たかまつ・ぎぎょう 1954年生まれ。大正大仏教学部卒。1995年から旧本宮町議。2007年から本宮市議、2011年1月の市長選で初当選。現在4期目。
20周年の節目に向けて
――本宮市では子どもの学力向上に向け、ICTを活用した授業改善を進めて5年が経過しました。
「1人1台のタブレット端末を配布してから、機器の更新時期を迎えるほどの月日が流れました。導入当初は教える側の教師も、使う側の児童生徒も、戸惑いがあったのは事実です。しかし、2年前にICT教育に造詣の深い大内順一教育長が就任し、学力向上に向けた本格的な活用をお願いしてから、現場の雰囲気は大きく変わりました。
今ではICTを『特別な機械』ではなく、鉛筆や消しゴムと同じ『文房具』として捉えるようになっています。特に『思考の可視化』が進んでおり、一人ひとりの考えや想いをタブレットを活用して表現することにより、みんなで議論を深める授業が活発に行われています。生徒たちにとっても、タブレットは日常のツールとして完全に浸透しています。
一方で、ICTには『光と影』があります。青少年が興味を抱きやすく危険な場所に触れるリスクもゼロではありません。だからこそ、私は技術的なブロック以上に『道徳』が大切だと考えています。これは子どもたちだけに押し付けるのではなく、家庭、学校、地域が一体となって、SNSの利用ルールやモラルを醸成していく必要があります。
学力イコールICTではありません。ICTによって授業や学びを効率化し、そこで生み出された『新しい時間』を別の学びや対話に充てる。そうしたバランスの取れた活用を目指しています。私たちが幼い頃にそろばんや習字を習ったのと同じように、現代ではICTを使いこなすことが、情報を整理し自ら考えるための必須スキルだと思います」
――昨年開館した「もとみや電子夢図書館」の利用者の反応について。
「昨年11月にスタートしましたが、非常に手応えを感じています。今年1月時点での登録者数は約2700人、閲覧数は約6万7000回に達しており、予想を上回るペースで利用されています。本宮市には『夢図書館』と分館がありますが、交通手段の限られる高齢者の方や、図書館から遠い地域の方にとって、自宅にいながら本を借りられる利便性は非常に高いようです。『わざわざ行かなくても本が読める』と、自らパソコンを持って登録方法を聞きに来てくださる高齢者の方もいらっしゃいますし、子どもたちにとっても、学校と同じパスワードで家でも本が読めるため、読書の機会が確実に増えています。私たちはこれを既存の2館に続く『3つ目の図書館』と位置づけています。電子図書ならではのジャンルの多様性を生かし、市民の皆さんの教養を深める一助になれば嬉しいですね」
――東日本大震災・原発事故から間もなく15年となります。地区防災拠点の整備状況について。
「地区ごとのサテライト型備蓄倉庫の設置は完了しました。現在はハード面のさらなる強化として、避難所となる体育館や地区公民館への冷暖房設備工事を進めています」
――ハード面だけでなく、ソフト面の取り組みも重要です。
「おっしゃる通りです。備蓄品については3〜4日分あれば十分と考えていますが、重要なのは『いかに逃げ、いかに過ごすか』という経験の継承です。震災当時の最前線を知る職員が退職していく中、いかに当時の危機意識を次世代につなぐかが大きな課題です。令和元年東日本台風の際、本宮市では『水害慣れ』による油断から、避難が遅れて犠牲者を出してしまった痛恨の教訓があります。令和8年度にかけて、市内各地区で小規模な防災訓練を繰り返し、避難所での助け合いを体感していただいています。『万が一のとき、自分は何をすべきか』を、すべての市民が頭の片隅に置いて生活できるような『防災のまち・本宮』を、一丁目一番地の施策として継続します」
――来年1月に市制施行20周年を迎えます。
「私は市長就任から15年になりますが、この15年間はまさに震災と水害、そしてコロナ禍という激動の歳月でした。一番大変だったのは市民の皆さんであり、市民の皆さんが踏ん張って今日の本宮市を一緒につくってきてくれました。だからこそ、20周年は市民の皆さんと笑顔で『よかったね』と言い合えるような、手作りのお祝いにしたいと考えています。式典については、寒い1月にこだわらず、桜の咲く頃など、皆さんの気持ちが温かくなる時期に、記念映像や記念誌の作成を含めて実施できればと考えています」
――新年度の重点施策について。
「現在、本宮市に関わる様々な数値をデータ集として集約し、ホームページで公開しています。おかげさまで本宮市は『住みよさランキング(東洋経済新報社)』で県内1位の評価をいただくなど、非常にポテンシャルの高いまちです。しかし、その魅力が十分に伝わりきっていないという『発信力』の課題も感じています。新年度は、特に15歳から65歳未満の『生産年齢人口』の方々に本宮を選んでもらえるような仕掛けをしていきたいですね。近隣自治体との人口の取り合いではなく、首都圏からの関係人口・交流人口を増やし、ゆくゆくは移住につなげたいと考えています。例えば、公共交通システムを3年前に刷新したのも、車や免許を持たない首都圏の方でも不便なく暮らせる環境を整えるためです。学力向上やインフラ整備、そして行政サービスの質を総合的に高め、『福島のへそ』として元気な本宮を発信していきたいと思います」
――2月に総選挙が行われ、11月には福島県知事選も控えています。国や県に望むことは。
「国に対しては、まずは『安定した政治』を強く望みます。前回の選挙後、少数与党となったことで補助制度の運用が不安定になり、私たち基礎自治体が戸惑う場面もありました。直接国民と接している地方の切実な声に耳を傾け、経済の安定と地域への支援を力強く進めていただきたい。
県に対しては、震災から15年の節目にあたり、風評払拭や人口減少対策において、さらなるリーダーシップを期待します。原発事故の影響は今なお地域に影を落としています。知事には福島のトップリーダーとして、全国に『福島の元気』を力強く発信し、予算確保や施策展開で現場を支えてほしいと願います」
――最後に、今後の抱負を。
「前市長時代を含め、本宮市が誕生してから、厳しい財政状況や未曾有の災害と戦ってきました。今日の本宮市があるのは、何より市民の皆さんが歯を食いしばって頑張ってくれたおかげです。心から感謝します。令和8年度、市制施行20周年という大きな節目を、皆さんと共に称え合い、最高の笑顔で祝える年にすること、それが私の今の最大の願いであり抱負です」

























