巨額の不正融資や反社への資金提供に揺れるいわき信用組合(いわき市小名浜、金成茂理事長)が、訴える側・訴えられる側として裁判の渦中に置かれている。
昨年12月19日、いわき信組は二度にわたる第三者機関の調査により、一連の不祥事件に2004年以降関与していたと認定された江尻次郎元会長ら元常勤役員20人に対し、32億0200万円の損害賠償を求める訴えを地裁いわき支部に起こした。
32億0200万円の根拠は、迂回融資、無断借名融資、水増し融資、反社への資金提供により、いわき信組から外部に流出したと認定された額、すなわち同信組が負った損害全額(25億5100万円)に、一連の不祥事件を明らかにするために要した諸費用(6億5100万円)を合わせた金額だ。
いわき信組は、迂回融資、無断借名融資、水増し融資、反社への資金提供に関与した経営責任を問うのはもちろんのこと、証拠資料の処分や虚偽答弁など第三者機関の調査を繰り返し妨害したことが役員の任務懈怠行為に当たるとして、中小企業等協同組合法第38条の2(役員の組合に対する損害賠償責任)に基づき元常勤役員20人に損害賠償を請求したと説明している。
提訴を受けて、いわき信組は12月19日に会見を開いたが、記者からは厳しい質問が飛んだようだ。以下、いわき市内で発行される『日々の新聞』(1月1日号)から要約する。
――訴えたのは20人なのに、江尻氏以外の名前を出さないのは不誠実ではないか。
「今日は差し控えさせていただきたい。第三者機関の調査報告書を見ていただければ、ぴったり20人になる。何らかの形で関与していたと指摘されている常勤理事と常勤監事が対象だ」
――請求した32億円の内訳は。
「20人全員に連帯して請求している。それぞれの請求額はない」
――対象者の返済能力は。
「個人の財産状況を逐一把握しているわけではないが、組合がこれだけ損害を受けているわけだから、権利として相手方にしっかり請求するのは経営上の責務。返済能力どうこうの問題ではない」
いわき信組は今後、20人を刑事告訴する方針。ただ、時期については明らかにしていない。
一方で、いわき信組は迂回融資や無断借名融資で資金提供を受けていた債務者(鈴建グループなど)や反社に対する法的措置も弁護士と協議するとしている。とはいえ刑事事件は、事案によっては時効の壁に阻まれるかもしれない。民事訴訟も労力をかけて裁判を行い、勝訴したとしても、相手方から取れるものがなければ骨折り損だ。既に亡くなっている相手方もいるだろう。
だが、ここでも組合員に責任を取る姿勢を示すには提訴を模索し続けるほかない。提訴しなければ組合員から再び批判を招く恐れもある。いわき信組にとっては「進むも地獄、退くも地獄」の状況と言える。
年が明けると、今度はいわき信組が訴えられる側に回った。東北財務局(仙台市)は1月21日、虚偽の報告や答弁をしたとして、協同組合による金融事業に関する法律違反の疑いで同信組と元役員らを福島県警に刑事告発した。同県警は同日、告発を受理した。仮に地検が起訴し、裁判で有罪判決が言い渡されれば、いわき信組には2億円以下の罰金刑、元役員らには拘禁刑や罰金が科される可能性がある。
いわき信組は1月21日、「告発を極めて重く受け止め、今後の捜査に全面的に協力する」とコメント。いくつもの裁判が絡み合い、原告と被告人、双方の立場で事件と向き合う同信組の苦悩は深い。

























