福島県南西部に位置する下郷町は、今年で町制施行70周年を迎えた。阿賀川(大川)の清流と山々に抱かれた自然豊かな町で、古くから奥会津の要衝として独自の文化を育んできた。節目の年を迎えた同町の歩みと未来に向けた挑戦を紹介したい。
70年の歩みと町の魅力
下郷町は、1955年、楢原町、旭田村、江川村の合併により誕生した。町の発展を支えてきたのは歴史遺産の保全と観光振興だ。
町の象徴的存在である大内宿は、江戸時代に会津と日光を結んだ宿場町。茅葺き屋根の民家が連なる景観が保存され、1981年には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。いまでは国内外から多くの観光客が訪れ、地域経済を支える、町の顔ともいえる存在となっている。
100万年もの歳月をかけて浸食された奇岩群・塔のへつりも、その神秘的な景観から国の天然記念物に指定され、訪れる人を魅了している。
阿賀川の渓谷美、四季折々の美しい山里の風景も町が誇る大きな魅力の一つ。冬の豪雪が作り出す銀世界と大内宿における茅葺き屋根のコントラストは、特に情緒を醸し出す。
さらに、大内宿の「ねぎそば」をはじめとした名物料理、湯野上温泉など歴史ある温泉地もある。自然と共に生きてきた地域ならではの食文化や歴史、素朴で温かい心遣いに触れることができ、「理想郷」と呼ぶのにふさわしい穏やかな時間が流れる場所として知られる。
一方で、高度経済成長期以降の過疎化や、豪雪地帯特有の生活環境の維持は常に大きな課題であった。町は生活基盤の整備に重点を置き、高齢化社会への対応や、地域コミュニティーの維持・再生に注力してきた。
近年は、観光客増加に伴う環境保全や、地域資源を生かした新たな産業の創出にも力を入れている。
観光と定住促進を軸に新たな挑戦
町制施行70周年は次の時代への通過点に過ぎない。町はこれからを見据え「交流人口の拡大」と「定住・関係人口の創出」に取り組んでいる。
「交流人口の拡大」では、白河地域と奥会津地域内での広域観光連携を深め、共同プロモーションを展開する予定だ。豊かな自然や伝統文化などを保全・承継するとともに、観光消費額拡大に向けた高付加価値なコンテンツの造成にも注力し、観光客層の多様化を図る。地域資源を生かした産業振興、地元産のそばや農産物などの特産品のブランド化を進め、六次産業化を推進する。これにより、地域内で雇用を創出し若者のUターン・Iターンを促進する。
「定住・関係人口の創出」では、子育て支援や医療・福祉の充実を図り、安心して暮らせる生活環境の整備を最優先課題とする。さらに、滞在型市民農園「クラインガルテン下郷」の利用促進や空き家バンク制度推進などを通じて、積極的に移住者を呼び込み、活力ある地域コミュニティーの維持を目指す。
下郷町は、この70年間で培った自然と文化を未来へ継承しつつ、「理想郷」としての魅力をさらに高め、新しい時代を切り開いていく。

























