あべ・かつひろ 1972年生まれ。福島大経済学部卒。1995年に相馬市職員となり、企画政策部長などを歴任。2021年から副市長を務め、昨年12月の市長選で初当選。
――昨年12月に行われた市長選挙で、無投票で初当選を果たしました。この結果をどのように受けとめていますか。また、実際に市長就任に当たり、今の率直な感想をお聞かせください。
「無投票当選という結果をいただき、まずは多くの市民の皆様からのご支援とご期待に心から感謝を申し上げます。選挙戦で数字として支持が見える形ではありませんでしたが、これは、相馬市の将来に対して『前に進んでほしい』という思いが重なった結果だと受け止めています。
一方で、市長という立場の責任の重さをあらためて痛感しています。市長の大きな役割は、市民の命と財産を守り抜くことです。そして、将来を担う子どもたちがこの地域で健やかに育ち、相馬市が持続可能な自治体として発展し続けていかなければなりません。地域経済を維持・発展させていくという重責に対し、期待に応えていきたいという強い決意を抱いています」
――市職員として約26年勤め、その間は総務課長兼地域防災対策室長や企画政策部長などを務めました。その後は、約4年半、副市長として市政に携わってきました。その間は行財政改革や東日本大震災・東京電力福島第一原発事故、新型コロナウイルス感染症の対応など、さまざまなことがあったと思います。それらを市役所内部から見てきた経験を、市長としてどのように生かしていく考えでしょうか。
「私は約30年間、地方自治の現場で経験を積んできました。二元代表制における市議会と執行部の役割や関係性を理解し、今回の選挙でも多くの議員の皆様からご支援をいただきました。
新市長として、市政に『空白の期間』をつくらないことは極めて重要です。これまでの経験があるからこそ、継続すべきことは迷いなく継続し、速やかに実務を動かすことができる立場にあると考えています。
また、政策を実現するためには安定した財政基盤が不可欠です。市民の声を反映させたくても、財源がなければ形にできません。私は実務を通じて相馬市の財政状況を把握してきました。加えて、職員一人ひとりの強みや役割を生かし、組織として力を発揮することの大切さも学んできました。経済界や各種団体の皆様とも副市長時代を含めて信頼関係を築いてきました。ゼロから関係を作るのではなく、これまで培ってきた関係性を土台に、具体的かつ着実に政策を執行していきたいと考えています」
人口減少対策に注力
――人口減少対策を重要課題に挙げています。この問題は地方においては全国共通の課題と言えますが、具体的にはどのような対策を考えているのでしょうか。
「人口減少は避けて通れない課題です。かつて若い女性から『相馬で出産ができない環境では、住む場所として選べない』という切実な声をいただきました。出産・子育ての環境が整っていなければ、若い世代に選ばれることはありません。
平成30(2018)年から学校給食費の無償化を実施するなど、子育て支援には力を入れてきましたが、さらなる充実を求める声には真摯に向き合っていきます。具体的には産科通院に関わる交通費の助成や、子どもたちの学力向上に向けた取り組みなどを進めていきます。
雇用についても、相馬市には有力な企業が数多く立地していますが、若者が求める条件との間に認識のギャップがあると感じています。企業側は人を求めているのに、その情報が十分に届いていない。
そこで、今後はSNSなどを積極的に活用し、市外の若者や相馬出身の世代に向けた『届く情報発信』を強化します。こうした声は数字だけでは見えない現場の実感であり、市民一人ひとりの声を政策の出発点にしていきたいと考えています」
――相馬市は東日本大震災以降も二度にわたる福島県沖地震や水害など、度重なる災害に見舞われてきました。そうした経験をした相馬市にとって、インフラの維持管理は重要になってきますが、そういった課題にはどう向き合っていきますか。
「災害時のトリアージ(緊急度判定)のように、公共施設やインフラ維持にも明確な基準が必要です。
私は①命に直結するライフライン、②健康を守るもの、③利便性を向上させるもの、④快適性や付加価値を高めるもの、の四つで考えています。最優先は水道など命と健康を守る分野です。
一方、利便性や快適性については財政負担や国の補助制度の活用状況を見極めながら判断します。
相馬市は大震災の復興過程で過剰なハコモノをつくらず、施設の再建や集約を進めてきましたが、高度成長期に整備された施設の老朽化は進んでいます。
出生数が200人を切る現状では、学校の適正規模や配置の議論も避けられません。将来世代に負担を残さないためにも、今の世代が向き合うべき課題だと考えています。市民の皆様と対話を重ねながら、持続可能な形へと見直していきたいと思います」
――市町村はどうしても財政面などで国や県に頼らざるを得ない部分がありますが、国や県に対して望むことは何でしょうか。
「国には、人口減少を国全体の課題として捉え、地方が工夫できる余地を財政面で支えてほしいと考えています。東京一極集中が進む中で、地方自治が守られる税制や制度の議論を進めていただきたい。福島第一原発の廃炉についても、国が責任を持って安全・安心の発信と必要な財源措置を継続することが不可欠です。
県には広域自治体としての指令塔機能を期待しています。相馬市にとって相馬港は大きな可能性を持つ社会資本です。物流機能の強化により、広域拠点へと発展させることを県と連携して進めていきたいと考えています」
――最後に、市民に向けてのメッセージと、今後の抱負をお願いします。
「守るべき良い伝統は守りつつ、見直すべき点には勇気をもって向き合い、より良い形へ更新していく決意です。それは個人の思いつきではなく、将来を見据えた検証に基づくものでなければなりません。
市政は市長一人で動かすものではありません。市民の皆さん、職員、地域や企業の皆さんと力を合わせ、互いの知恵と経験を持ち寄りながら前に進むものです。私はその先頭に立ち、ともに汗をかく市長でありたい。
『この街に住んで良かった』と市民の皆さんが笑顔で暮らせる相馬市を、次の世代につなぐ責任を胸に刻みながら、共につくっていきたいと思います」

























