2025年国勢調査の速報値が5月29日に公表された。福島県の人口は171万1937人となり、前回調査(2020年)と比較して12万1215人減(6・6%減)となった。減少数、減少率ともに過去最大で、県内大部分の市町村で人口減少が続いている。人口減少に歯止めがかけられない現実があらためて浮き彫りになったが、その一方で数字を詳しく見ると、単純な人口減少だけでは語れない変化も見える。
人口減・世帯増は吉兆か凶兆か
別表は、県内市町村の人口、前回調査との比較などをまとめたもの(総務省統計局公表のデータを基に本誌作成)。前文で触れたように、福島県の人口は171万1937人となり、前回調査(2020年)と比較して12万1215人減(6・6%減)となった。減少率は都道府県別で6番目に大きかった。
市町村別に見ると、大部分が減少している。なお、国勢調査は「住民票上の人口」ではなく、「実人口(常住人口)」で集計される。そのため、原発事故の避難指示区域は一時、実人口が極端に減少し、そこから住民が戻った、あるいは事故原発の廃炉作業や研究機関誘致などで人が流入しているため、前回調査と比較して増えているところが多い。ただ、増加といっても、一度ほぼゼロになった状態から回復途上にあるというのが正しい解釈になる。そういった特殊な事情を除くと、大玉村と西郷村だけが微増、そのほかはすべて減少となっている。

そんな中で、大きなトピックと言えるのが「いわき市が県内人口1位の座から陥落したこと」だ。
いわき市は1966年10月に、5市4町5村が合併して誕生した。当時の人口は約33万4000人で、一時は36万人を超えていた(1995年国勢調査)。長年、東北地方では宮城県仙台市に次ぐ2位、県内トップを守ってきた。

それが、今回の調査で郡山市がいわき市を上回り、「首位交代」が起きた。国勢調査で両市の人口順位が入れ替わるのは初めてで、歴史的な事象ということができる。
もっとも、本来であればもっと早く「首位交代」が起きていたものと思われる。というのは、震災・原発事故直前の2010年国勢調査時点で、いわき市は約34万2000人、郡山市は約33万8000人で、その差は約3500人に縮まっていた。当時の両市の人口減少ペースを勘案すると、2013〜2014年ごろには郡山市が追い抜いていた可能性が高い。
ところが、2011年3月に発生した震災・原発事故により状況が変わった。避難指示区域に指定された双葉郡から、いわき市に多くの避難者が流入したのだ。いわき市は双葉郡から近く、気候なども似ていたため、最大時は2万4000人を超える避難者がいた。
前述したように、国勢調査は「住民票上の人口」ではなく、「実人口(常住人口)」で集計される。それが如実に表れたのが、震災・原発事故から4年後に行われた2015年国勢調査である。
この時の調査で、いわき市は35万0237人で2010年比約8000人増となった。当時のいわき市の状況を考えると、普通なら人口増になる要素はなかった。ところが、原発事故の避難指示区域の住民が流入したことで実人口が増えた。本来であれば、数千人減かそれ以上の減少になってもおかしくないところが、8000人増となったのだ。
一方、郡山市は2015年調査では33万5444人となり、2010年比約3300人減だった。
2010年調査で約3500人に縮まった両市の差が約1万5000人にまで広がったのである。
ただその後、原発事故の避難指示区域の解除が進み、避難住民の帰還が本格化した。いわき市は出生数が死亡数を下回る「自然減」や、転入者が転出者を下回る「社会減」だけでなく、原発避難者が帰還する「避難者減」が加わり、県平均を上回る減少率となった。
こうした特殊な事情がなく、本来の自然な人口動態(少子高齢化や若年層の流出速度)だけだったなら、いわき市と郡山市の首位交代は10年前に起きていても不思議ではなかった。原発事故に伴う避難者流入によって、いわき市が1位にいる期間が延命されてきただけ、ということになる。
郡山市と近隣は世帯増

こうして、初めて県内トップになった郡山市だが、前回調査から約1万4000人減で、いわき市より減少幅が少ないため、順位が入れ替わったに過ぎない。それでも、県内、あるいは地方都市という視点で見ると、「まだ耐えている部類」に入るだろう。
今回の国勢調査結果(速報値)を受け、椎根健雄市長は以下のコメントを発表した。
「今回の速報によれば人口・世帯数とも福島県内自治体において1位となったものの本市においても人口減少が加速している状況であると認識しています。将来に向け『選ばれるまち』であり続けるため、人口動態を注視、分析を行いながらシティープロモーションや移住定住・関係人口の創出などの施策を、効果的かつスピード感を持って取り組んでまいります」
市未来創造課は、「県内トップになったとはいえ、人口減少が続いており、喜ばしいことではない」との見解を示した。
一方、調査結果を詳しく見ていくと気になることも。それは、郡山市は人口減にもかかわらず、世帯数が増えているということだ。もっと言うと、郡山市だけでなく、隣接する須賀川市、本宮市、三春町なども、人口は減少しているのに、世帯数は増えている。通常、人口減少は住まいの需要減、すなわち世帯減に直結すると思われる。しかし、データが示す現実は異なり、郡山都市圏では「人口減・世帯増」という現象が起きているのだ。
郡山市未来創造課によると、「今回公表されたのは速報値で、今後、詳細なデータが出てくる(総務省から自治体に降りてくる)ので、細かい分析はそれからになります」とのこと。そのうえで、「学生さんや転勤による単身赴任など、単身世帯が増えていることや、世帯の分離などが起きていると推測されますが、細かい分析はこれからなので……」とのことだった。
同様の現象が起きている近隣市町にも問い合わせたが、似たような見解だった。明確に人口減・世帯増の要因を突き止めるには至らなかったが、今後、詳細なデータが公表されれば見えてくるものもあろう。
須賀川市の住民はこう話す。
「いわゆる、じいちゃん・ばあちゃんの世帯で、どちらかが亡くなったとすると、世帯は減らないけど、人口は減ります。そういったケースが複数件あるのに対して、単身で入ってくる人が1人いたら、人口減・世帯増が起きます。あるいは、それまで親子2世代・3世代で同居していたのが結婚や就職などを機に、世帯が分離することもあるでしょう。実際、そういう事例を見聞きすることは少なくありません。そういったことが人口減・世帯増を生み出しているのだと思います」
この住民は、「新しくアパートが建てられると、その多くは1Kや1DKの単身者向けで、ファミリー向け(2LDK〜3LDK)の物件が新たに建てられるケースはそれほど多くないと感じます。それがいまの需要を表しているということでしょう」とも話した。
賃貸物件で言うと、郡山市は単身向けで家賃5〜6万円前後が相場。須賀川市はそこから数千円安く、本宮市は須賀川市と同等か少し安い印象、三春町は須賀川市や本宮市よりさらに少し安い、というような状況。地価も同様の傾向にある。当然、物件の数自体は郡山市が圧倒的に多いが、郡山市を中心とした都市圏・経済圏で、家賃・地価や通勤時間などを勘案して、郡山市、あるいは近隣市町に住まいを求める、という状況が見て取れる。
これは、ライフスタイルの多様化が進む中、郡山市が都市圏・経済圏として、一定の求心力を保っていることを表していると言えよう。
人口減・世帯増の問題点
半面、行政コストという視点で見ると難しい問題になる。普通に考えたら、人口が減れば、行政サービスを受ける人も減るわけだから、行政コストは下がると思われる。ただ、行政サービスは世帯単位で提供されるものも少なくないため、人口減・世帯増は、行政コストが増えるケースもあるのだ。
例えば、上下水道の配管、街灯、防災無線などは、世帯が増えると、整備・維持しなければならない行政インフラも増える。ほかにも、住民税や軽自動車税などの納付書、選挙の投票所入場券、各種福祉サービスの手続きの書類など、行政からの郵送物の多くは「世帯単位」で送られる。世帯数が増えれば、その分だけ印刷代や郵送費がかかるのだ。また、高齢者の単身世帯が増えれば、見守りや生活支援なども必要になる。
人口減は税収減に直結するが、そんな中での世帯増は、コスト増という状況を生み出す。人口減・世帯増という現象は、そういった問題点も併せ持っているのだ。
最後に。かつて、「県庁を郡山市に」といった運動が過熱した時期があった。いまでも、それを望む声は根強く残っている。
郡山市は地理的にも、県土のほぼ中央に位置し、県北、相馬地方を除けば、郡山市の方がアクセスしやすく、同市に県庁があった方が便利なのは間違いない。加えて、県庁移転によって郡山市の都市機能・都市力を高め、県全体を牽引してもらうといった期待感もあったに違いない。
確かに、郡山市の都市力は県内トップで、それが今回の調査結果で明確に証明された。ただ、郡山市の都市機能・都市力が強化されたところで、人口の県外流出の防波堤にはなり得ない。
もし、20年前、30年前に郡山市への県庁移転が実現していたとしても、郡山市とその隣接自治体は人口が横ばい・微減で食い止められたかもしれないが、県全体で見れば、現状の人口減の流れは変えられていないだろう。

























