【北塩原村長選】無投票決着の裏話

【北塩原村長選】無投票決着の裏話

 任期満了に伴う北塩原村長選が8月20日に告示され、現職の遠藤和夫氏(69)以外に立候補の届け出がなく、遠藤氏の無投票での再選が決まった。

 遠藤氏は同村出身、旧喜多方工高(現喜多方桐桜高)卒。2015年4月の村議選で初当選し、その任期途中で辞職して、2016年8月の村長選に立候補したが、当時現職の小椋敏一氏に敗れた。その後は自身の考えや今後の村のあり方などを綴ったビラを発行・配布するなど、次の選挙に向けた動きをしており、2020年8月の村長選で、元村議の蟹巻尚武氏との一騎打ちを制して初当選を果たした。

 一方で、本誌既報の通り、遠藤氏は1期目の4年間で二度にわたって辞職勧告決議を可決されるなど、議会対策に苦慮していた。

 特に最近ではラビスパ裏磐梯をめぐる問題で、議会との対立が目立っており、辞職勧告決議もこの問題に端を発する。

 同施設は村所有の温泉・健康増進施設で、オープンから30年近くが経ち建物や内部設備の老朽化が進んでいた。そのため、議会では今後どうするかが議論されていたが、遠藤村長は昨年12月議会(全員協議会)で「廃止」の方針を示した。

 実際、同施設は1月末をもって営業を停止し、議会には同施設が存在する根拠になっている「温泉健康増進施設条例」の廃止案と、同施設の指定管理契約の変更に関する議案が出された。ただ、両議案は1月31日に開かれた臨時議会と3月議会で二度にわたって否決された。

 その後、村は同施設を利活用する民間事業者の公募を行ったが、議会からは「温泉健康増進施設条例が生きている中で、民間事業者による別の用途での利用を模索するのは順序が逆。まずは条例を廃止して、そのうえで、こういう利用を考えていると提案するのがスジではないか。これは議会軽視だ」といった反発があった。

 いずれにしても、当時村内では「いまのところ、村長選は遠藤氏以外に立候補の動きはないが、議会から二度にわたって辞職勧告を受けた人を、無投票で再選させるのはいかがなものか」、「村民が遠藤村長をどう評価するのかを問う機会は必要だ」といった声が出ていた。

 実際、本誌には具体的な名前も聞こえていた。それが村議の伊藤敏英氏だ。伊藤氏は4年前の村長選の際、当時の現職議員では唯一、遠藤氏を支援し、選対役員を務めていた。ほかは中立か、対立候補の蟹巻氏を支援していた。

 ただ、この4年間で、遠藤村長に対する立場に変化があり、今年6月議会で二度目の辞職勧告決議が可決された際は、賛成に回っている。そのため、一部議員や村民有志などから「伊藤議員は、4年前の選挙で遠藤氏を支援し、村長に押し上げた責任があるのだから、伊藤議員が村長選に出て、村民の信を問うべき」といった声が上がっていた。

 7月末ごろには、「伊藤議員が前向きに検討しており、選挙戦になるのではないか」といった話も漏れ伝わっていた。ところが、それから1週間ほどが経ち、8月上旬になると、「伊藤議員と連絡が取れない」(ある村民)、「体調面や家族の反対などを理由に、当初の前向きな姿勢から(立候補を見送る方向に)変化している」(ある議員)といった状況になり、最終的に無投票になったのだ。

 前述したように、遠藤氏と議会の対立は深刻化しており、遠藤氏の2期目の村政運営は難航することが予想される。その一方で、議会側は今回の村長選で対立候補を擁立できなかったため、議会に対しても厳しい目が向けられることになろう。

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