すずき・としお 1947年生まれ。国立平工業高等専門学校中退。アクティブワン代表取締役。白河商工会議所副会頭を経て、2022年11月から現職。
物価・燃料高や深刻な人手不足、後継者不足といった難題が、地方の中小・小規模事業所を直撃している。白河市の経済界の舵取りを担う白河商工会議所の鈴木俊雄会頭(㈱アクティブワン代表取締役)に、混迷を極める地域経済の現状と打開策、そして歴史的資源を生かした観光振興や未来への展望について語ってもらった。
――会頭2期目がスタートしましたが、現在の率直な心境は。
「会員事業所は物価高や人手不足、後継者不在などに直面しています。これらの問題は、『これをやれば解決できる』という有効な処方箋が見当たらず、正直なところ非常に無力感を感じています。特に中小企業の倒産や自主廃業の増加には危機感を持っています。2024年の全国の倒産件数は約1万件ですが、自主廃業は約7万件にも上ります。市内でもいつの間にか閉店している店舗を多く見かけるようになりました。
事業承継は、家族やプライベートな情報も絡むナイーブな問題で、我々第三者がなかなか入り込めない部分があります。国や県も事業承継・引継ぎ支援センターを設置していますが、目に見える成果が上がっているとは言い難い状況にあります。コロナ禍の影響もあると思います。
英国の自然科学者・ダーウィンの言葉を引けば『生き残るのは環境の変化に対応できるものだけ』です。自らの経営資源を見極め、常に自己変革する手を緩めないことが大事です。当会議所としても、会員事業所のそうした取り組みを全力でサポートしていきます」
――会員事業所の現状は。
「白河市は製造業の工場が多く立地しているので、比較的恵まれた雇用環境にあります。それらの企業や従業員の経済活動により地元の景気が安定的に支えられています。ただ、中小・小規模事業所には急激な賃上げや働き方改革が大きな負担になっています。
政府からの要請に加え、深刻な人手不足もあって賃上げに踏み切る事業所が増えています。ただ、中小・小規模事業所がすべて対応できているわけではなく、結果として、余力がある成長産業や大規模な事業所との格差が一段と拡大し、そちらに人が流れています。
このほか、休日が少なかったり、勤務時間が変則的な事業所なども人材確保に苦戦しています。代表的なのがタクシー業界で、運転手不足で走っている車両数が少ないため、タクシーを使いたくても、つかまらない状況が慢性化しています。
こうした中、各事業所は従業員を引き留めるための『防衛的賃上げ』を実施し、ギリギリのやりくりをしているのが実態です。本来、賃上げは売り上げが伸びて利益が出てから行うべきものですが、今はその順序が逆転しています。
経済学には『合成の誤謬(ごびゅう)』という言葉があります。一人ひとりが合理的で経済的に正しいと思うことを行っても、全員が同時に動くことで意図しないハレーションが起き、悪い結果を招くという現象のことを指します。賃上げや働き方改革に取り組むこと自体は正しいと思いますが、社会全体が一斉に同じ動きを強いられたことで、合成の誤謬が起き、そのハレーションに苦慮しているのが現状だと思います」
税制の抜本的改革が必要
――国や県に対し、期待することや提言はありますか。
「『現場の声を真摯に聞いてほしい』という一言に尽きます。特に私が訴えたいのは贈与税の見直しです。現在、日本の個人の金融不動産資産の多くを高齢者が保有していますが、贈与税が高すぎるため、次世代への資産移転が進みづらくなっています。これを大胆に減税、あるいは一定額まで一律にすれば、若い世代に資金が流れ、消費や投資が劇的に活性化して、お金が循環するはずです。また、事業承継税制も仕組みが複雑すぎて、実際に利用している事業所は驚くほど少ないのが実態です。国は、どうやったら税収を増やせるかに腐心するのではなく、市場にお金が流れるダイナミズムを優先するべきと考えます。ビジネスの自由度を奪っている複雑な税制の網を一度リセットするような、大胆な政策転換を強く求めたいと思います」
――観光資源の活用や歴史的資源の活用について。
「昨年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』に白河藩主・松平定信公が登場した効果で、市内の史跡や関連施設を訪れる観光客が増えました。定信公は南湖公園を造り、白河の関跡を特定するなど、白河市の歴史的基盤を整えた偉人です。定信公の功績が再評価され、市民の間でも誇りが醸成されつつあります。大河ドラマを契機に改めて市の魅力を見直す動きにもつながっていることを大変好ましく思っています。
定信公の居城だった小峰城の清水門復元工事は2027年3月末に完成する予定です。近年は〝お城ブーム〟が盛り上がっており、城跡を巡るファンが全国に大勢います。清水門が観光の新たな目玉になることを期待しており、この機会を逃さずに白河の魅力を一層積極的にPRしていきたいと考えています」
――観光面では、会議所内に「道の駅」に関する検討委員会を設置して、議論を続けているとうかがっていますが。
「具体的な整備計画が浮上しているわけではありませんが、道の駅は、単にハコモノをつくれば良いわけではなく、まずは『何を売って地域経済を活性化させるのか』が重要です。例えば、地元の農産物に付加価値を付けて六次産業化を図り生産者に利益が還元される仕組みをつくりたいと考えています。さらには地域振興や防災などの活動拠点としての機能も備えた、ヒトやモノ、情報が行き交う県南地域全体のハブとなるような場所になればいいと考えています」
――今後の抱負を。
「白河は企業誘致のかいもあり、働く場所があるという点では恵まれています。しかし、人口減少が加速すれば人材の奪い合いはさらに激化するでしょう。白河市が県南地域の中核都市として持続的に発展していくために、若い世代が暮らし続けたくなるような都市的基盤の整備に努めていきたいと考えています。
当会議所では、若い世代に白河市を居住地として選んでもらうため、就職を希望する高校生を対象とする就職説明会や、進学で市外に出ていった学生が就職活動する際に、地元企業や地域の情報にアクセスできるLINEアカウントを設置する事業などを行っています。登録者には地元の特産品を贈呈しており、最近は学生に影響力のある家族にも登録を促し、参加者が増加しています。
今後も、地域の潜在力を最大限に引き出し、若者が将来に希望が持てる経済環境をつくるために、各分野の方々と協力しながら引き続き全力を尽くしてまいる覚悟です」














