【坂本竜太郎】衆議院議員インタビュー

【坂本竜太郎】衆議院議員インタビュー

経歴

さかもと・りゅうたろう 1980年3月生まれ。磐城高、中央大法学部卒。いわき市議、福島県議を経て昨年10月の衆議院選挙で初当選。衆議院では経済産業や環境、政治改革、原子力問題の委員を務め、自民党では遊説局長代理、青年局次長、東日本大震災復興加速化本部事務局次長等を務める。

 昨年10月の第50回衆議院選挙福島4区で元県議の坂本竜太郎氏(45・自民党)が初当選した。自民党派閥内での「裏金問題」で逆風が吹く中、福島4区では政権与党としての信頼を着実に得て小選挙区の議席を守る。若手代議士の坂本氏に選挙の総括や政治信条、浜通りの復興への思いを聞いた。 

 ――昨年10月の衆議院選挙では、福島4区において県内で唯一自民党公認候補者として小選挙区で初当選を果たされました。自民党にとってはいわゆる「裏金問題」がつきまとうなど厳しい選挙戦だったと思いますが、総括についてうかがいます。

 「厳しさを感じた選挙戦でした。有権者の方々から自民党への批判をいただきました、これは当然のことと思います。一方で同じくらい、もしくはそれ以上に『しっかり頼むぞ』『頑張れ』という叱咤激励をいただきました。ご声援を聞くごとに与党として、有権者の皆様から寄せられた期待の声に報いなければならないと思いを強めました。小選挙区制導入後、浜通り地域が一つになって行われた初めての選挙区で当選させていただいたことに大変重責を感じており、身が引き締まります」

 ――東日本大震災・東電福島第一原発事故から14年を迎える中、東電福島第一原発の廃炉やALPS処理水の海洋放出に対する理解・醸成が依然として大きな課題となっています。被災地選出の代議士として解決に向けどのように取り組みますか。

 「原発事故の収束作業は、廃炉作業、ALPS処理水の海洋放出、除去土壌の県外最終処分という三つの大きな課題があります。これらは単なる県内の特定地域の課題ではなく、国のエネルギー政策全体に関わる重要な問題です。予算委員会分科会では復興大臣と環境大臣に強く働きかけ、経産省、外務省、水産庁など省庁の垣根を越えた取り組みを求めています。特に重要なのは、これらの課題に対する国民全体の理解醸成です。それぞれの地域が役割を分担し、協力して進めていく必要性を訴えています」

 ――選挙区である浜通り地域の復興・創生の現状と課題、それを踏まえたこれからの政治活動についてうかがいます。

 「被災地選出の議員として、現場の生の声を直接政府に伝える重要な
役割があります。昨年12月14日に石破茂総理が中間貯蔵施設等の視察に来た際には、環境省や東電からの説明に加えて、原発や施設の現状だけでなく帰還困難区域や農業の課題など、より深い部分まで直接説明させていただきました。

 例えば、そこに集められた土はどこから来たのか。ほとんどが農地からのものであり、最も深刻な問題は、除染で表土を削ったことにより、何百年もかけて地元の方々が先祖代々育んできた豊かな土が失われたことです。『表土5㌢だけ』と言われても、その土には長年の農家の方々の苦労と努力、歴史が詰まっていました。現在、営農再開を目指す地域では、栄養分の高い土が失われたうえに荒らされ、一から土づくりをしなければならない状況です。しかし、地元の生産者の方々は諦めることなく、新しい土づくりに挑戦されています。この現状を踏まえ、単なる除去土壌の処理だけでなく、農地の再生まで含めた包括的な支援が必要だと考えています。

 復興は着実に進んでいますが、諸課題の解決には数十年単位のスパンが必要です。私は若手の立場と責任に基づいて、腰を据えて復興政策に取り組んでいきます」

 ――これまで父・坂本剛二元代議士の秘書や福島県議会議員等を務めてきました。経験・人脈・実績をどのように国政に生かしていく考えでしょうか。

 「秘書時代から築いてきたご縁と、県議会議員としての経験は、政治の実行力を考えた時、大きな宝であります。この宝を皆様のために存分に活用します。地方議会を経験し、今は国政に送り出していただいたことで、政策の実行段階における課題がよく見えます。例えば、国が制度をつくっても現場に十分浸透していない、使いづらい制度になっているなどの問題があります。現場は常に私たちが暮らしている地域社会にあるにもかかわらずです。この経験を生かし、地方と国、議員と行政機関、それぞれの立場を理解した上で、より効果的な政策実現を目指していきます。また、党の青年局活動を通じて培ってきた全国の同世代の地方・国会議員とのネットワークも活用し、福島の課題解決に向けて協力を得て、役割と責任を果たしていきたいと考えています」

 ――今後の抱負についておうかがします。

 「震災と原発事故を経験してきた地域だからこそ、『生命を守り抜く政治』を最優先に考えています。具体的には、防災・減災対策の強化、エネルギー政策の確立、経済安全保障、医療福祉の充実、教育環境の整備、食料安全保障などです。多岐に渡りますが、全て国民の皆様の命に関わる重要な問題です。幅広い分野で取り組みを進めていきます。 

 特に、エネルギー政策については、原発事故を経験した地域として、責任ある政策の確立と環境問題への対応を両立させていく考えです。これらの取り組みを通じて、浜通り地域を世界最先端の技術と知見を持つ地域として発展させ、国際社会への貢献も目指していきます」

 ――有権者へのメッセージをお願いします。

 「『浜通り』という言葉は広辞苑に掲載されています。福島県を区分した地方名として、会津地方、中通り地方は載っていませんが、浜通り地方だけ載っているんです。これは震災による被災地として認知された結果であり、複雑な思いがあります。しかし、これを新しい意味に変えていきたいと考えています。具体的には、イノベーション・コースト構想の推進、福島国際研究教育機構(エフレイ)の成果拡大や研究結果の地域還元などを最先端の技術開発と人材育成を通じて果たしていきたいです。エフレイが立地する地域から選出された代議士として、地元にしっかりとこれを根付かせ、成果を波及させるのが使命と思っています。

 震災・原発事故という経緯から、辞書に載ってしまった『浜通り』を、これからは世界をリードする革新的な地域として再定義していきたいと考えています。そのためには、地元の方々が主体的に関わり、次世代に向けた新しい価値を創造していくことが重要です。

 14年間の復興の歩みは、決して無駄ではありませんでした。皆さんの苦労と挑戦の一つ一つが、確かな実績として積み重なっています。これからは、その経験を生かしながら、新しい時代を切り開いていく段階に入ります。時代に合わせて更新する『アップデート』ではなく、主体的に切り開いていく『アップグレード』です。浜通りから国の、そして世界の新しい時代を切り開いていけるよう、皆さんと共に力を合わせて進んでいきたいと思います。私は、皆さんに国会に送り出していただいた代表として、故郷とこの国の未来を築くために全力を尽くす覚悟です」

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