いわき市が進めているJR湯本駅前の再開発事業を巡り、市が業務遂行能力がない業者を恣意的に選定し、漫然と業務委託料を支払ったなどとして、委託料に当たる公金934万円余りの返還を業者から受けるように市に求める住民訴訟が全国の関心を集めている。いわき市は、住民訴訟の要件を満たさないとして却下を求め、契約が適切だったかどうかの本筋の議論に入るのを避ける。裁判所は、市が一業者からしか見積もりを取らずに言い値で随意契約した点に着目し、次回までに理由を述べるよう「宿題」を課した。
原告は湯本駅前で洋菓子店を営む長岡裕子さん。代理人は広田次男弁護士ら市内の弁護士6人。被告いわき市の代理人は大谷好信弁護士。長岡さんは昨年7月に住民訴訟を提起し、福島地裁(川淵健司裁判長)で審理されている。今年7月16日に4回目の口頭弁論を迎え、15人ほどが傍聴した。
原告が問題にしている随意契約は、市がまちづくり会社「㈱ふらゆもり」(2023年8月2日設立)と結んだ業務委託契約。同社設立から1カ月半後の9月21日に随意契約を結び、期限は翌24年3月29日までと定められた。業務内容は再開発エリアで既存店及び新規出店する事業者向けに勉強会を開いたり、地権者や入居者を対象に移転や出店の意向を把握したりすること。同社は、まちづくりに関わる任意団体「じょうばん街工房21」に参加する地元の商工業者で構成されている。
いわき市がふらゆもりと結んだ業務委託契約(委託料934万2300円)は1カ月後の10月20日に602万2500円で㈱マイロックチョコレーツ(神奈川県川崎市)に再委託されることになる。再委託先は「トコナツ歩兵団」の名で「フラシティいわき」をはじめ市のPR業務を担っており実績がある。湯本駅が位置するいわき湯本温泉では、女将たちが踊る「フラ女将」をプロデュースするなど地元での信頼も厚い。
地方の温泉街の再開発事業を巡る住民訴訟は、一見普遍性に乏しいが、地元まちづくり会社を介しコンサルに再委託した一面が「丸投げ」や「中抜き」と捉えられ全国から注目を浴びている。対行政など公共性の高い訴訟を支援するネット上のプラットフォーム「CALL4」やジャーナリストの津田大介氏が司会を務めるネット報道番組「ポリタスTV」で紹介された。
行政が競争入札ではなく随意契約を採るには、緊急性やその代えがたい能力・実績に頼る必然性、見積金額が妥当かなどの要件を満たす必要がある。原告は、次のような点をもって、「遂行能力のない業者に委託した不適切な随意契約であり、市の裁量権を逸脱し違法」と主張する。
①市が設立から1カ月半しか経たず「ノウハウに乏しい」と役員が自ら認めるふらゆもりを選定した点、②市がふらゆもりにしか見積もりを取らずに言い値で契約した点、③見積書が「人件費内訳書」のみであり、しかも土木工事の仕様で、勉強会運営や地権者の意向調査といった受託業務の見積もりには適さない点、④受託から1カ月という短期間にコンサル会社に再委託した点。
市側は円滑な合意形成のために現地の状況に精通しているふらゆもりに委託する必然性があったと反論。業務は完遂しており、能力を欠くとの指摘は当たらないとする。コンサル会社へ再委託した事業項目は技術面から外注する必要性があった一部に過ぎず、むしろ効率化が達成でき「丸投げ」には当たらないとする。
次回は9月29日午後1時半から非公開の協議が30分程度開かれた後、公開法廷で口頭弁論が行われる。








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