二本松市本町の五柱神社で7月21日に行われた例大祭をめぐり、市民からこんな情報が届いた。
「坂本議員が例大祭に5000円を寄付した。議員の寄付行為は公選法で禁じられているはずだ」
坂本和広議員(52)は2期目。同市本町在住。市議会会派・真誠会に所属し、総務市民常任委員長を務める。本業は不動産業(合同会社あだたら不動産)。
市民からは証拠写真の提供もあった。そこには神社の前に貼り出された複数の紙が写っており、その中の1枚には確かに「一金五千円 坂本和広」と書かれている。
「自民党の衆院議員が選挙区内の有権者に香典を配っていたとして公選法違反容疑で東京地検特捜部の家宅捜索を受けたが、その最中に寄付をするなんて信じられない」(同)
公職選挙法第199条の2は
《公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む)は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず寄付をしてはならない》
と定めている。違反した場合は1年以下の禁固または30万円以下の罰金。公民権停止の対象にもなる。
県選挙管理委員会はどのような見解を示すのか。
「政治家が選挙区内で寄付をすれば公選法違反になります」
二本松市選挙管理委員会にも見解を尋ねた。
「一般論で申し上げれば、公選法に触れます。ただ、選管は捜査機関ではないので、違反行為が確認されても処罰することはできません。選管としては(坂本議員に関する)情報提供があったことを議会事務局に伝え、寄付行為は禁じられていることをあらためて全議員に周知していただくようになると思います」
当の坂本議員は何と答えるのか。

「私は五柱神社の総代会会員を務めており、議員としてではなく会員として初穂料を納めたので問題ないと認識しています」
筆者が「県選管、二本松市選管は公選法違反と言っている」と伝えると「後援会に確認してからもう一度お答えしたい」と言うので返答を待つと、あらためて坂本議員から次のような回答があった。
「私の認識不足で、後援会からもお叱りを受けました。初穂料としての寄付が神社に張り出されてしまった次第です。今後は気を付けたい」
個人的な感想を述べると、たとえ議員でも地域に根ざす人間が地域の行事に寄付するのは当たり前の行為だと思う。当選目的で5000円を寄付しているとは考えにくいし、当落を左右するとも思えない。ただ、公選法を理解して寄付したのか、理解せずに寄付したのかは違う。理解していれば「議員は寄付できない」と断ることもできたし、同法は忘年会や新年会などの会合に会費・実費を支払うことは禁じていないので、初穂料を会費として納める〝裏技〟もできたはず。
そうした考えに及ぶことなく「議員としてではなく会員として」と言い切ったのは、要するに坂本議員が公選法を理解していない証拠だ。無知は要らぬ問題を招く。坂本議員は勉強が必要だろう。
もう一つ、勉強が必要なのは有権者も同じだ。議員の寄付をめぐっては「三ない運動」(贈らない、求めない、受け取らない)が盛んに啓蒙されているが、浸透していないのが実情。今回で言えば、総代会が坂本議員からの初穂料を「求めない」「受け取らない」意識があれば(あるいは会費扱いしていれば)公選法違反は防げたのではないか。