玉川村が2022年から実施している「手ぶらキャッシュレス実証事業」が今年で最終年(3年目)を迎える。同事業はデジタル化推進の一環として行われているもので、NTTデータ、日立製作所、三菱HCキャピタルと提携して実施している。
初年度となった2022年は「実証事業 第一弾」として、500人を定員に、実証事業への参加を希望する村民と、協力店舗(10店舗)を募った。参加する村民は事前に役場で指紋認証登録とクレジット情報の登録を行い、協力店舗には専用の端末がレンタルされる。参加村民は村が発行した「玉川村デジタル地域商品券」を購入し、協力店舗の買い物の際、設置された専用端末に指をかざすだけで買い物ができる仕組み。スマホやクレジットカードなどを必要とせず、事業名の通り、手ぶらで買い物に行き、キャッシュレス決済ができる、という試みだ。初年度は7月24日から12月31日にかけて実証事業が行われた。
昨年度は「第二弾」として、参加定員を750人増やした。協力店舗は初年度(第一弾)と同じ10店舗。実証事業の実施期間は昨年7月30日から、今年1月12日まで。
実証事業最終年度となる今年は「第三弾」として、定員が1000人に増えるほか、協力店舗も20店舗に拡大する予定。本誌取材時の6月中旬時点で、参加村民、協力店舗を募っていた。実際に、想定した参加者数、店舗数になったかは分からないが、2年間の実証事業を経て、少しずつ認知度が高まっているのは確かなようだ。
なお、こうした実証事業は全国初の試み。
「今年は定員、協力店舗を拡大するほか、顔認証を導入します。指紋認証だと、どうしても一度役場に来てもらって登録する必要がありますが、顔認証であれば役場に来なくても、スマホで登録可能です」(村企画政策課)
これまでの実証事業の成果については次のように説明した。
「まれに、(参加村民が協力店舗で指紋認証しようとしても)認証しないというケースもありましたが、その場合は別にパスワードを設定していますので、それを入力すれば決済できる仕組みです。参加者は、割と高齢の方もいて、若い世代に偏っているということはありません」
ある議員はこう話す。
「この間の実証事業で割と浸透してきたと感じます。村のポイントが貯まることもあり、年配の人もあまり抵抗なく参加しているようです。協力店舗に聞いても、『だいぶ慣れてきました』と言っていました。もっとも、手ぶらで買い物ができると言っても、本当に手ぶらでお店に行く人はいないでしょうけど。普通は、使わないと思っても、財布や(決済が可能な)スマホを持っていきますよね。ですから、『手ぶら』ということよりも、『こういう決済もある』ということですかね」
村では今年度の実証事業終了後、そこで得られた成果や課題などを踏まえ、今後どう生かしていくかを検証するという。
一方で、福島市では昨年11月から販売していたデジタルクーポンの第一弾が、高齢者を中心に「スマホを持っていないから購入できない」、「手続きが難しくて分からない」との不満が上がり低調だった。そのため、第二弾は紙のクーポンとデジタルクーポンを選択できるようにした。
近年は、さまざまな自治体でデジタル化を推進しているが、広く浸透するにはまだまだ課題があるということだろう。