郡山市田村町の国道49号沿いに田村町地区内としては3カ所目となる最終処分場が建設されることに地元住民たちが反対している。地元有志からなる環境団体は反対する看板を予定地近くに設置したり市議会に請願を出したりして反対への理解を広める。井戸水を使う世帯や農家が多いことから、建設工事や稼働後の自然災害で川や地下水に影響が出ることを懸念。4カ所目の処分場計画も水面下で進む中、「今止めなかったら田村町が『産廃銀座』になってしまう」と窮状を訴える。
乱立防止を求める意見書を市議会が可決


郡山市南東部に位置する田村町地区内で3カ所目となる最終処分場は、国道49号が通過する田村町栃山神で計画が進む。事業名称は「郡山市田村町地区内産業廃棄物処理施設設置事業」でその規模は、埋立地面積約7万平方㍍、埋立容量約160万立方㍍。建設を計画しているのは産業廃棄物処理の大手、ミダックホールディングス(静岡県浜松市、加藤恵子社長)。1952年創業。資本金9000万円。昨年4月には、千葉県で最終処分場を運営する大平興産(資本金6600万円)を子会社化するなどM&Aを進めている。
郡山市の中でも山間地である田村町地区は、須賀川市、小野町、平田村との境にあり、阿武隈川に流れ込む一級河川、谷田川沿いに最終処分場が建設されてきた。古い順に東から田母神埋立最終処分場(協和産業)、郡山管理型最終処分場(日本産業)がある。
「1カ所目の田母神はほぼ容量がいっぱいになっていると聞きました。2カ所目の最終処分場は1月に郡山市の許可を得て稼働を開始しています。田村町では谷田川上流から順に最終処分場が建設され、今度は私が住む集落の近くでも3カ所目の建設計画があります」

地図を示し憤然とするのは、「河川谷田川の水と命を守る会」の会長、力丸庄司さん(72)。3カ所目の計画を知ったのは、2022年5月ごろだった。当時、力丸さんは谷田川行政区の区長を務めていた。
「自宅にミダックの担当者2人が訪ねてきて処分場をつくると口頭で説明がありました。1人は次長でした。『事業計画書はあるのか』と尋ねると、『ない』と答えました。『ウチは一部上場企業なので信用してください』と言ってきましたが、そういう説得方法はありえない。一部上場ならなおさらきちんとしてほしいと思い、説明資料を求めると1週間か2週間後に資料を持ってきました」
「2022年6月4日」と受領日が書き込まれている「郡山市谷田川区役員説明用資料」には、ミダックが2020年に土地を取得し計画を進めていることが書かれている。郡山市で最終処分場事業を行う際は、廃棄物処理法に基づき、中核市である同市の許可が必要となる。郡山市は「市産業廃棄物処理指導要綱」で事業者に事前協議を求めている。同社は市から、設置予定地の境界から約500㍍以内の居住者と関連する栃山神行政区と谷田川行政区の区長と調整を行うよう指導を受けたという。
力丸さんは処分場建設には反対だったが、前述のようにミダックの担当者との初対面時から好印象を抱いておらず、その思いはさらに強まった。さらに、念頭には当時建設が進んでいた日本産業が運営する郡山管理型最終処分場があった。事業名称は「糠塚地区産業廃棄物最終処分場事業」で、規模は埋立地面積約4万8000平方㍍、埋立容量は約77万立方㍍。ミダックが計画する3カ所目は、埋立容量を比較すると、これよりも2倍以上の規模であることが分かる。

工事中に白く濁った川
2024年ごろ、谷田川が土砂で白く濁るようになった。2カ所目の最終処分場の建設工事中に、力丸さんは川を上流に向かって観察すると、ちょうど処分場より上流側は澄んでいたという。懸念は工事に伴う土砂流出だけではない。稼働後も産業廃棄物に触れた雨水や地下水が流出しないか不安を覚えている。
今年に入って稼働した2カ所目の最終処分場について、本誌は設置許可が下りたのに未着工が続いた裏事情や進入路が整備不可で稼働がさらに停滞していた問題を報じてきた(2019年8月号、同9月号、2020年6月号参照)。稼働までは長かった。
それにしても、なぜ田村町に最終処分場が集まるのか。力丸さんは次のように考察する。
「山間地区地であること、そして過疎化の影響で手つかずの山林や耕作放棄地が増えていることが挙げられます。林業や農業に使わなければ、土地を手放す選択をする地権者もますます増えるでしょう」
田村町は、県内を横断する国道49号が通り、交通の便が良い山間地であることも事業者にとっては最終処分場の好適地に映るようだ。力丸さんは、2月9日付の週刊「循環経済新聞」に載った、2カ所目の最終処分場が稼働したことを知らせる記事を見せた。紙面では、都心からのアクセスが良いこと、東北道須賀川ICや、あぶくま高原道路平田IC、磐越道小野ICのいずれからも近いことを強調していた。
地区力丸さんによると、ここにきて田村町の「産廃銀座化」の流れが進んでいるという。国加速しているという。詳細な位置は判然としないが、進んでいるという。国事業者が田村町糠塚、田村町田母神地内の地権者の家々を回って土地を買う動きがあると聞いた。
力丸さんたち、会のメンバーは住民説明会をミダックに求めてきた。2023年9月には市内田村町と須賀川市で開かれたが、これは県の環境アセスメント条例が定める最低限のもの。田村町で開いた説明会では地元住民70~80人が参加した。
昨年9月に栃山神地区と栃本地区の2カ所で、同11月に谷田川地区で地元説明会が開かれた。この間、住民側はミダックに説明会を望んできたが2年以上を要した。
谷田川地区での説明会では、市が当初からミダックに求めていた「建設予定地境界から500㍍以内の住民と調整すること」を誠実に行っていなかった疑惑が持ち上がった。
力丸さんによると、同社は市に「500㍍以内の住民に対して丁寧な説明をした」と報告していたというが、参加者から、「自分のところには来ていない」との発言とともに、「虚偽の報告をしていたのか」との指摘があった。同社は「虚偽ではなく間違いを報告してしまった」と釈明した。さらにこの説明会に集まった地域住民から次々と疑問や反対する声が上がり、予定を超える5時間もの説明会に。事業者が、住民からの質問を持ち帰り後日回答することになった。
全会一致で法整備への意見書を可決

今年3月の市議会定例会では、力丸さんが所属する「河川谷田川の水と命を守る会」が請願を出し、全会一致で採択された。請願を出すに当たり、力丸さんたちは家々や事業所を回り、田村町地区にある全30行政区長や谷田川行政区内の7事業所などから署名を得た。事業所には、酒造やパン工場、医療機関やグループホームなどがあり、最終処分場が環境に与える影響や増設されることで風評被害が高まる懸念は強いという。
請願では、「産業廃棄物最終処分場の設置許可に係る意見書」の提出を求めた。国に対し、次のような制度設計を求めた。
1、事業者から地元住民に対し丁寧な説明がなされるよう、事業者による住民説明会の開催などを義務化するとともに、事業者が地元住民の不安や懸念に真摯に向き合い、十分な対話と情報共有を重ねることにより、事業者と地元住民との一定の合意形成が図られるような制度を構築すること。
2、最終処分場の過度な集中を避けるため、一地域に設置できる最終処分場の「埋立ての総容量」や「施設間の距離」等に係る基準値を設けること。
3、最終処分場の稼働に伴い河川や井戸水などの生活環境への悪影響が生じた場合や、施設に事故が起きた際の補償や被害復旧ついて、地元住民の安心・安全が担保される制度を構築すること。
思いは以下の記述に集約される。
「いつまでも安心して生活ができ、生業に取り組める田村町が、私たちのささやかな望みです。私たちの故郷、田村町を産廃銀座にしないでください。本請願の趣旨は、上記のとおり、事業者による丁寧かつきめ細やかな住民説明がなされず、事業に対する不信感や不安感が払しょくできないことや、郡山市田村町の東部地区に集中して3カ所目の産業廃棄物最終処分場が建設されることへの現在の法制度への疑問、さらには河川水や地下水の汚染が生じた場合や、万が一の事故時の補償などが担保されていないことです」
力丸さんよりも前に地元で長年活動してきた「やたがわ環境を守る会」会長の石井武四郎さん(75)によると、3月定例会では傍聴席に地域住民100人ほど詰めかけたという。請願提出とそれを受けて国への意見書が可決された意義を述べる。
「状況は依然深刻ですが、とりあえず今できることはやったとホッとしています。我々の思いは市の執行部にも届いたはず。私は田んぼを持っていて、今は田植えの時期です。最終処分場は一切置いてほしくない。もうこれ以上処分場を増やさないでほしい。郡山市には何よりも地元住民の立場に立って動いてほしいです」
本誌はミダックに対して書面で質問した。
請願書に記された住民の意見について認識を尋ねると。
「請願については、地域の皆様のご懸念として受け止めております。現在、手続きの過程にございますので、引き続きご理解いただけるように努めてまいります」
市議会が意見書を可決したことに対しては、
「地域の皆様に信頼していただけるよう、安全で安心な施設の計画を行ってまいります。今後も引き続き、地域の皆様のご理解をいただけるよう対話を継続してまいる所存です」
請願書には、ミダックの「丁寧な説明」が字義通りではないことを示す記述がある。前述したように同社は郡山市の担当課に『建設予定地から500㍍以内の地元住民に対して丁寧な説明をした』と報告していたが、説明会の参加者から、「自分のところには来ていない」との発言とともに、「虚偽の報告をしていたのか」との指摘があったという。同社は「虚偽ではなく間違いを報告してしまった」と釈明する場面があった。
同じ出来事は市議会の岡田哲夫議員(共産)が3月定例会の代表質問で明かし、前出の力丸さんも本誌の取材に答えていた。ミダックは「自分のところには来ていない」と言い、丁寧な説明がなかったことを訴える住民がいたことをどう捉えるのか。
4カ所に増える可能性を懸念
この本誌の質問に同社は「500㍍圏内にお住いの対象住民の皆様には、ご説明をさせていただいた認識です」と答えた。
建設予定地から500㍍以内の住民に丁寧な説明をすることを建設に当たって必要な条件としているのかとの質問には、
「500㍍以内への住民の皆様へのご説明につきましては、郡山市産業廃棄物処理指導要綱に定められた行政手続きとして行っております」
昨年9~11月に行った説明会で時間が足りず持ち帰った質問は、今年3月に書面で住民側に回答したという。
最終処分場は郡山市の設置許可を控え、それが認められれば着工に進む。今後の建設方針を聞くと、
「郡山市産業廃棄物適正指導要綱および福島県環境影響評価条例を遵守し、行政のご指導を仰ぎながら、適正に手続きを進めてまいる所存です」
力丸さんは、4カ所目の計画があることを念頭に産廃事業者に投げ掛ける。
「田村町に最終処分場がこのペースで増え続けたら、安心して住むところがなくなってしまう。事業者は『法的には問題ない』というが近くに住む人の心情は全く考えていない。机の前に座ってだけやる仕事はしないでほしい」


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