アメリカのトランプ大統領による関税措置、いわゆる「トランプ関税」の影響が懸念される中、内堀雅雄知事は6月3日の定例会見でトランプ関税対策の補正予算を組むことを明らかにした。
《このトランプ関税の話が出てきてから、関係の企業、団体、機関等と様々な形で意見交換をしております。
現時点で直接的な影響については伺っておりませんが、皆さんが感じておられるのは、今後の先行きに不安感を持っているということであります。
企業の皆さんや団体の皆さんが不安を持っていることもあり、今回の6月補正予算において、先んじて予算措置を行い、対応していきたいという思いであります》(県HPに掲載された知事定例会見の発言より)
県議会6月定例会に提出された一般会計補正予算案の総額は70億5100万円で、このうち50億1700万円は、いわゆるトランプ関税対策予算。
具体的な対策は3つ。
1つは相談体制の強化。県内7つの地方振興局に特別相談窓口を設置し、事業者からの相談を受け付けるほか、企業訪問などにより、事業者の困りごとを聞き取り、金融機関や経営支援専門家などへの橋渡し役を担う。
2つは「関税対策特別資金」の創設。トランプ関税の影響を受けた、あるいは受ける見込みの中小企業者に、円滑な資金調達を支援するため、県緊急経済対策資金「関税対策特別資金」を創設し、対象金融機関から事業者への貸付を行う。利率は変動1・3%以内、固定1・5%以内、融資限度額は8000万円で、全体で100億円の枠を用意している。
3つは販路開拓支援の強化。トランプ関税対策による県産品プロモーション事業として、欧州や台湾への県産品の輸出促進を図る。
ポイントになるのは2つ目の関税対策特別資金だが、県商工労働部経営金融課によると、「7月9日に申し込みを開始し、7月24日時点での申し込み件数は4件」とのことだった。
そこから考えると、まだ表立った影響は出ていない、ということができそう。申し込みがあった企業の業種などは「非公表」(県経営金融課)とのことだが、県としては「やはり、自動車産業への影響が多いと考えている。自動車産業は裾野が広く、県内には関連企業も多いので」(同)と話した。
さらに県経営金融課の担当者はこう続けた。
「完成品をつくり輸出しているところは直接的に影響が出てくると思います。それに対して、部品をつくっている製造業などでは時間差で影響が出てくると思われます。そういった意味では、今後影響が本格化していくと予想されます。また、完成品をつくって輸出しているという点では、日本酒を製造・販売・輸出しているところも、自動車産業と並んで影響が懸念されます。福島県は酒造メーカーも多いですしね」
県の支援制度の申し込み件数などからすると、まだトランプ関税の影響は本格化していないと言えそうだが、今後もその動向には注視していく必要がある。
