社会学者の開沼博氏(いわき市出身・東京大学大学院情報学環准教授)が提訴され、原告側の会見を報じた報道機関が、後に名誉毀損で開沼氏に訴えられて敗訴した。訴訟を通して社会に問題を提起する行動と、それを報じる活動が制約されかねず波紋を呼んでいる。
開沼氏が提訴した名誉毀損訴訟で敗訴したのは非営利の報道機関OurPlanet-TV(東京都・以下アワプラ)。東京地裁(大寄麻代裁判長)は昨年6月6日に開沼氏の訴えを認めて55万円の支払いを認める判決を下した。前段には、学生が「開沼氏に恫喝を受けた」と損害賠償を求めて訴え、代理人弁護士と共に開いた記者会見がある。これを報じることは、「提訴報道」と呼ばれ当たり前に行われる。原発事故などに関する会見や会議をノーカットで配信したり映像作品にしてきたアワプラは、この提訴会見も同様に報じた。
学生を原告、開沼氏を被告とした訴訟では、開沼氏の恫喝行為を示す証拠は認められず棄却。それを受けて、開沼氏が名誉を毀損されたとして学生と提訴会見に同伴した代理人弁護士、さらには会見を報じたアワプラを訴えた。当事者である原告が訴えられることはこれまでもあったが、報道機関も一緒に訴えられたのは珍しく、名誉毀損が認定されたことは今後の提訴報道に禍根を残す。「判決という裁判所のお墨付きを得ない報道は認めない」ことを意味し、報道や言論の萎縮を招くからだ。
前述の東京地裁での敗訴を受けてアワプラは控訴。昨年12月23日の東京高裁(水野有子裁判長)は棄却した。アワプラは最高裁に上告するという。
同25日はアワプラの白石草代表が代理人の喜田村洋一弁護士と上告に向けて報告集会を開いた。喜田村弁護士によると、提訴報道で名誉毀損を認めた一審判決はそもそも不当、追随した二審判決は輪をかけて不当だという。
「控訴審(二審)の判決には棄却に至る判断理由が書かれていなかった。それ自体が民事訴訟法に照らし合わせて問題だ。弁護士歴49年の中でこのような判決は見たことがない。仰天して怒りを覚える」
これらの不当判決の根底には、裁判所は報道機関が第三者の声を伝えることによって成り立っているという前提を理解していないことがある。

























