【福島市】ふくしま花火大会・福島わらじまつり 有料席体験ルポ

【福島市】花火大会・夏祭り有料席体験ルポ

 福島市は今夏行われた「ふくしま花火大会」と「福島わらじまつり」で有料観覧席を増設した。〝課金〟することで、福島市の夏のイベントをどれだけ快適に楽しむことができるのか。福島市出身ながら、両イベントをまともに見たことがない記者が自腹で体験してみた。(志賀)

わらじまつり最前列は空席だらけ

【わらじまつり】ガラガラの有料観覧席(8月2日撮影)
【わらじまつり】ガラガラの有料観覧席(8月2日撮影)

 ふくしま花火大会は7月27日、福島わらじまつりは8月2~4日に行われた。

 これまで花火大会では打ち上げ会場近くの信夫ヶ丘球場スタンド席を500円で開放し、わらじまつりでは有料観覧席を置いてこなかった。だが、昨年から花火大会、わらじまつり、ともに有料観覧席を設置。今年はさらに有料席を増やした。

 その狙いについて、福島市にぎわい商業課の担当者は「震災復興イベントなどへの参加や愛知県豊橋市とのパートナーシティー協定締結などで都市間交流が活発になっており、福島市を象徴する観光コンテンツとして、花火大会とわらじまつりが注目される機会が増えている。魅力ある観光コンテンツとして確立し、街のにぎわい創出と交流人口の拡大につなげたい」と述べる。

 今年2月に行われた福島駅周辺まちづくり検討会では木幡浩市長が《福島市はこれまで外にアピールすることをやってきていない》《他のお祭りであれば、道路の片側1車線を平気でつぶして観覧席を置いて有料席にする。そのようなことが福島は全然できていない》と話していた。

 本誌記者は福島市出身、在住だが、郊外部に住んでいたこともあり、花火大会、わらじまつりともにまともに見たことがない。木幡市長がそこまで言うなら有料観覧席で見ようじゃないか――と思い立ち、花火大会、わらじまつりを有料席で観覧することにした。

 花火大会の有料観覧席はS席が売り切れていたため、信夫ヶ丘緑地の階段斜面に設けられたA席(2500円)をネットで購入。打ち上げ会場から約2・5㌔離れている編集部の駐車場に車を止め、会場に歩いて向かった。

 花火大会開始30分前に会場に到着すると、周辺は大混雑。屋台には100人ぐらいが並び、まっすぐ歩けないほどだった。

 A席は石階段が、指定席の番号が書かれた紙で覆われていた。1人当たりのスペースは男性でも余裕があると感じるほどで、隣の人との間隔は気にならなかった。

 花火大会がスタートすると、間近で見る打ち上げ花火の美しさに圧倒され、しばらくの時間呆然と見入った。場所取りなどをせず開始時間ぎりぎりに来て、間近で花火を見られるのだから、2500円の価値はあるだろう。

 風の関係で会場周辺に花火の煙が停滞し、大玉の花火が煙に隠れてしまうシーンもあった。また、硬い石階段に座り続けるため、時間が経つごとに尻が痛くなるのも誤算だった。

 それでもトータルで満足度は高かったと言える。全席有料指定席の花火イベントが東北でもずいぶん行われるようになっており、「お金を払って花火を見る」ことへの抵抗感がだいぶ薄れていたのも大きかったかもしれない。

 わらじまつりでは2日にA席(最前列、3000円)、3日にB席(2列目、2000円)を購入。JR福島駅西口のイトーヨーカドー福島店跡に設けられたコインパーキングに車を止め、東口の会場に歩いて向かった。

 全長12㍍の大わらじのパレード、わらじ踊りが披露される国道13号沿いには車道1車線を潰して有料観覧席が設けられた。

 だが、指定席に行ってみると、座っている人の数はまばらで、祭りが始まってからも変化はなかった。ふと道路の向かいに目をやると、家族連れが地べたに座って観覧していた。何のために金を払って見ているのか、分からなくなった。

 有料観覧席がガラガラだったこともあって、街なかに様子を見に来た同僚にすぐ発見された。有料観覧席の風景がほしいNHKニュースにも映ってしまい、わらじまつりに興奮している観光客のように見えた。

 今年から駅前通りまで会場を拡大して流し踊りになったとのことだが、企業・団体の参加者による、同じ音楽(わらじ音頭)、同じ振り付けの踊りが続き、時間が経つごとに有料観覧席で見続けるには単調に感じるようになった。

 公共交通機関で訪れ、酒を飲みながら楽しんだり、家族でわいわい話しながら見るのが本来の楽しみ方なのかもしれない。

ブラッシュアップ必要

花火大会のA席
花火大会のA席

 3日は土曜日ということもあって前日より人出が多く、盛り上がりも違った。ダンスチームなどがアレンジして華やかに踊るシーンもあり、前日より見ごたえがあった。それでも有料観覧席はガラガラで、前に人がいないので、2列目のB席でも全く支障なかった。空席ばかりが目立ったので、来年からはもう少し規模を縮小してもいいのではないか。

 有料観覧席の利用者に感想を聞くと意外にも「県外から福島市に赴任して、有料観覧席が有ると聞いたので初めて見に来た」、「子どもにわらじまつりをいい場所で見せたくて購入した。食事しながら落ち着いて見ることができてよかった」など好意的な意見が聞かれた。こうした評価を広めていくことも必要になろう。

 福島市によると、花火大会とわらじまつりの有料観覧席の販売実績は別表の通り。特にわらじまつりは3、4割程度の売り上げで惨憺たる結果だった。

花火大会の有料観覧席

席種場所価格席数販売実績割合(%)
丸テーブル席(4人掛け)下釜運動公園14,0001006868%
テーブル席(バラ売り)下釜運動公園3,5001208067%
S席信夫ヶ丘緑地3,500200200100%
A席信夫ヶ丘緑地2,50040037393%
B席(自由席)自由席1,0004500152634%

わらじまつりの有料観覧席

席種場所価格席数2日販売実績割合(%)3日販売実績割合(%)
SS席(4人掛け)AXCビル2階18,000321238%825%
S席(4人掛け)国道13号14,00040718%1025%
A席国道13号3,0002204621%8539%
B席国道13号2,0002202210%6530%
C席国道13号1,0002206530%9644%

 東北では青森ねぶた祭で2人席(13万2000円)などの高級観覧席を設け、人気を集めているほか、仙台七夕まつり、秋田竿燈など圧倒的な知名度を誇る夏祭りが並ぶ。約100万人が集まるねぶた祭に対し、わらじまつりの入り込み数は約30万人。魅力的な夏祭りが同時期に開催されている中で、福島市に足を運んでもらうためには、内容もブラッシュアップしていくことが求められよう。いまのままでは正直、来年も有料観覧席でわらじまつりを見たいとは思えない。

志賀 哲也

しが・てつや

1980(昭和55)年生まれ。福島市出身。
大手食品スーパーで勤務後、東邦出版に入社。

【最近担当した主な記事】
南相馬市ブローカー問題「借金踏み倒し」被害者の嘆き(2023年7月号)
相馬市の醤油醸造業者が殊勲(2023年5月号)

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