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断トツ得票を記録した深谷勝仁氏【須賀川市】【若手新人議員】

断トツ得票を記録した深谷勝仁氏【須賀川市】【若手新人議員】

新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏

 本誌6月号に「須賀川市議選 異例の連続無投票が現実味」という記事を掲載した。任期満了に伴う須賀川市議選は、7月30日告示、8月6日投開票で行われたが、事前情報(6月号記事掲載時点)では、「無投票の可能性が高い」と言われていた。

 前回(2019年8月)は、同市にとって、1954年の市制施行以来、初めての無投票で、市民からは「連続無投票は避けなければならない」、「無投票になった次は多くの候補者が出そうなものだが、そうならないのが問題だ」といった声が出ていた。

 その後、7月3日に立候補予定者説明会が開かれ、それまで立候補の動きがなかった新人3陣営が出席。このうちの1人が正式に立候補表明したことから、定数24に25人(現職19人、新人6人)が立候補し、8年ぶりの選挙戦となった。

 結果は別掲の通り。現職19人、新人5人の計24人が当選した。投票率は45・28%で、過去最低だった前々回の55・89%を10・61ポイント下回り、過去最低を更新した。

選挙結果
(8月6日投開票、投票率45・28%)
当 3141 深谷 勝仁 (39)無新
当 1914 松川 勇治 (45)無新
当 1640 鈴木 正勝 (70)公現
当 1380 大河内和彦 (56)無現
当 1334 深谷 政憲 (66)無現
当 1278 大寺 正晃 (61)無現
当 1206 溝井 光夫 (62)無現
当 1203 佐藤 暸二 (67)無現
当 1159 横田 洋子 (64)共現
当 1078 鈴木 洋二 (64)無現
当 1078 本田 勝善 (58)無現
当 1072 浜尾 一美 (51)無現
当 1067 五十嵐 伸 (60)無現
当 1039 堂脇 明奈 (40)共現
当 1016 大内 康司 (83)自現
当  891 古川 達也 (50)無新
当  881 市村 喜雄 (66)無現
当  881 関根 篤志 (47)無新
当  768 斉藤 秀幸 (47)無現
当  767 石堂 正章 (65)無現
当  722 柏村 修吾 (66)無新
当  588 大柿 貞夫 (71)無現
当  573 熊谷 勝幸 (52)無現
当  516 小野 裕史 (54)無現
513 桜井  誠 (37)無新

 この中で目に付くのが、新人でトップ当選を果たした深谷勝仁氏(39)。今回の当選者では最年少になる。

 選挙戦となった直近3回の最多得票は2015年が2098票、2011年が2005票、2007年が2472票といずれも2000票から2500票の間。今回の深谷氏は3141票で、それらを大きく上回っている。今回2番目に得票が多かったのは新人の松川勇治氏(45)で1914票だから、2位に約1200票差を付けている。過去のトップ当選者との比較に加えて、今回の低投票率を考えると、深谷氏の得票がいかに多いかがうかがえよう。

 深谷氏はどんな人物なのか。

 本人のSNSなどに掲載されたプロフィールによると、1984年生まれ。須賀川高校(現・須賀川創英館)、東北文化学園大学医療福祉学部卒。2007年に市社会福祉協議会の職員となり、今年3月まで勤務した。

 年度末に社協を辞め、4月以降は市議選の準備をしてきた格好だ。

 過去に仕事上の付き合いがあったという市民はこう話す。

 「深谷氏は、福祉を必要とする高齢者や障がい者、その家族などからの信頼が厚く、彼のことを悪く言う人は聞いたことがありませんね。そのくらい、誠実で人柄がいい。それに加えて『若さと実行力』というキャッチフレースが有権者に響いたのだと思います。社協職員の経験から、『社会的に弱い立場の人への支援』といったことも訴えており、それも共感を得たのでしょうね」

 さらにある市民はこう語る。

 「深谷氏の実家は、栄町にある『深谷石材店』で、そこは深谷氏の実兄が継いでおり、深谷氏自身もその近くに住んでいます。今回の選挙では、これまで栄町には議員がいなかったことから、『この地区から議員を出そう』と、町内会がかなり支援したようです(※編集部注・深谷氏の自宅は市内中山だが、栄町、中山などを含む複数大字の地区が新栄町町内会に該当する)。また、深谷氏は学生のころから熱心に野球に取り組んでおり、いまも『市町村対抗福島県軟式野球大会』に出場するなど、野球繋がりの支援も多かった。加えて、社協職員時代に、高齢者や障がい者、その家族などの評判も良かったから、そういった層も深谷氏に投票したと思われます。その結果、断トツの得票数になったものと思われます」

 一方で、ある議員経験者は「ちょっと勝ち過ぎの感もある」と話す。

 「表立っては言わなくても、深谷氏があれだけ票を取ったことで、自分の票が減ったとか、そういう思いを抱いている人もいると思う。もちろん、それはその人(票を減らした人)の問題なんですが、どうしても、こういう世界は、妬み嫉みがありますからね。まさか、議員活動を妨害されるようなことはないとは思いますが、ちょっとしたことで揚げ足を取られるようなこともあるかもしれない。深谷氏にはそういったことに気を付けつつ、萎縮することなく頑張ってほしいですね」

深谷氏に聞く

 深谷氏に話を聞いた。なお、本誌が取材したのは8月22日で、議員任期がスタートする前だった。

 ――議員を目指したきっかけは?

 「社会福祉協議会に勤務していた時の最初のころは高齢者福祉、後半は障がい者福祉を担当していました。その中で、高齢者福祉、障がい者福祉ともに、まだまだ課題があると感じており、『福祉の充実』を図りたいというのが、議員を目指した一番の要因です」

 ――3000票オーバーという得票についてはどう捉えているか。

 「正直、驚いています。喜びと同時に責任を感じます」

 ――本誌取材では、若い世代、高齢者・障がい者福祉を必要としている人、その家族などに支持が広がったと聞いている。

 「確かに、新聞等では『若い世代の票が入った』と書かれていましたが、実際にどうだったかは分析が追いついていません。ただ、私自身、小学生の娘が2人いますから、子育て世代や、高齢者・障がい者福祉を必要としている人たちの思いは受け止められると思っていますし、(任期スタート後は)そのための活動をしていきたいと思っています」

 ――もう1つは、町内会の支援が大きかったとも聞いた。

 「新栄町町内会では、(議員が誕生するのは)40年ぶりくらいだそうです。この地区では、JR須賀川駅西口開発(※深谷氏の地元は須賀川駅西側に当たり、須賀川駅は西側から駅に出入りすることができないため、西側に出入り口と駅前広場をつくる計画が進められている)などの動きもありますから、そういった点からも、町内会の皆様に応援していただけたのだと思います。そのほか、同級生、先輩・後輩にも支えていただきました」

 ――当然、議会の常任委員会は、福祉関係を所管する委員会に所属したい?

 「その辺はどうなんでしょうか。市議会は会派制ですから、会派で誰がどの委員会になるかということだと思います」

 ――就任後すぐに9月定例会(※通常は9月中に行われるが、選挙があった年は9月末から10月にかけて行われる)が開かれることになるが、早速、一般質問をするか。

 「その辺も、会派の構成などが決まってからですかね」

 議員の任期は9月4日からスタートする。「若さと実行力」を売りにする深谷氏の今後に注目したい。

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