【春の福島競馬】本誌記者、初の馬券に味を占める

本誌記者、初の馬券に味を占める

 ギャンブルとは無縁の生活をしてきた筆者に競馬をさせようと編集会議で企画が上がった。先輩に教えを請い、現金を手に春の福島競馬でデビューした。(小池航)

春の福島競馬ビギナーズレポート

春の福島競馬
春の福島競馬

 筆者はギャンブルには疎い。人気ゲームで若者の競馬ブームに火を付けた「ウマ娘」にも後れを取っていた。1週間後に迫っていた春の福島競馬2日目の4月7日に挑戦することが決まった。指南役には先輩の編集部員、末永武史に白羽の矢が立った。

 自宅からJR福島駅まで歩いて、そこからバスに乗って競馬場まで行くことにした。競馬開催中は福島交通で直通のバスを日に3便出していた。同行は老若男女15人。国道4号から右手に、ボックス上のガラス張りの建物。壁には「JRA」のロゴが見える。 

 幼少時のある日曜日、車内から横断歩道をひっきりなしに渡る人だかりを見て「あれ何?」と親に聞くと「ケイバだよ」と言われ、ぼんやりと祭りをイメージしたことを思い出した。あの群衆に仲間入りするのだ。

 ゲートで入場料100円を払い、中に入ると甘じょっぱいにおいが漂ってきた。奥側に蕎麦や牛丼を出すフードコートがあった。末永とは待ち合わせの場所を決めていなかったので、とりあえず馬を見ようと観客が集まっている芝生に出た。ちょうど9時50分から始まる第1レースの馬券販売終了を知らせるアナウンスがあった。何をすればいいのか分からない。目の前の砂が撒かれたダートコースを馬の一団が走っていった。

 第1レース終了後、こちらを見つけた末永が寄ってきた。馬券は外れたようだ。気を取り直して競馬場内を見学することにした。馬券を買うのは一通り見てからにした。まずはパドック。周回コースのミニチュア版のような縦30㍍ほどの広場があって、第2レースに出走する馬がぐるぐる回っていた。「毛並みを見たり糞の臭いをかいだりして早そうな馬を見つけるが、俺は分からん。正直分かる人はいないと思う」と末永。筆者は糞の臭いを吸い込んだ。何も分からない。

 「永島まなみ騎手が乗るらしい」と競馬新聞を見て末永が言った。競馬新聞記者の評価では◎がたくさん付いており、素人目にも「本命」だと分かった。筆者は騎手が乗って周回する番になると、永島騎手がまたがった「シアター」号をバシバシ撮影した。

 今度は「返し馬」だ。パドックからコースに移った馬がウォーミングアップする場面らしい。筆者たちの陣取った場所が悪く、馬たちは遠くを少しだけ走って出発点に戻っていった。第2レースの結果は大方の予想通りシアターが1着だった。

 「買っておけば良かったかな」と思っていると、末永が「単勝で1・7倍。1着と予想してシアターを100円分買ったとして、戻ってくるのは170円だ」と説明した。

 ここで単勝、複勝、ワイドなどの賭け方の種類を教わった。筆者は理解が追いつかなかったので単勝(1位を予想する買い方)、複勝(順番にこだわらず3着以内を1頭予想する買い方)だけに手を出すことにした。競馬新聞を読むと◎(本命)、〇(対抗、2番目に強い)、▲(3番目に強い)、△(3着以内に入る可能性)が付いている。馬の速さを評価した順序らしい。考えても分からないので印と名前の良さで選ぶことにした。

 12時5分発走の第5レースに挑戦した。予想で◎(本命)と〇(対抗)が最も多い8番「コンテナワールド」号を単勝で、7番「ホットエンペラー」号を複勝で購入した。ホットエンペラーは予想でそれなりに△が付いているが、何より「皇帝」という名前がビギナーには輝いて見えた。

 券売機に並び馬券を買った。券売機は青、券売機兼払戻機は黄色。青い機器の方が黄色より数が多い。千円札を投入して、初の馬券を受け取った。コース脇に行き、間近で見よう。そわそわしていると、発走の合図が鳴った。

 第2コーナーでコンテナワールドが2番手に付けた。順調だ。残り800㍍を切ったところでホットエンペラーが外側から進出してきた。

 第3コーナーを過ぎ、筆者本命のコンテナワールドが先頭に立った。外からはホットエンペラーが伸びてきた。この瞬間、1番手コンテナワールド、2番手ホットエンペラーで、このまま行けば筆者の単勝と複勝の予想は的中だ。

 最後の直線に入った。2頭の争いかと思われたが、6番スプリンクルソルトがあっさりと先頭に躍り出た。速い。残り100㍍で3馬身リードした。

 コンテナワールドの単勝はもう諦めた。ホットエンペラーよ、このまま2、3番手で粘ってくれ。気付いたら筆者はつま先立ちになり、腕を振り上げ「行け! 行け!」と叫んでいた。1着は直線を走り抜けたスプリンクルソルト、5馬身差でホットエンペラーは2着だった。コンテナワールドは5着。2着以下はアタマ差や半馬身差だった。

払戻金は3200円

先輩に教えを請う筆者(左)
先輩に教えを請う筆者(左)

 ホットエンペラーの複勝が的中した。倍率は6・4倍なので、払戻金は「500円×6・4倍=3200円」。500円の馬券を2点買ったから、2200円増えたことになる。勝った。

 どこで当たり馬券を換金すればいいのか。末永に聞くと、その前に初馬券兼初当たり馬券を記念に複写してはどうかと勧められた。インフォメーションコーナーで10円でコピーしてもらった。

 まさか初日に払戻機に並ぶことができるとは想像していなかった。初当たり馬券を払戻機に入れると、15分前に吸い取られた千円札が3200円になって戻ってきた。青い機器に並ぶ人が多い中、黄色の機器に並ぶ人は圧倒的に少ない。やましさを感じて、そそくさと札を財布にしまった。

 後でJRAのホームページでレース記録を確認すると、ホットエンペラーはこの日が初出走。筆者と同じ新参者だ。

 よくぞやってくれました! 角田大和騎手、ありがとう。全競走馬、全騎手が血のにじむような努力をしてきたことと思います。自分もまた懐を温めて来られるように仕事を頑張ります。

 午後も同じように、2レースで単勝・複勝を1000円ずつ購入したが外れた。計3000円分購入し、払い戻しは3200円なのでトータルでは負けていない。味を占めた。夏競馬も行こう。(一部敬称略)

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