は原則薬剤師しかできない。医師も調剤できるが、業務が肥大化し、受け取る診療報酬の点数が少なくなる=診療報酬が安くなるため、薬局が近くにない診療所以外ではまずやらない。院外薬局で調剤するインセンティブが高まり、処方箋を目当てに病院の前に薬局が連なる「門前薬局」が主流となった理由だ。

薬剤師法違反との通報が寄せられた相双保健所
薬剤師法違反との通報が寄せられた相双保健所

 調剤が薬剤師の専権事項と化す中で、専門性がより求められているが、薬局の看板を掲げながら無資格者が調剤を行っているとすれば由々しき事態だ。薬の渡し間違いにつながるし、専門性を自ら明け渡してしまったら、高い学費を払って薬学部で6年間学ぶ意味を問われ、資格のための資格と軽視されてしまうだろう。

 相双保健福祉事務所(相双保健所)生活環境部医事薬事課に尋ねると、A薬局で薬剤師法違反疑いの公益通報があったことを認めた。2018~19年度にかけて県庁に通報があり、相双保健所がA薬局に抜き打ちで調査したが、薬剤師以外の従業員が調剤している証拠を見つけられなかった。20~21年度は、6年ごとの薬局営業許可更新の調査の際に店舗を視察したが、この時も違反の事実を確認できなかったため保留しているという。「仮に違反事実があれば指導して改善を促す」とのこと。

 名指しで「薬剤師法違反」と通報されたA薬局はどのような見解か。12月下旬の昼下がりに訪ねると、管理薬剤師が対応した。

 「誤解です。薬剤師以外が調剤することはありません。服薬指導も必ず薬剤師が行い、原則私が手渡しています。ただファクスで送られた処方箋は、患者さんに電話で説明し、あとで店に取りに来てもらい、従業員が渡すことがあるので、そこを勘違いされたのかもしれません」

 県内のある薬局経営者が調剤業務の規制緩和を解説する。

 「2019年4月2日に厚生労働省が、今まで薬剤師が独占してきた業務の一部を条件付きで非薬剤師も可能とする文書を通知しました。『0402通知』と言います」

 具体的には、包装されたままの医薬品を棚から取り出して揃える「ピッキング」、服用タイミングが同じ薬を1回ずつパックする「一包化」した薬剤の数量確認などができるようになった。ただし、薬剤師による最終監査が必要となる。

 A薬局の管理薬剤師は「最終監査も私がやっています」。

 規制緩和で薬剤師とそれ以外の業務が一部曖昧となったことが、今回の通報の一因のようだ。

 ちなみに、通報者に「なぜ本誌に情報提供したのか」と聞くと「吉田豊氏を報じたからです」。医療・福祉業界を取り巻く「吉田豊問題」をきっかけに、住民の医療への関心が高まる効果も生まれた。

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