【常磐興産】関根一志 社長インタビュー

【常磐興産】関根一志 社長インタビュー

経歴

せきね・ひとし 1963年生まれ。いわき市身。千葉商科大商経学部卒業後、1990年に常磐興産㈱入社。観光事業本部営業部長や常務取締役スパリゾートハワイアンズ統括管掌を経て今年6月から現職。

 スパリゾートハワイアンズの経営会社として知られる常磐興産㈱の新社長に常務取締役の関根一志氏(61)が昇任した。新型コロナ収束後は、観光需要を取り込み業績は好調。さらなる飛躍のための計画を聞いた。同社は福島イノベーション・コースト構想推進機構、いわき市、いわきFCとのコラボを深め、地域の観光のハブ役を目指す。

 ――就任の率直な感想について。

 「前社長の西澤から内示を受けたときは 『まさか!』という気持ちでした。これまで取締役を2年、常務取締役を1年務めてきましたが、社長にはもっと経験のある方に声がかかると思っていたので、青天の霹靂でした。

 報道発表が4月3日であり、内示から発表まで他言できなかったことに加えて突然の指名に実感も湧かなかったのか、家族に報告するのを忘れており、ニュースが出た後、娘が友達から連絡を受けて“パパ、社長になるみたい!”と妻に驚いて報告していました。一番驚いたのは家族かもしれません。

 西澤会長からは『最終的な決定をする社長は孤独な中で右か左か方向を示さなければいけない。責任が伴うからこそ様々な情報を集めて冷静に判断できるようになれ』と言われてきました。一方で、確かに最終決定をするのは社長一人かもしれませんが、目標に向かって仕事をするのは私一人だけではないという心強さはあります。社員一同を信頼して舵取りを進めていきたいです」

 ――営業畑で生え抜き社員の社長就任は11年ぶりです。経験をどのように生かしていきますか。

 「西澤会長が社長を務めていた時に東京本社を廃止し、全役員がいわきに来るなど、組織改革が推し進められてきました。これは西澤会長が外部から招聘されてきた人物だからこそできたことでもあり、常磐炭鉱から始まった弊社が再び地元いわきに深く根を張るというのは私含め全社員にとって大きな意識改革につながりました。さらに、労働生産性を上げるために1人一役から1人二役、三役と多能化を推進しました。そうした変化を経て今のハワイアンズがあると言えます。

 人材育成も重要です。役職や勤務年数にとらわれず、自由な発想や各々のアイデアを実現できるような環境を整えています。一例として、これまでは営業部門が担当していたHPのネット予約やウェブ上のコンテンツ等の検討を社内公募で選ばれた社員に任せてみようとなりました。募集をかけたところ、様々な部署から20人以上の若手社員が手を挙げてくれました。数人を選ぶ予定でしたが、全員の意欲を買い、最終的に3チームに分けてプロジェクトチームとして活動しています。若手で役職が無くても、アイデアが実現できる体制を構築することで、モチベーション向上につなげていきたいと考えています。

 西澤社長の時代からテーマを決めて役員以外のパート従業員を含む社員と話す『井戸端会議』を設けています。実際にそれで生まれたのが3年前にオープンしたグランピングエリア『マウナヴィレッジ』です。ほかにも、貸し切りで露天風呂やショーを楽しめる『ひとりじめリゾートプラン』などが生まれました。一日一組限定で値段も15万円と決してお求めやすいプランではないのですが、想像していたよりも申し込まれるお客様が多く好評です」

 ――今年3月期のグループ決算では観光部門が過去最高益を記録したほか、全体で見ても2期連続の黒字となっています。

 「多能化を推進する際に会社を離れた方もいらっしゃり、痛みを伴ったからこそこうした結果につながったとも言えます。組織改革と意識改革の二つが大きな要因であると見ています。

 観光事業については、利用者数の目標値を新型コロナ以前の8割程度に設定し、入場料の見直しも含めて売り上げを維持できるようにしました。また、多能化などによって労働生産性の向上が図れ、利益の増強につながりました。社内公募のプロジェクトチームの尽力もあり、顧客一人一人に対して適切なコミュニケーションを採るOne to Oneマーケティングに切り替えることで全体の広告費の削減につながりました。InstagramやYouTube、Tiktokといった動画サービスを積極的に活用し始めたことでこれまでなかなかアプローチできなかった層にも波及していると思います。

 新しい客層へのアプローチという意味では今年6月から7月にかけてスマホゲームの『あんさんぶるスターズ』とのコラボイベントを実施しました。多くの方々が足を運んでくださり、新しい試みの重要性を痛感しています。

 旅先への好感度というのは思い出で残るものだと考えています。私自身常磐興産に30年以上勤務し続けているのも、ハワイアンズに家族の思い出が詰まっているからです。小さな頃のハワイアンズでの楽しい思い出を自分の家族だけでなく多くの方々とも共有したい。そうした思いのもと、私たちはお客様に足を運んでいただけるように様々な企画をご用意し、今後も楽しんでいただけるよう新たな取り組みを考えます」

 ――地元への貢献について。

 「観光面でしっかり寄与していかなければならないと考えています。いわきだけが盛り上がるのではなく、浜通りで点になっている観光資源やイベント等を線でつないで一つの面にしていかなければなりません。重要なのが二次交通です。いわきの場合、小名浜地区とハワイアンズのある常磐地区で観光交流人口の約70%を占めています。小名浜─常磐地区の移動を円滑にするため、地元タクシー会社と提携して乗合タクシーのアクアマリンパーク号を運行しています。ほかにも子会社がいわきの観光地や浜通りの観光地を巡る団体ツアープランを作り、二次交通の整備に取り組んでいます。

 2022年12月には福島イノベーション・コースト構想推進機構と連携協定を結び、イノベ構想で生まれた商品を弊社のネットワークを生かして発信したり、ハワイアンズ内で開発中の商品の実証実験や体験ができるような取り組みを進めています。

 いわきFCとも連携協定を結び、弊社ダンシングチームに対して怪我しないからだづくりを指導していただいたり、試合観戦者向けの宿泊プランをご案内したりと、いろいろな形で連携しています。

 いわき市はスポーツツーリズムを推進しています。今年は県内で男子サッカーのインターハイが開催されたこともあり、熱も高まっています。弊社もスポーツツーリズムの推進に注力していきます。アカデミックな観光や体験型の観光と組み合わせることで独自性が発揮できます。今後は他の観光資源へのハブ役を務め、地域を盛り上げていきたいです」

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