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【福島県温泉協会】遠藤淳一会長インタビュー

【福島県温泉協会】遠藤淳一会長インタビュー

えんどう・じゅんいち 1955年生まれ。高湯温泉吾妻屋社長。
2015年から福島県温泉協会会長を務める。

 ――温泉協会の活動と役割についてお聞かせください。

 「名前の通り、福島県内の温泉に関わる旅館を中心とした組織で、会員数が130軒前後の任意団体です。法人団体ではありませんが、日本温泉協会とのつながりや県の薬務行政として温泉審議会に携わるなど、行政とのパイプ役として活動しています。加えて、会員の皆様に向けて温泉に関する勉強会を開催して知識向上に努めたり、各温泉地だけでは難しい取り組みを協会を通じて全県下でやっていったりと、多角的な役割を担っている組織と言えます」

 ――コロナの法的位置付けが5類に移行され、9月からは観光キャンペーンが実施されています。

 「昨年は全国旅行支援などの補助金制度がありましたが、5類移行に伴ってそれもなくなり、ある意味では今年からが勝負の年になっていくと言えます。温泉協会の会員の強みは、どこの施設も温泉を持っていることです。ある旅行会社が実施した『コロナ禍が明けたら何をしたいですか』というアンケートでは、『温泉に行きたい』という回答が最多でした。我々としても、そうした方々に来ていただけるよう温泉を最大限に活用していく考えです。実際、県の観光キャンペーンの影響もあってか、各地のお客様の入り込みは増えています」

 ――高湯温泉と土湯温泉では、脱炭素化に向けた取り組みが進められており、持続可能な観光地づくりに取り組む国立公園内の地域を登録する環境省の「ゼロカーボンパーク」制度で、東北初の登録を受けました。

 「都市部の温泉地にも脱炭素化への意識は芽生えつつあり、今回の『ゼロカーボンパーク』の登録によってその流れが大きく波及していくものと見ています。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)や日本温泉協会が中心となり、脱炭素化を目指す動きが広まっていますが、今回の東北初の登録は脱炭素化への取り組みを周知する良いきっかけとなり、今後、高湯・土湯両地域合同で、どのような取り組みを進めていくのか協議していく考えです。

 現状の取り組みとしては、土湯温泉では再生可能エネルギーの一つである温泉熱を利用したバイナリー発電施設の整備が進められており、高湯温泉は源泉かけ流しという形をとり自然の地形を生かして引くことを実施しています」

 ――今後について。

 「国内のインバウンドが増えている一方で、福島県への来客者数は決して多いとは言えません。その原因としては原発事故の影響が未だにあります。その点は国や県に正確な情報発信をお願いしたいですし、温泉地まで足を運ばずとも、国内の関係人口を増やすため行政に要望や提言していく予定です。

 また、日本温泉協会で日本固有の温泉文化をユネスコの世界文化遺産に登録しようという動きが群馬県の山本一太知事を中心に展開されており、県温泉協会としても協力していく考えです。登録によって県内インバウンドの増加につながるものと見ています。

 このほか、再生可能エネルギー事業において、福島県は原発事故の風評被害等、他県とは異なる状況にあることを考慮のうえ、福島県独自の再生可能エネルギー事業のガイドラインを作成し、温泉関係者や観光等に関係する機関を保護していくことも重要と考えます。

 温泉は有限であり無限でないことを念頭に置き、これを守るべく会員皆で協力していく考えです。温泉を好きな皆様に、いつまでもこの素晴らしいお湯を楽しんでいただけるように努力していく所存です」

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