「梁川地域市民のくらしと命を守る会」(名谷勝男代表)は2022年7月5日、伊達市梁川町の粟野地区交流館で住民説明会を開いた。会には須田博行市長と市幹部が招かれ、地域住民ら約50人が出席した。
守る会は、やながわ工業団地で建設が進められているバイオマス発電所に反対するため2021年3月に結成された。同発電所は群馬県太田市の産業廃棄物処理業㈱ログが建設を進めている。
同発電所をめぐっては▽木材だけでなく建築廃材や廃プラスチックも焼却される、▽バイオマス事業のガイドラインを無視し、住民への十分な説明がない、▽ダイオキシンの発生などが懸念される――等々から反対の声が上がっているが、守る会では市(須田市長)の対応にも不満を露わにしている。理由はさまざまあるが、要するに市は「民の取り組みに関知しない」という姿勢を崩そうとせず、それが守る会には「住民を守る気がない」と映っているのだ。計画への賛否を示してこなかった須田市長が市長選目前の2021年12月定例会で「認められない」と発言したのに、結局建設が進んでいることも「当選したくてウソをついた」と反発を買った。
冒頭の住民説明会でも、須田市長は守る会役員や出席者から厳しい質問と批判にさらされた。それでも須田市長は「市としては適切に対応した」という発言を繰り返した。
住民説明会終了後、須田市長に聞くと疲れた様子でこう話した。
「うーん、正直とても難しい問題だ。市としては法律でそうなっている以上、その時々に応じた判断をするしかなく、そこは間違っていないと思うが……」
守る会や地域住民が須田市長に怒りをぶつける気持ちは分かる。しかし、当事者のログが不在の場で住民と市が意見を交わしても解決につながらないのではないか――住民説明会の様子を見ていてそう感じた。
まず大前提にあるのは、ログの不誠実な姿勢だ。建設に必要な手続きは法律に則って進めたのだろうが、地域住民や工業団地内の事業所に丁寧な説明を行わなかったのは問題だった。説明は言ってみれば努力義務の類いだが、見ず知らずの場所で新規事業を行おうとするなら、きちんと説明を尽くし地元との信頼関係を築くことが欠かせない。そこをないがしろにして「法的に問題なければあとは何をしてもいいんだ」という経営姿勢では、地元から歓迎されず、事業への理解も得られない。
そのうえで市がやるべきは「地元の理解が得られなければ市として賛成できない」という姿勢を明確にすることではなかったか。あるいは市が仲介役となって説明会を設け、住民とログに出席してもらい、意見を交わし合う方法もあったと思う。市と住民、市とログによる話し合いでは、お互いの言い分が正確に相手側に伝わらない。市は「説明会を開く義務はない」と言うかもしれないが、市民が困っているのに見過ごすのは、それこそ行政の不作為だ。
日立造船が下郷、南会津、昭和、会津美里の4町村にまたがって計画している会津大沼風力発電事業(仮称)をめぐっては、舟木幸一昭和村長や渡部正義南会津町長が「法的には問題ないが受け入れられない」と撤回を求めている。町村は県に意見書を提出する立場に過ぎず、たとえ反対しても法的効力はない。それでも舟木村長と渡部町長は自然保護や文化財保護、防災の観点から「受け入れられない」と明言した。
会津大沼風力発電事業(仮称)の廃止について
これを伊達市に置き換えた場合、同発電所の近くには小学校や認定こども園がある。須田市長が「法的には問題ないが、子どもたちの安心・安全の観点から受け入れられない」と発言するのは自然なことで、それこそ市長として住民に寄り添った姿勢だと思うが、いかがだろうか。