今年2月、福島市が昨年9~12月に実施した学習センター主催事業で、講師を務めた23人に報償費(謝礼)が支払われていなかったという不祥事が起きた。原因は担当職員の処理能力不足で対応が遅れたためで、併せて1人の個人情報記載書類も紛失していた。
2月7日付の福島民友は次のように報じている。
《1月に講師1人から報償費の振り込みがない旨の連絡があり、延べ33件分の支払いが滞っていることが発覚。また紛失した書類には氏名、住所、電話番号、口座番号などが記載されていた。担当職員が自身の机の上に書類を積み重ねたと話していることから、市は個人情報流出の可能性は低いとみている。(中略)遅延している報償費については、今月中に支払えるよう準備を進めているという。市は、再発防止策として、職員間で作業の進捗状況を把握するなどとしている》
担当部署である市生涯学習課によると、講師からの「報償費が振り込まれていない」という問い合わせを受け、担当職員と関連書類を確認したところ、振り込みはおろか、講演終了後に提出する書類にも一切記入されていなかった。ファイルに収めて管理する個人情報記載書類も机の上に積まれたままになっており、振り込まれていない案件が何件あるのか、講演記録と照合しながら確認を進める中で、1件紛失していたことが発覚した。
同課の担当者は当時「一緒に業務を担当していた職員が昨年夏ごろから休職しており、1人に業務が集中した結果、業務の流れやチェック体制が破綻していた。再度流れを確認し、職員間で互いに声掛けしながら対応していきます」と話していた。
なぜ2月のニュースをいま取り上げるのかというと、福島市の外部講師対応について、いまも不満の声が漏れ聞こえてくるからだ。
同市の別の部署からの依頼で講演した経験がある男性は「他市町村からの依頼で講演すると1週間程度で報償費が振り込まれるのに、福島市は次の月になってもなかなか振り込まれない」と苦言を呈する。
「こちらは依頼を受けるに当たり、住所や電話番号、マイナンバーも提出している。『個人情報流出の可能性は低い』というものの、2月の不祥事のような事態が発覚すると、もう依頼を受けたいとは思えなくなってしまう」
「そもそも報償費の金額が安すぎる」と市の対応にダメ出しするのは、文化・教養分野で講師活動をしている男性だ。
「県内市町村で講演する場合、報償費は1万円以上で依頼されることが多いが、福島市には講演2時間6800円で依頼されました。私は市外に住んでおり、『移動時間・交通費などを考えるとこの金額では割に合わない』と、お断りしました」
支払いが遅いばかりでなく、報償費も低いため、外部講師を依頼された人たちも敬遠している状況なのだ。
あらためて市生涯学習課に確認したところ、次のように説明した。
「報償費は一律で金額が定められており、大学教授などに関しては割増金額になっています。予算には限りがあるので、報償費を上げればその分講演などの回数を減らすことになります。振り込みは、講演が行われた月の翌月に行っているので、実施日によってはかなり時間が空いてしまうのです。担当者から事前に振り込み時期を伝えているはずなので、もし大幅に遅れることがあればあらためて確認してほしいです」
「条件が悪すぎる」と講演依頼を引き受ける外部講師が少なくなれば、割を食うのは市民だが、こうした実態を市はどう受け止めるのか。