予見されていた船引バイパス・県道交差点事故

予見されていた船引バイパス・県道交差点事故

3月28日に全面開通した田村市内を通る国道288号船引バイパス(総延長6・8㌔)の交差点で開通直後に事故が相次いだ。特に砂子田地区にある県道との交差点=図=では、出合い頭に軽乗用車とトラックが衝突し、軽乗用車の運転手が首の骨を折る事故が発生。信号がなく県道側が一時停止する規制が敷かれているが、地元住民は、「交通量が多い県道なのになぜ信号機を付けなかったのか」と早期の設置を求めている。

住民とライダーが「信号機なし」と「見通しの悪さ」を指摘

船引売バイパスと剣道船引大越小野線の交差点

図の①から撮った写真
図の①から撮った写真下
図の②から撮った写真
図の②から撮った写真

国道288号船引バイパスは、災害に強い道路ネットワークの構築や田村市船引町の中心市街地の交通混雑緩和などを目的に県が「ふくしま復興再生道路」として整備した。西から1工区が2015年度に、2工区の一部区間が2022年度に供用開始した(次ページ図)。郡山市から双葉町に至る延長約85㌔の国道288号の利便性向上もさることながら、特に沿線に新築移転する「たむら市民病院」が年内に開院予定することから、救急医療のアクセス向上が期待される。

船引バイパスの全体図

上図の③から県がドローンで撮った写真。出典:県ホームページ
上図の③から県がドローンで撮った写真。出典:県ホームページ

今年3月の船引バイパスの全面開通から2日後、田村市船引町の砂子田地区内を通る県道船引大越小野線(県道19号)との交差点で車両同士が出合い頭にぶつかる人身事故が起きた。県道19号は主要地方道に指定されている。

福島中央テレビのニュースが詳しい(ネット配信は3月31日)。

《3月30日午前10時27分頃、73歳の女性が運転する軽四輪乗用車がJR船引駅方面に向けて進行中、右方から進行してきた74歳の男性が運転する普通貨物車と出合い頭に衝突しました。この事故で73歳女性が首の骨を折るなどの重傷、74歳男性は胸部打撲の軽傷でした。73歳女性側に一時停止などの規制があり、74歳男性側に規制はありませんでした。現場の見通しは悪くないということで、警察が事故の詳しい状況を調べています》

「現場の見通しは悪くない」との報道に反応したのが郡山市在住で大型自動二輪を乗り回す熟練ライダー佐藤守(45)さんだ。全面開通初日に愛車にカメラを設置し走行した。

「『現場の見通しは悪くない』とのことですので、関係者はそういう認識なのだと思います。ただ、この交差点を全方向から走行した私の認識は違います」

一時停止見落としが原因

佐藤さんが車載カメラの映像を基に解説する。

「まず私は、問題の交差点の北の国道349号を美山地区(聖石温泉)から県道を経由してJR船引駅に南下してみました。頭にパイパスができたことを認識していないと、思わずそのまま問題の交差点を通過してしまいます。近くにコンビニがあるとは言え、夜間は止まれの標識を見過ごしてしまうと思いました」

きちんと一時停止したとしても、見通しが悪く直進や右左折の判断を見誤りやすい点も問題に挙げる。佐藤さんは北から県道を通って交差点に入り、西方向(三春方面)へ右折するパターンも試したが、目測を見誤り、バイパスを突っ切ってくる乗用車にヒヤリとした。

「やり過ごしてから右折するべきでした。交差点や道路の形状から目測を少し甘く見てしまいました。とにかく、この交差点はどの方向から入っても怖かったです。反対に県道を北上し、コンビニを左手に東方向(常葉方面)へ右折する時も、一時停止位置からかなり車を交差点へせり出さないとよく見えません。県道を通る車両から見ると、この交差点の見通しは悪い」

ある地元住民は、開通直後に交差点事故が相次いだ原因を考察する。

「この県道は市街地を突っ切るため交通量が多い。通いなれた人はバイパスと交差する前の道路を想定し、一時停止を見落として直進してしまう。現場レベルでは、『設計書には信号がないが設置しなくていいのか』との声が上がったと工事関係者から聞いた。『不注意だったから』と運転手だけに責任を求めるのは違うと思う」

4月3日付の福島民報によると、この交差点では開通から1週間のうちに交通事故が4件起きた。県道側に新たに設けられた一時停止を見落とすのが原因としている。その後、田村警察署員が現場でドライバーに注意喚起したり看板を設置したりした。同署によると、民報が報じた同3日以降、この交差点では事故は発生していないという(4月23日時点)。記事の啓発効果があったのだろう。

遮蔽物と減速しない車

本誌記者も平日の午後に四方からこの交差点を通過してみた。特にまごついたのは、佐藤さんと同様にコンビニを左手に東方向(常葉方面)に右折する際だった。写真②のように斜面に遮られて、一時停止位置ではバイパスの奥が覗けない。自然、そろそろと前進し右から車が来ないか覗くが、バイパスの先はカーブしており奥まで見えない。バイパスという特性上、スピードを緩めないため、県道側の車両が前にそろそろ出たところにぶつかる可能性がある。

開通直後の1週間に相次いだ事故を受けて、県道には一時停止の標識が目立つように手前から「この先一時停止」の看板が置かれるようになった。バイパスには、減速を求める看板が設置されている。

田村市は4月2日、船引バイパスの交差点に信号機や横断報道の設置を求める要望書を田村警察署に提出した。

《国道288号船引バイパスにつきましては、令和8年3月28日に全線開通となり、中心市街地の渋滞緩和や地域の活性化など、多くの期待が寄せられているところでありますが、開通直後から車両交通事故が多発している状況であります。

特に砂子田地区の交差点は、重大事故が数件起きており、堰田地区交差点には、隣接する「たむら市民病院」が本年中の開院を予定しているため更なる混雑が予想されます。

また、交差点は市立船引小学校の通学路にも指定されており、保護者からも不安の声が上がってきております。

つきましては、本交差点は、現在一時停止の交通規制ではありますが、より通行の安全を確保するとともに、歩行者を保護できる信号機及び横断歩道の設置を至急お願いしたく、要望いたします。

なお、砂子田地区及び堰田地区交差点への信号機及び横断歩道の設置は、開通前から電話や窓口において市民からも要望があり、加えて、開通後には書面にて地元区長や老人クラブからの要望書が田村市宛てに提出されていることを申し添えます》

県公安委員会(県警)は信号機設置について、「警察庁が示した『信号機設置の指針』に基づき検討し、真に必要な場所に信号機を設置する」としている。 「5つの必要条件に該当」かつ「4つの択一条件のいずれかに該当」 することが必須。「これらは、設置場所選考の基準であり 『信号機設置の指針』に合致すれば必ず信号機が設置されるというものではありません」と強調する。

5つの必要条件と4つの択一条件は厳密に定められており表現がまどろっこしい。現に人身事故が起こっていたり通学路となっているため、択一条件の中には満たすものがありそう。だが、たむら市民病院開院後には交通量も変化するので、5つの必要条件を全て満たすかを正確に調査するには時間が掛かりそうだ。条件を全て満たしたとしても、信号機が設置されるとは限らないので期待してはいけない。

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