夏祭りや盆踊り、お盆の季節がやってきた。故郷に帰省する人々で地域がにぎわい、人と人とのつながりが深まる時期でもある。ただ、この時期になると必ずと言っていいほどクローズアップされるのが議員などの公職者による「寄付」や「香典」をめぐる問題だ。あらためて、この問題について考えて見たい。
「公選法順守」と「義理」の両立は可能か
近年、県内では議員の寄付行為をめぐる問題が複数取り沙汰されている。その最たるものが、亀岡偉民元衆院議員の事件だろう。この問題は2024年10月の衆院選公示直前に、亀岡氏が福島市や二本松市など、自らの選挙区内で行われた6つの秋祭りに対して、計25万円の現金を寄付したとされるもの。
公職選挙法199条の2では「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、いかなる名義をもってするを問わず、寄付をしてはならない」と定めている。
亀岡氏は同法違反に問われ、現在も裁判が続いている。その経過は本誌で随時取り上げており、今号でも61頁からの特集に関連記事を掲載している。
一方で、立件されていないものの、同様の問題が発覚したケースもある。本誌昨年10月号、11月号では鏡石町の問題について報じた。
発端は、ある町民から「2024年8月に鏡石町内で開催された盆踊り大会に議員が寄付をしていた」との情報が寄せられたこと。本誌は「盆踊り実行委員会会長」と「鏡田盆踊り保存会会長」の名前で出された「令和6年 盆踊り開催についての御礼」という文書を入手した。盆踊り開催に協力してくれた団体や個人に礼を伝えるためのもので、そこには謝意のほか、寄付者の名前が記されていた。それを見ると、畑幸一議員と稲田和朝議員の名前があった。
前述した公選法に倣うと、議員が町内の盆踊り大会に寄付をすることは公選法違反に当たる可能性がある。当時の本誌取材に、畑議員は「妻共々、ずっとこの地域に住んでいて、古くからの付き合いや地元愛から寄付した。認識が甘かった」と釈明し、稲田議員は「認識が甘かった」と述べた。
その後、この件で告発状を提出した人がいるとの情報が寄せられた。告発状を提出したのは、地域政党「町政刷新かがみいし」で、同団体の代表者は同町議を務める吉田孝司氏。吉田氏は本誌取材に、地域政党「町政刷新かがみいし」として須賀川署に告発状を提出したことを認めた。
その後、須賀川署から検察に「送致」、いわゆる「書類送検」されたことまでは分かっているが、以降は動きが確認できていない。
隣の矢吹町でも同様の問題があり、本誌4月号で報じた。きっかけは3月に届いた投書で、そこには夏祭りや秋祭りで寄付者として名前が掲示されたものの写真が複数枚入っていた。そこに写っていたのは複数の議員の名前が記された掲示だった。匿名の添え書きには「鏡石町議の寄付行為が公職選挙法違反に当たるという報道の影響で、昨年は議員による寄付者名の掲示は行われなかった。だが、矢吹町議による寄付行為は間違いなく行われている」と記されていた。
議員のうちの1人に、3月定例会で新議長に選任された冨永創造町議の名前もあり、2024年8月、矢吹町二区自治会の夏祭りに5000円の寄付をして掲示された時の写真が同封されていた。代表してコメントを求めたところ、次のような回答を寄せた。
「お祭りに足を運び、食事などをするとき、会費を払うように言われたので払ったもので、寄付という認識はありませんでした。会費を払うか払わないかは議員それぞれで判断が分かれると思うが、慣習的なものでしょう。昨年は払ったか覚えていません。祭りは地域の文化やコミュニティーを残していくうえで必要なもの。今後は(会費の支払いを巡り)当事者同士がどういう話をしていくかが求められると思います」
飲食の実費分を負担する「会費」を払ったものであり、寄付という認識はなかったというのだ。仮にそうだとすれば、実際に5000円分に相当する飲食をしたのかが問題になるが、それについては「個々の事例で判断するしかなく、具体的には警察などの判断に委ねられる」(県選挙管理委員会担当者)とのこと。同記事では「寄付か会費かの線引きは曖昧であり、買収に当たるような悪質な行為とも思えないが、公職選挙法の趣旨を踏まえれば慎重な対応が求められる」と指摘した。
ほかにも同様の事例
それ以外で、県内複数議員に確認したところ、似たような事例は少なくないことが分かった。
「地域のお祭りの神事に『奉納金』という形で3000円を包んだことがある」(会津地方の議員)
「以前は、議員が地域のお祭りに寄付をしていた時期があったが、世の中がそういうことに厳しくなり、いまはありませんね。ただ、弁当代や飲み物代など、自分が飲み食いする分の会費を払うケースはあります」(中通りの議員)
奉納金は寄付行為禁止の例外にはならないようで、厳密にいうと、公選法違反に当たる可能性が高い。
後者は矢吹町のケースと同様だが、「飲食に対する正当な対価(実費)」であれば公選法違反には当たらない可能性が高い。しかし、そうでなければ違反になる。例えば、一般的な弁当に、ペットボトルのお茶を飲食したのに、会費は5000円だったとしたら、「正当な対価は1000円〜1500円程度で差額分は寄付に当たる」とみなされるのだ。逆に、会費500円で、高級な弁当(お膳)や高級な酒が出されたとすると、供応接待になる可能性もある。いずれにしても、「飲食に対する正当な対価(実費)」であるかどうかポイントになるようだ。
もっとも、それらが買収に当たるような悪質な行為かと言うと、そうとも思えない。そうした情報があっても、警察が積極的に動かないことがそれを物語っている。
もう1つ、この時期になると取り沙汰されるのが「新盆見舞い」で香典を持参した、という問題だ。
故人の四十九日の忌明け後、最初に迎えるお盆を「新盆」と言い、普段のお盆より厚く供養する風習がある。新盆を迎えた家には祭壇が設置され、提灯や灯籠が供えられるほか、お坊さんに読経してもらう。もっとも、宗派や地域によって大きく差があり、読み方も「にいぼん」、「しんぼん」、「あらぼん」などさまざま。初盆(ういぼん、はつぼん)という地域もある。
新盆を迎えた家には多くの弔問者が訪れるが、その際、弔問者は香典や供物を出すことが多い。それを議員がやってしまい、問題になるケースが少なくないのである。
前述したように、公選法(199条の2)では議員の寄付行為を禁じている。一方、同法249条の2第3項では「例外」を定めている。それが以下の場合。
1、当該公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む)が結婚披露宴に自ら出席しその場においてする当該結婚に関する祝儀の供与
2、当該公職の候補者等が葬式(告別式を含む)に自ら出席しその場においてする香典(これに類する弔意を表するために供与する金銭を含む)の供与又は当該公職の候補者等が葬式の日(葬式が2回以上行われる場合にあっては、最初に行われる葬式の日)までの間に自ら弔問しその場においてする香典の供与
要するに、議員は当該選挙区で寄付をしてはいけないが、通常一般の社交の程度を超えない範囲であれば、①議員自らが結婚式に出席した場合の祝儀、②議員自らが葬式までの間に弔問した場合の香典――に限って許され、それ以外は寄付行為に当たるということだ。
法文では「葬式までの間に」とあるから、例えばその前に行われる通夜に参列し、そこで香典を出すのは同法違反には当たらないと解釈できる。一方、新盆見舞いは葬式後のことだから、法文に倣えば、そこで香典・供物を出すことは寄付行為に当たり、同法に違反することになる。
県内の事例
ただ、主に郡部などでは、議員が新盆見舞いで香典・供物を出す風習があったのは間違いない。
中通りの自治体の議員は次のように話す。
「以前は、支持者などのお宅で新盆を迎える時は、香典などを持って訪問していた。ただ、そういったことが問題視されるようになってからはやらなくなった。とはいえ、難しい事情もある。例えば、自分が議員になる前に家族が亡くなり、新盆を迎えた際、香典を持って弔問に来てくれた人がいるとします。その後、自身が議員になった後で、その人のところで新盆を迎えた際、『議員だから香典は出せない』ということで済ませてしまっていいのか。自分の身内のときに新盆で香典・供物をもらっているのに、逆の時に行かないということですからね。幸い、自分の場合は同じ地区内に兄弟がいるから、そういった義理を欠くような事態は避けられるが、そうでない人(議員)はどうしているのか。奥さんの名義にするなどして、こっそり香典を持って行っている人もいるんじゃないですかね」
おそらく、ほとんどの議員は公選法に抵触する恐れがあるということは分かっているはず。それでも、「義理を欠くようなことはできない」として、香典を持っていくこともあるのだろう。結果、それが問題になる、と。つまりは、地域コミュニティーのつながりが深いところ、あるいは義理堅い人(議員)ほど、落とし穴にはまりやすいということだ。
新盆見舞いは、多くの人が同時に参列する通夜・告別式などと違い、基本的には個々で訪問する形が多い。そうなると、訪問先では「わざわざ来ていただいてありがとうございます。上がってお茶(あるいは酒)でも飲んでいってください」ということになるから、手ぶらで行くわけにはいなかいということなのだろう。
中には、「支持者宅で新盆を迎えた際は、事情(公選法上の問題)を説明して、線香だけ上げさせてもらうようにしている」という議員もいる。当然、その場合は訪問先で飲食をしたり、香典返しを受け取ることはないという。
一方で、新盆見舞いの習慣がない地域もある。
「ウチの地域ではそういった習慣はない。行くとしても、よほど近い親戚くらいですかね。少なくとも、新盆見舞いと称して、支持者宅などを回るということはありません」(会津地方の議員)
こうして聞いても、地域によって差があることが分かる。
おそらく今年も、全国のどこかでは「議員が新盆見舞いで香典を持参した」ということがマスコミ沙汰になるだろう。「義理を欠けない」という議員の思いと、「寄付や香典は違反」という法令の間にあるギャップはどこまで行っても埋められないが、これを機に、議員側はもちろん、有権者側も「慣習」や「風習」のあり方を考える必要がある。

























