喜多方市は昨年9月に「喜多方市財政健全化プラン」を策定した。その背景には、人口減少が進む中で歳入増加が見込めないこと、新型コロナウイルス感染症対策、災害対応、物価高騰対策など、喫緊の事業が続き、財政調整基金が大幅に減少したことなどが挙げられる。実施期間は2025年度から2027年度までの3年間で、今年度は事業見直しに本格的に取り組むことになる。
10億円捻出に伴う〝痛み〟
喜多方市が昨年9月に策定した「喜多方市財政健全化プラン」の前文には次のように記されている。
《少子高齢化・人口減少により市税の大幅な増加が見込めず、普通交付税が減少する中、喜多方市総合計画等に基づく各種施策を着実に推進し、国の少子化対策・こども政策やDX、カーボンニュートラルの推進の取組など、多様化・複雑化する行政課題に対応するとともに、学校給食費負担軽減などの子育て支援、産業の振興等を図り、若者が定住し、安心して生み育て、働くことができる喜多方の実現のための様々な施策を進めてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症、エネルギー価格・物価高騰、令和4(2022)年8月発生の豪雨災害に対する迅速な対応、さらに令和6(2024)年度の近年まれにみる豪雪災害に加え、人件費・物件費の高騰による職員人件費や扶助費等の経常的支出の大幅な増加への対応等により、財源不足を補うための財政調整基金の残高は合併後における最高額(2017年度末約32億円)と比べ大幅に減少しており、新たな行政需要や不測の事態への機動的な対応に苦慮する財政状況にあります。また、財政運営では、「真に必要な行政サービスに要する経費の計上」を基本とし、全事務事業の継続的な見直しや終期設定等の補助金の適正化等を前提とした予算編成を行うとともに、公共施設の統廃合等を進めてきましたが、結果として十分な見直しに至らなかったことも、経常的支出が増加している要因の一つと考えています》
《このままの状況が続けば、財政調整基金が枯渇する恐れがある厳しい財政状況にあることから、 コロナ禍や豪雨災害等を乗り越えた今、本市の将来を見据え、持続可能な財政運営のための財政健全化の取組を進 めるにあたり、健全化の方針、目標、期間、取組項目等を示す「喜多方市財政健全化プラン」を策定したところであり、行政改革の観点も踏まえ、内部管理経費のより徹底した削減はもとより、全ての事務事業の更なる精査・見直しを行い、歳入確保と歳出削減を進めます》
同プランの実施期間は2025年度から2027年度の3年間だが、昨年9月にプランが策定されたことからも分かるように、2025年度は準備期間のような位置付け。本格的な取り組みは今年度から進められることになる。
同市が直面する最大の問題は財政調整基金残高が枯渇しつつあるということに尽きる。財政調整基金とは、一般家庭でいう「貯金」に当たる。当然、その金額が多ければ多いほど何かあった時の安心材料になる。プラン前文にあったように、2017年度は約32億円だったが、2024年度は約5億6000万円まで減少した。
一般的に、財政調整基金は標準財政規模の10%程度が適正とされている。「何かあった時のためにそのくらいの貯金は持っておいた方がいい」という目安のラインだ。それで言うと、喜多方市の標準財政規模は約156億円だから、財政調整基金の適正ラインは約15億円で、現状は10億円ほど足りていない。
そこで、同プランでは、小手先ではなく、財政構造のあり方を根本から見直し、安定的で持続性の高い財政基盤を構築することを目指し、数値目標として、財政調整基金残高15億円以上の確保を掲げている。
同プランに基づき、市は事務事業見直しを進めている。それにより、「2025年度当初予算比で一般財源10億円以上の減」を掲げている。2025年度の当初予算総額は266億2700万円だから、そこから約3・8%の削減を図るということになる。
事務事業見直しは、プラン策定と並行して、昨年5月から全庁的に始まった。市財政課の担当者は次のように話す。
「大前提になるは、①市民の身体・生命・財産を守るための行政サービス、②喜多方市総合計画等に基づく真に必要な行政サービス、③安心して生活・経済活動を行うための市民が等しく受益する行政サービス、④その他(国県施策への対応等)に対して、限られた財源を『選択と集中』することです。これを念頭に、全事務事業について見直し作業を実施しました」
事業見直しの概要
別表は、財政健全化に向けた視点、取り組みの進め方、目標額・事務事業見直し効果見込額をまとめたもの。
| 財政健全化に向けた視点 | 取り組みの進め方 | 目標額(2025〜2027) | 目標額に対する単年度の効果見込額 | 計 | ||
| 2025年度 | 2026年度 | 2027年度 | ||||
| 歳入の確保 | 2025年度からふるさと納税のさらなる確保、ネーミングライツ等に取り組むとともに、市有財産売却等の取り組み等を行う。2026年度に向けた使用料・手数料の全庁的な見直しを行う。 | 3億円 | 1億4200万円 | 1億1500万円 | 100万円 | 3億0800万円 |
| 総人件費の抑制 | 2025年度から特別職給与カット、管理職手当カット、組織体制のスリム化に取り組むとともに、市民サービスの維持に配慮しながら総人件費の抑制を行う。 | 1億円 | 4100万円 | 2200万円 | 3300万円 | 9600万円 |
| 公共施設のあり方の見直し | 公共施設等総合管理計画・個別施設計画の見直しを前倒しして実施する。見直しについては、緊急に検討を要する施設等を優先的に行うとともに、その他の施設も順次見直しを行い、施設の方向性を見直すものは2027年度実施に向けた検討を進める。 | 2億5000万円 | — | — | — | — |
| 事業全般の見直し | 2025年度は緊急性の高いものを除き、当初予算の範囲内での執行とする。2026年度に向け、必要に応じ、関係者への事前説明等を行いながら、事業の選択と集中、ビルド&スクラップ等を進める。 | 3億円 | 2300万円 | 2億0600万円 | 1900万円 | 2億4800万円 |
| 各種補助金等の見直し | 2025年度は緊急性の高いものを除き、当初予算の範囲内での執行とする。2026年度に向け、必要に応じ、関係者への事前説明等を行いながら「喜多方市補助金等の適正化に関する指針」、県内他市との補助水準の均衡等による見直しを進める。 | 3000万円 | 500万円 | 2100万円 | 200万円 | 2800万円 |
| 内部管理経費の徹底した削減 | 2025年度から事務費や維持管理費等のさらなる削減に取り組む。 | 2000万円 | 300万円 | 2300万円 | 100万円 | 2700万円 |
| 目標額・効果見込額 合計 | 10億円 | 2億1400万円 | 3億8700万円 | 5600万円 | 7億0700万円 | |
大きく分けると、歳入の確保、総人件費の抑制、公共施設のあり方の見直し、事業全般の見直し、各種補助金等の見直し、内部管理経費の徹底した削減の6項目で、これが全体像となる。
全体目標である10億円減に対し、現時点で積み上げられた効果見込額の累計は7億0700万円。このうち、2026年度単年の効果見込額が3億8700万円と約半分を占めている。これは、2025年度を「即効性の高い内部経費の削減と、市民への事前説明等の準備期間」と位置付け、2026年度に本格的に見直しを実行するため。言い換えると、今年度は最も〝痛み〟を伴う年度ということになる。
具体的には、財政課の担当者が話した4項目に財源を集中させるため、相対的に必要性が低いとされる事業の廃止・縮小が行われる。その中でも、市民が〝痛み〟を実感するであろう部分をいくつか抜粋する。カッコ内の金額は2026年度の効果見込額。
観光・イベント関係
○ふれあいきたかた農業まつり廃止(220万円)
○もっと美味しい喜多方プロジェクト事業廃止(9万円)
○ナメコのふるさと喜多方推進事業廃止(27万円)
○漢字のまちづくり事業廃止(1万8000円) 観光拠点の無人化・縮小
○三ノ倉高原花畑事業のヒマワリ作付面積縮小(2183万6000円、2026年度は菜の花のみ)
○喜多の郷観光案内所の無人化運用(353万6000円)
○日中線しだれ並木ライトアップや臨時駐車場・道路警備の規模縮小(250万円)
市民活動・教育・福祉関係
○市民活動団体等人材育成事業補助金廃止(10万円)
○将棋普及推進事業の将棋まつり廃止(177万円)
○アメシロ等害虫駆除薬剤の行政区への配付事業廃止(92万3000円)
○子ども家庭総合支援事業に要するタブレット端末廃止(22万4000円)
助成事業の減額等
○緊急通報システム事業の利用料一部自己負担化(57万3000円)
○風しん対策助成事業の自己負担額引き上げ(6万1000円)
○電気自動車普及促進事業補助金の財政健全化プラン期間中休止(70万円)
○省エネルギー設備等設置費補助金の財政健全化プラン期間中休止(254万円)
ここで示したのは一部で、ほかにも市民が〝痛み〟を実感すると思われるものは少なくない。
そのほか、ふるさと寄付金・企業版ふるさと納税の増額の取り組み、市有施設へのネーミングライツ導入、市有財産売払収入といった歳入確保のための取り組みや、特別職給与カット、管理職手当カットといった総人件費抑制の取り組みなどがある。
市民が〝痛み〟を実感するであろう事業の廃止・縮小を実施する以上、行政自らが身を削ることは不可欠だ。
もっとも、特別職給与カット、管理職手当カットなどは実施すれば、確実に見込額に達するが、ふるさと納税増額やネーミングライツ導入などはそれに応じてくれる人(企業)がなければ成立しない。市財政課によると、「ネーミングライツは2件が決定しており、ふるさと納税の増加を含め、今後もその推進に注力する」とのことだが、目標に到達できるか不透明な部分もある。
今後の課題は公共施設の見直し
一方で、前述したように、歳入確保、人件費抑制、事業見直しなどにより、2025年度から2027年度で10億円の捻出を目標としている。これに対して、現時点で積み上げられた効果見込額の累計は7億0700万円。想定している取り組みを着実に実施し、見込み通りの成果が得られたとしても、目標額まで3億円ほど足りない。
その最大の要因は、「公共施設のあり方の見直し」が進んでいないからだ。目標では公共施設のあり方の見直しにより、2億5000万円の削減(効果見込額)となっているが、表を見てもらえば分かるように、年度ごとの効果見込額は、2025年度から2027年度のすべてで「-」(空欄)となっている。
プランでは「施設の方向性を見直すものは2027年度実施に向けた検討を進める」という表現に留まっている。
市財政課によると、「現在、計画作成に向けて準備を進めている」とのことだが、おそらく、この部分が最も市民の関心が高い部分だろう。すなわち、地域の公民館や旧学校施設などはどうなるのか、といった視点である。この部分の合意形成には、十分かつ丁寧な説明など相応の時間が必要になる。
「喜多方市公共施設等総合管理計画 個別施設計画」というものがある。これは2020年度に策定されたもので、同計画に基づき、施設の更新、複合化・集約化、長寿命化、廃止・統合などを進めている。当初は2029年度に見直しを行う予定だったが、財政健全化プランに合わせ、見直し時期を前倒しして、2027年度までに計画を策定し、実施できるものは実施していくという。
「議会でも、公共施設の見直しはどうなっているのか、といった質問がありましたが、対象公共施設は530施設960棟あり、現在はデータの構築などを進めています。今後は、市民の方々への説明等を経て、計画策定・実施という流れになります」(市財政課)
市民の間でも「市の貯金(財政調整基金)が枯渇しかかっているのは何とかしなければならない」、「将来世代にツケを回してはいけない」というように、総論の部分については一定の理解が得られている。
その一方で、「これまでの財政運営の見通しが甘かったのではないか」といった声や、昨今の物価高騰、コロナ禍の後遺症や相次ぐ自然災害の影響が残る中で「なぜこの苦しいタイミングで、補助金カットや自己負担の引き上げを行うのか」といった不満も渦巻く。
そんな中で、今後出てくる公共施設見直しという〝本丸〟にどこまで踏み込めるか。市民への丁寧な説明と合意形成を進めながら、残り3億円のギャップをどう埋めていくのか、喜多方市の財政再建はこれからが正念場と言える。

























