わたなべ・ひろみ 1946年生まれ。福島大経済学部卒。福島ヤクルト販売会長。福島商工会議所副会頭を経て、2013年11月、同会頭に就任。現在5期目。
福島市はJR福島駅周辺の再開発をはじめとした中心市街地活性化という懸案事項を抱える。円安や物価高騰、最低賃金の上昇に中小企業が苦慮する中、市経済のかじ取り役である福島商工会議所はどう経済活性化に取り組むのか。渡邊博美会頭(福島ヤクルト販売㈱代表取締役会長)に5期目への抱負と喫緊の課題への対応を聞いた。
――11月1日、福島商工会議所会頭に再任されました。
「NHK連続テレビ小説『エール』や東京五輪野球・ソフトボール競技の一部試合開催、JR福島駅東口再開発など、福島市を盛り上げるため、多くの仕掛けが予定されていた時期にコロナ禍が重なりました。正直〝やり残し〟が多く、この問題を解決しないまま次の世代にそのまま渡すわけにはいかないという強い思いがありました。副会頭や議員の皆さんも同じ気持ちで、再任を依頼されたので引き受けることにしました。
我々の役割は、現在の厳しい状況を市、県、国と〝同じ価値観〟で共有し、課題の解決を図っていくことだと考えています。経営相談やイベント支援はもちろん、経営の足腰を強くしたい中小企業にとって、頼りになる存在でなければなりません。そのためにも事務局職員の質的・人的なレベルを上げ、時代のニーズに応えられる組織にしていくことが重要だと考えています」
――組織の変革に着手されていると伺っています。
「商工会議所がこれまでの流れを踏襲するだけではいけない、という強い危機意識を持っています。改選期にあたり、長年議員を務められた議員の後任として、若い経営者や女性にぜひ加わってほしいと強くお願いしました。その結果、全130人中18人が新議員となりました。全議員のうち6人が女性です。
新たな議員たちは『このままの福島でいいのか』という明確な問題意識を持っています。業界別の部会とは別に、福島市の活性化や人材育成などについて横断的に議論する『委員会』を設け、そこに若手や女性が責任者として入る体制を準備中です。問題意識を持っている方がリーダーになることで、課題や解決策が明確になります。世代や立場を超えて本音を言い合える環境づくりこそ、福島の未来を動かす原動力になると信じています」
――管内の経済情勢、特に会員事業所の状況はいかがでしょうか。
「『厳しい』の一言に尽きます。円安の影響もあり物価高が続いており、特に食料品価格の高騰は深刻です。年金生活の高齢者や賃上げが難しい業種の方は生活防衛が精いっぱいの状況だと思います。
事業者にとって大きな課題は『価格転嫁』と『賃上げ』です。当会議所の調査では、取引先との交渉で価格転嫁が以前より進んでいるという結果が出ました。以前は『全く価格転嫁できない』と回答する事業所が多かったのですが、いまは約45%が原価や経費の5割以上を価格に反映できています。中小企業にとって大きな前進ですが、価格転嫁は消費者にとって物価高であり、節約志向が強まるため、売上増に直結するわけではありません。利益が出ない状態では事業継続が難しく、廃業や雇用喪失のリスクもあります。この踏ん張りどころを我々がどう支えていくかが問われています」
――国への要望は。
「地方交付税の増額が不可欠です。国から地方が自由に使える予算を出してもらい、県や市が上手に活用することが重要だと考えます。経済活性化に即効性があるのはプレミアム付き商品券や〝現物型給付〟だと思います。政府が検討している『おこめ券』もいいですが、例えば浜通りの『常磐もの』に限定した『おさかな券』のように、地域に直接還元できる商品券を発行すれば、消費喚起と地域振興を両立できます」
――来年4月から6月にかけてJRグループと連携した観光キャンペーン「ふくしまデスティネーションキャンペーン」が開催されます。福島市では県立美術館で「大ゴッホ展」が予定されており、多くの来場者が予想されますが、交通渋滞が課題になりそうですね。
「今年県立美術館で開催された『金曜ロードショーとジブリ展』は、過去最高の来場者数となる21万人を記録しました。『入場予約制』が奏功して混雑は回避できたように思います。来年の大ゴッホ展は、台湾などからの来場者も期待できます。アクセス道路が限られているため、花見山のように、離れた無料駐車場からシャトルバスを運行する〝パークアンドライド〟方式が不可欠です。一方、今回福島交通飯坂線が美術館往復切符を設けたり、増便したのは効果があったと思います。
来春のふくしまDCに合わせ、当会議所もランチクーポンを前倒しして3月から実施し、来場客に福島市のグルメをお得に味わってほしいです。定額制タクシーの導入やキッチンカーの出店など、美術館周辺の来場者の利便性・満足度向上に関しても検討していきたいですね」
――観光面では夏の「わらじまつり」に有料席を導入するなど、改革の取り組みが続いています。
「有料席をメーンステージ近くに移設したところ、売れ行きは好調でした。最大の要因は踊り手が増加したことだと思います。ダンススクール生徒の参加再開などにより、土曜日だけで約1000人増え、その家族や友人が観客として訪れました。初日は雨にもかかわらず、前年を上回る盛り上がりでした」
――中心市街地活性化については、会頭ご自身が非常に強い問題意識を持たれているようですね。
「以前、増田寛也元総務大臣とお話しした際、地方都市の中心部が住民に必要とされるための三要素として①買い物、②交通、③医療――を示していました。交通が整備され買い物場所や医療機関が充実している中心市街地には足を運ぶ、という考え方で、福島駅東口の再開発もこの視点が必要だと思います。再開発ビルには飲食店やオフィスだけではなく、医療機関の導入も検討すべきではないでしょうか。県立医大との連携など多角的な発想が求められます。
福島駅の東西自由通路の整備も喫緊の課題です。現状では地下歩道でしか行き来できないので、JRに改善要望を続けながら交通系ICカード『Suica(スイカ)」による改札内通り抜けの検証も進めています。福島駅西口のショッピングセンター『パワーシティピボット』には食品スーパーが出店予定で、改札内を通って東西を行き来できれば回遊性が高まり、中心市街地の再生につながります。行政と連携し、将来の子どもたちが『自分たちのためにこういうことをしてくれた』と評価してくれるような、改革の時期だと捉えて、全力で取り組んでいきます」

























