「エフレイ」は産業復興の起爆剤となるか

「エフレイ」は産業復興の起爆剤となるか

4月から第3期復興・創生期間が始まる。期間中の取り組みの中でも、産業復興の起爆剤として位置づけられているのが福島イノベーション・コースト構想と、福島国際研究教育機構の取り組みだ。どちらも国家プロジェクトとして進められており、原発被災地の経済活性化につながることが期待されているが、効果は限定的と見る向きもある。

中国と台湾の世界的拠点は予算10倍以上

双葉郡8町村の域内総生産推移

復興庁などの資料によると、原発事故で避難指示が出された双葉郡8町村の域内総生産(GDP)は2010年度4828億円だったが、発災から12年経った2022年度も2429億円(49・7%減)までしか回復していない。

2022年度の全国の総生産(国内総生産)は、2010年度比12・4%増の567兆円。全国の伸びに反して、双葉郡8町村のGDPが減少していることが分かる。

建設業を除いたGDPで比較すると、2010年4655億円、2022年1237億円(73・4%減)と、さらに減少率が高くなる。復興需要で売り上げを伸ばした建設業が地域経済を下支えしており、産業全体の復興が十分に進んでいない現状が見えてくる。

2023年度にコロナ禍がひと段落し、県内総生産が名目・実質ともに前年度から5%以上増加したので、今後双葉郡8町村のGDPも増えると思われるが、2010年度規模に回復するとは考えにくい。

その他の指標も掲載しておく。

【製造品出荷額等】2010年度1077億円→2022年度283億円(73・7%減)。

【居住人口】2010年度7・3万人→2024年度1・2万人(84・2%減)。

【就業者数】2010年度3・5万人→2020年度0・9万人(75・2%減)。

復興まちづくりやインフラ整備は進んでいるが、産業復興はなお道半ばという状況なのだ。

政府は昨年6月、2026~2030年度に進める東日本大震災からの復興基本方針を閣議決定した。この5年間は「第3期復興・創生期間」に位置づけられ、事業規模は約1兆9000億円程度と見積もられている。報道によると、福島県分は1兆6000億円程度となる見通し。

原発被災地に関しては、▽事故収束、▽環境再生に向けた取り組み、▽帰還・移住等の促進、▽農林水産業の再建、▽風評払拭・リスクコミュニケーションの推進――などの取り組みが進められる。

特に産業復興の面で注目されるのが▽福島イノベーション・コースト構想(以下イノベ構想と表記)を軸とした産業集積・事業者再建と、▽福島国際研究教育機構(F―REI=以下エフレイと表記)の取り組み推進の2点だ。

イノベ構想は浜通りに研究・産業拠点を整備し、産業集積・人材育成・交流人口の拡大を進めることで、新産業創出につなげていくというもの。①廃炉、②ロボット・ドローン、③エネルギー・環境・リサイクル、④農林水産業、⑤医療関連、⑥航空宇宙を重点分野に位置づけ、「2030年ごろまでに全国水準並みのGDPなどの成長」を目標に掲げる。

「②ロボット・ドローン」の一大開発実証拠点として南相馬市や浪江町に整備されたのが福島ロボットテストフィールドだ。活用事例は1100件超で、ここが呼び水となり80社超の関連企業が新規進出した。

このイノベ構想をさらに発展させ、「創造的復興の中核拠点」を目指して整備されたのがエフレイだ。

①ロボット、②農林水産業、③エネルギー、④放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用、⑤原子力災害に関するデータや知見の集積・発信――の5分野で研究開発を進める。

場所は浪江町のJR浪江駅西側。約17㌶の敷地に研究棟などの本部施設を整備し、国内外から500人規模の研究者を集める(巻頭グラビアの写真参照)。本部施設は2028年度の完成を目指している。現在は拠点がないため、海外も含む既存の研究施設や自治体、金融機関などと研究開発に関する連携協力を進めながら、県内市町村での座談会、教育機関でのセミナーを実施している。昨年4月には、福島ロボットテストフィールドと環境創造センター三春町施設内の「放射性物質の環境動態研究」をエフレイに統合した。

特に本部施設が整備される浪江町ではエフレイを拠点に据えたまちづくりが進められており、駅東側では集合住宅や商業施設などが整備される再開発が計画されている。本部施設近隣の浪江駅西口には町が土地を貸し出してホテルを誘致。周辺のまちづくりは官民で検討を重ねる。

エフレイを拠点に産業集積が加速し、移住者が増えることで、地域全体の復興につながっていく――。そうした期待から、エフレイの本部施設が完成し、本格的な研究が始まるこの5年間への期待が高まっている。

一方で、こうした動きを冷ややかに見る向きもある。

「世界的なIT企業であるファーウェイやテンセントが拠点を置く『中国のシリコンバレー』こと深圳(しんせん)、世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCが本社を置く台湾・新竹市の新竹サイエンスパークなどは、いずれも1兆円を超える規模で予算が投じられて、世界を代表するハイテク産業の拠点になりました。近隣に複数の大学が設置され、優秀な人材を育成・獲得する体制ができ、いまも発展を続けています。そうした中、後発で予算規模も下回るエフレイが世界的拠点になり得るかというと、かなり難しい面があると思います」(産業集積分野に詳しいジャーナリスト)

1000億円規模では、世界的拠点と呼べる水準・知名度に到達するのは容易でない、と。

進出企業が相次いで倒産

昨年から今年にかけては、イノベ構想の重点分野の事業に取り組んでいた、原発被災地進出企業が経営破綻する事例が相次いだ。

昨年4月には、南相馬市の福島ロボットテストフィールド近隣の工業団地に進出していたロボット関連企業「ロボコム・アンド・エフエイコム」が福島地裁相馬支部から特別清算開始命令を受けた。負債は約33億円。

今年1月には、東京理科大発の宇宙関連スタートアップ企業で、南相馬市に本店を移転していた「スペースウオーカー」が東京地裁に自己破産を申請した。負債は昨年6月期末時点で約19億5400万円。

産業集積が進んでも、企業の撤退や破綻が起こりうるということだ。

産業復興は国や県、原発被災自治体がどれだけ旗を振っても容易に実現できるものではない。エフレイが本当の意味で経済発展のきっかけとなり、双葉郡8町村のGDPを震災・原発事故前の規模まで回復させることができるか。既存企業との連携や人手不足の解消、原発被災地間の格差も避けて通れない課題だ。

原発が産業となっていた地域の行く末について、本誌では今後も折に触れてリポートしていきたい。

エフレイの仮事務所が入居するふれあいセンターなみえ
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