政経東北|多様化時代の福島を読み解く

【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー

【郡山商工会議所】滝田康雄会頭インタビュー

 たきた・やすお 1944年生まれ。郡山市出身。安積高、学習院大法学部卒。東北アルフレッサ最高顧問。郡山青年会議所理事長、郡山商議所青年部会長などを歴任。

 滝田康雄氏が郡山商工会議所会頭に再任され、3期目の任期がスタートした。1期目は震災・原発事故からの復興、2期目は新型コロナ禍への対応と10年、20年後を見据えた民間発想のまちづくり「郡山グランドデザイン」の具現化にまい進し、3期目は、中小企業の活力強化と地域経済の活性化についても取り組む。滝田氏に今後の方針と取り組みについて聞いた。

 ――3期目の任期がスタートしました。抱負をお聞きします。

 「これまでは、1期目(2016年11月)当時に東日本大震災・東電福島第一原発事故からの復旧・復興を念頭に『会員事業所の皆様がこの街に希望が持てるようにする』との姿勢で事業を推進してきました。3期目は『中小企業の活力強化』と『地域経済の活性化』をスローガンに掲げます。中小企業の活力強化については、業績の向上が課題です。そのために経営者の意識改革、専門人材の育成、補助金の活用促進に当会議所は『伴走型支援』で臨みます。

 地域経済の活性化については、企業・団体が主体となって開催する大規模セミナーや国際会議、展示会などのビジネスイベントの誘致や広域連携を軸とした観光振興に取り組みます」

 ――新型コロナが収束しない中、会員事業所からはどのような声が寄せられていますか。現状と郡山商議所の取り組みを教えてください。

 「一般論として、内需拡大には至っていません。地域経済は、いまだ需要の回復途上にありますので、企業は、自助努力だけでは対応できない厳しい経営環境にあります。実質無担保無保証人の融資(ゼロゼロ融資)を活用し、緊急事態を耐えた事業所が多く、返済も厳しい状況にあると聞きます。

 当会議所はウィズコロナの中、いかに事業を進めていくかを考えています。職員には、『コロナ禍だからだめ』なのではなく『コロナ禍だからこそこうしたい』と考えを転換せねばと訴えています。ビール祭も開催に対する懸念の声が寄せられました。中小企業の状態、飲食業、観光業を見るとこのままにしてはおけない。地域経済再生に向けて行動を起こそうという思いがあり、感染拡大防止策を入念にし、開催にこぎ着けました。

 閉塞感が漂っていた中、開催したことで、『よくやってくれた』と市民の皆様や各業界から、大きな賞賛をいただきました。タクシーの運転手さんから『今までは商売にならなかったのに、フル回転で体がいくつあっても足りない』と聞いた時は嬉しかったです。会議所にわざわざお礼を言いに来てくださった方もいます。開催に向け奮闘した職員にも私からねぎらいの言葉を掛けたい。

 今冬はイルミネーションを規模を拡大して取り組みます。新酒まつりと組み合わせて、イベントを計画しています。若い職員たちが考えてくれました。柔軟性がある企画で若者たちを頼りにしています。

 もちろん、感染防止対策は大前提です。気を抜かずに、コロナ禍での地域経済活性化に取り組んでいきます」

 ――昨年2月、今年3月と続いた福島県沖地震の影響も深刻です。管内への影響はどうですか。郡山商議所の取り組みについても教えてください。

 「当会議所では、早くから国のグループ補助金活用に動き、会議所グループとして、46社約12億円の被害に対して8億6000万円の補助申請を支援しました。その他の被災事業者に対しては、事業継続力の強化を支援するためにBCP計画(企業継続計画)の策定に向けて、中小企業診断士・税理士などの専門家派遣や、福島県よろず支援拠点などと連携し、個別支援事業を実施しています」

 ――円安と物価高騰も深刻な問題となっています。また、政府や県、市への要望がありましたら教えてください。

 「中小企業は原材料の輸入割合が高いため、円安はデメリットの面が強いです。加えて、原油・原材料の高騰を価格に転嫁できていないようです。そのような中、最低賃金の引き上げや消費税インボイス制度の実施が求められています。必要性は理解できますが、運用面、技術面を含めて小規模事業者への負担が大きいです。政府や県、郡山市にはこれらの運用支援に加え、物価高対策と経営基盤の強化支援の必要性を訴えたいです。

 また、適正な利益の確保・価格転嫁の円滑化が進められる制度の必要性を感じます。増加している新規開業の相談については、経営指導員による相談体制を強化して事業計画づくりを支援しておりますが、補助制度・フォローアップ事業等支援メニューの充実を求めたいです」
 

 ――滝田会頭が就任以来掲げていた「若い世代のまちづくりへの参加」について、進展したことをお聞かせください。

 「10年後、20年後の郡山をどうしたいかの観点から、当会議所では2018年に民間発の『グランドデザインプロジェクト』を打ち出しました。未来を担う若者の考えを重視しています。交通の中枢である郡山と近隣市町村のそれぞれの持ち味を生かして企業誘致を図ったり、行き来をしやすくするための鉄道利用の構想が盛り込まれるなど、魅力的な地域にすること、そして、人を集め、活性化を進めることを目的としています。

 『夢のような話』に聞こえるかもしれませんが、まず理想を掲げなければ実現には至りません。理想の街をこれからの世代の視点で描き、そのために交通、企業、住環境を行政などと一緒に整えていきたいです。

 若者の意見の具現化については、一歩ずつ進んでいます。バスロケーションシステムが実施されました。福島交通の路線バスにおいて、スマホアプリを活用することで簡単にバスの位置を把握でき、利便性が向上しました。

 教育環境でも大きな進展がありました。安積高校が2025年度に中高一貫校になるとの決定がありました。県立の中高一貫校は会津地区の会津学鳳、浜通り地区のふたば未来学園に続き、安積は県内3校目で、県中地区では初となります。新しく設置される中学校では、高い学力や志を持った子どもたちの育成に力を注ぐことで次世代のリーダーを育成する拠点校となるよう、期待をしています。

 歩きやすい道路については県が昨年度から事業に着手しています。歩いて暮らせるまちづくり実現のために今後の推移を見守りたいです。

 時間はかかりますが、実現すればエリアバランスが取れた日本一魅力のあるまちになるでしょう。3期目は積極的にまちづくりにシフトしたいと考えています」

郡山商工会議所ホームページ

政経東北【2022年11月号】

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