中心市街地の老舗ホテルが事業停止する一方で、大手チェーンのホテル進出が相次いでいる福島市。2月にはアパホテルが市内2棟目を出店する。福島駅東口再開発の工事の遅れやイトーヨーカドー福島店の閉店などで、駅前の人通りが減っている中、なぜホテルは増え続けるのか。
市の中心市街地活性化補助金に賛否両論

ビジネスホテル業界最大手・アパホテル(東京都港区、元谷芙美子社長)は昨年11月18日、福島市中町の「ホテルサンルート福島」を「(仮称)アパホテル福島駅東」としてリブランドオープンすることを発表した。
アパホテルを展開するアパグループの広報担当者によると、きっかけは、商業施設の企画・開発・運営などを手掛ける環境開発グループ(山形県酒田市、仲條啓三代表取締役会長兼CEO)がホテル事業参入を検討していたこと。アパホテルの公式ホームページから連絡を取り、同社が提唱する「新都市型ホテル」の理念に共感して協力関係が始まった。
その後、環境開発グループは、ホテルサンルート福島を運営していた不動産業・川口商事(福島市)をM&Aにより100%子会社化した。サンルートホテルチェーンを展開する相鉄ホテルズとの加盟契約を終了し、新たにアパホテルとフランチャイズ契約を結んだ。
同グループの中核企業・環境開発は2018年設立、資本金4805万円。民間信用調査機関によると、2025年3月期売上高12億0900万円、当期純利益6300万円。
ホテルは鉄筋コンクリート7階建てで、客室数83室。最大50台を収容できる平面駐車場を備える。昨年11月からホテルサンルート福島を一時休業し、内外装や設備更新など全面改装して、2月にアパホテルとして再オープンする。アパホテル仕様の設備を導入し、専用の機械でチェックイン手続きの省略化も図る。
リブランドオープンに当たり、福島市・福島駅にはどのような需要があると判断したのか。アパグループの広報担当者はこう説明する。
「福島市は行政機能が集中する県庁所在地であり、出張者やビジネス往来による安定した需要が見込まれることに加え、東北観光の拠点として観光・レジャー需要も取り込めるエリアです。さらに、JR福島駅東口の再開発が進む中で、駅から徒歩7分、主要インターチェンジ(東北自動車道福島西IC、福島飯坂IC)からも車で約15分という立地は、鉄道・自動車双方の利用者にとって利便性の高いポジションにあります。また、最大50台の平面駐車場を備える点も、車移動が多い東北エリアでは大きな強みです。福島駅西口ではアパホテル福島駅前(362室)が運営中で、相互送客によって繁忙期や団体需要の受け皿となることで、福島市全体の宿泊ニーズをより幅広く取り込み、地域経済の活性化にも貢献できると考えています」
福島市は県庁所在地として出張・観光などで安定した需要が見込め、交通の利便性が高い場所――同社はそう評価して進出を決めた、と。
福島市内では近年、ビジネスホテルの進出が増えている。

2023年12月には福島西ICから車で約2分の場所に「ホテルルートイン福島西インター」がオープン。2024年2月には、福島駅東口に客室数294室の「ホテルルートインGrand福島駅前」が開業した。
2025年5月には、2024年2月に閉店した福島リッチホテル東口駅前(旧福島ワシントンホテル)の跡地に、大手ビジネスホテル「ドーミーイン」が進出する見通しであることが報じられた。運営会社である共立メンテナンスが跡地を取得し、客室数は230~250室程度、建物階数や開業時期は未定とされた。
ルートイン、共立メンテナンスにも進出の狙いを尋ねたが、いずれも「回答を控える」とのことだった。おそらくはアパホテル同様安定した需要が見込めると判断したと思われる。
一方で、本誌2024年10月号記事「同業他社にのみ込まれたホテル大亀」では、JR福島駅近くに立地するザ・ホテル大亀が2024年9月3日に事業を停止し、破産申請準備に入った背景をリポートした。同業他社の進出や新型コロナの影響で売上高が激減。回復途上での食材費高騰が追い打ちとなり、資金繰りが限界に達した。負債額は約4億8500万円。
記事では「ホテル業だけで負債が5億円近くになることはないと思う。レストランが足を引っ張っていたのか、人件費がきつかったのか」といった駅前のホテルの支配人の話を紹介。老朽化が進む中で時代のニーズに合わなくなり、あとから進出してきた同業他社にのみ込まれたということだろう――と書いた。
前出・福島リッチホテル東口駅前は数年前にフロントの大改装に着手したが、完成目前でコロナ禍に入り、客足が途絶えた。そのうえ耐震基準を満たしていなかったことも判明し、事業継続を断念したという。
仙台ホテル競争の余波
前出・アパホテルを含む大手チェーン店は福島市に商機を見いだし、積極的に出店する一方で老舗ホテルが閉店していく。この二極化の背景について、本誌2024年12月号記事では、仙台市からの宿泊需要があると指摘した。
「インバウンド需要が好調なこともあって、仙台市のホテル需要は伸び続けており、イベントや有名アーティストのコンサートなどがある際には『ホテル難民』が出ることで知られている。そのためJR仙台駅周辺では相次いでホテルが開業していたが、大手ゼネコン関係者によると、そろそろ街なかは飽和状態で、建設用地もなくなりつつある。そこで業界関係者が目を付けたのが福島駅前です。新幹線を使えば仙台から30分もかからず移動できるし、飲食店も充実している。地価が高い仙台市でホテルに適した物件を探すより、比較的地価が安い福島駅前に絞った方が効率がいい」(県内のある宿泊施設関係者)
すなわちホテル競争が激化する仙台市の余波を受けて、大手チェーン店が福島駅前に進出し、さらにそれに押し出される形で老舗ホテルの閉店が相次ぐ構図になっている、と。 「仙台空港が増便・路線拡大すればさらにインバウンド需要が膨らみ、仙台市外の宿泊施設に宿泊客が流れていく」と見る向きもあり、業界関係者からは「むしろ福島市の宿泊施設は積極的に売り込み、仙台市の宿泊客を取り込むべきだ」との指摘も聞かれる。そういう意味では、福島市の宿泊需要はまだまだ〝伸びしろ〟があると言えよう。
業界関係者からは「新たに進出する数が多いので錯覚しがちだが、部屋数で見ると、供給過剰というわけでもない」という指摘もあったから、今後も福島市内への大手チェーン店進出の動きは続きそうだ。
こうして見ると、福島駅前のホテル市場は「需要の拡大」というより「需要の奪い合いと再編」の局面に入っていると言えそうだ。
大手チェーン店に押し出される側の老舗ホテルは苦境に立たされている。市内でも中心市街地から離れた場所にある宿泊施設の経営者は「コロナ禍のダメージと原材料費・光熱費高騰のダブルショックで青息吐息の状態」と嘆く。
「福島駅東口再開発が進めば工事関係者の宿泊需要が見込めるし、コンベンションホールができることで宿泊者も増えると期待していたが、完成が2029年度に延びたので落胆しています。東日本女子駅伝などスポーツイベントが終了したことで、貴重な団体利用も減った。イオンモール伊達の工事関係者に期待していたが、どうやら長期滞在用のプレハブ宿を使っているようで、ガッカリしています」
競合相手と差別化を図るには立地の良さや広い駐車場、大浴場の有無などがポイントになる。この経営者は食堂を多様な用途で使えるように改装しようと考え、金融機関に相談したが、軽くあしらわれたという。市の補助金制度も調べたが、中心市街地しか対象にならなかった。
「設備は故障しがちで、食材費・光熱費も高騰して経営を圧迫しており、手の施しようがなくなってきた。生き残りをかけて低価格の素泊まりプランを打ち出し、ビジネス需要を取り込んでいく考えです」(同)
複数の業界関係者によると、市内の宿泊施設で組織された福島市旅館ホテル協同組合は「団体客も減っているし、組合費を払って運営する意味がない」として解散する方向で話し合っているという。それだけ宿泊施設に余裕がなくなっていることが読み取れる。
使い勝手が悪い補助金
ちなみに前出の経営者が話していた「市の補助金制度」は「まちなか立地集積支援事業」のことだ。市の中心市街地には古い建物がボロボロのまま残されたり、更地にして駐車場になるケースが多いという。そのため民間事業者がホテルや教育、商業、オフィスなどの〝都市機能〟を導入するために建物を新築・増築・修繕する場合は、市独自で建設費の10~15%(上限額1億円)を支援している。
ただ、全額補助というわけではないので、小規模な宿泊施設には自己負担分が重くのしかかる。一方、冒頭で紹介した「(仮称)アパホテル福島駅東」は2400万円の支援を受けており、福島リッチホテル東口駅前の跡地に進出する「ドーミーイン」も同事業を利用するとみられる。老舗ホテルは救済されず、大手チェーン店には使い勝手の良い補助金になっているのが実情だ。
市市街地整備課の担当者は「既存の事業者にも活用してもらいたい。いま(昨年10月現在)数件の相談が寄せられているが、多くは既存施設の修繕です」と語った。ただ、結果として、市の中心市街地活性化策が「新規参入を後押しする一方で、既存事業者との体力差を浮き彫りにする制度」になっていることは否めない。今後はアパホテル同様、市の補助金を活用し、既存ホテルをリニューアル・リブランドする事例が増えていきそうだ。
さて、観光庁が昨年6月に発表した宿泊旅行統計調査の2024年年間値(確定値)によると、福島県のホテル稼働率は44・4%で全国43位。宿泊施設タイプ別では、旅館は30・3%で39位、リゾートホテルは57・0%で9位、ビジネスホテルは59・3%で47位、シティホテルは45・0%で46位。福島市単体のデータは確認できなかったが、全県的に稼働率は低いことが分かる。インバウンド客を含めて宿泊客の絶対数が少ないということであり、仙台市からの〝おこぼれ〟を待っているだけではジリ貧になりそうだ。
前出の宿泊施設の経営者はこう切望する。
「特に閑散期である冬季は売り上げの落ち込みがひどい。馬場雄基新市長には宿泊につながるような大型コンベンションやイベントなどを企画して、福島市を盛り上げてくれることを期待したいです」
宿泊施設側の努力だけで需要を掘り起こすのは限界がある。問われるのは、行政がどうやって「人の流れ」を創出できるかだ。その点で馬場新市長にかかる期待は大きい。

























