南相馬市長選漫遊

南相馬市長選漫遊

任期満了に伴い1月19日に行われた南相馬市長選挙。前回、前々回と候補者の顔触れが変わらず、投票率も下がったが、告示と同時に浮上した「10万円」というキーワードをめぐり、候補者同士だけでなく市民からも賛否両論が上がるなど、少々異様な選挙戦となった。

議論呼んだ元職の「10万円給付公約」

まずは選挙結果から。

当1万5976     門馬和夫71  無現
1万2385 櫻井勝延70 無元

現職で3選を目指した門馬氏が、元職で元市議の櫻井氏を3591票差で退けた。両氏による対決は今回で3回連続だった。

1回目は2018年。当時現職の櫻井氏に門馬氏が市議を辞職して挑み、201票差という僅差で門馬氏が初当選した。投票率は62・39%。

2回目は2022年。立場が逆転した選挙戦は、門馬氏が968票差で再選を果たした。投票率は前回より1・36㌽高い63・75%だった。

そして、3回目の今回は3591票差。投票率は前回より4・20㌽低い59・55%だった。票差と投票率から察すると、みたび同じ顔触れとなり、市民に飽きが生じていた感は否めない。当初は櫻井氏ではなく若手市議が立候補する予定だったので、その市議と門馬氏が戦っていたら結果はどうなっていたのか興味深い。

それはさておき、急きょ立候補を決めたタイミングで父親の病気、死去が重なり、正式な立候補表明は告示とほぼ同時、という異例の選挙戦を余儀なくされた櫻井氏が掲げたのが、市民に1人当たり10万円を給付するという公約だった。

国政選挙でもしばしば見られる現金給付は有権者受けしやすいが、半面「バラマキだ」「財源はどうするんだ」という批判も起こりやすい。門馬陣営も敏感に反応し、一斉に櫻井氏への批判を強めた。

まずは「南相馬まちづくりラボラトリ」という団体が「おじいちゃん(市)からお年玉(10万円)もらって大丈夫?」「『大型事業を止めれば10万円もらえる』は本当?」と題するチラシを発行。名前こそ書いていないが、櫻井氏の10万円給付公約に疑問を呈する書きぶりだった。チラシに載っていたQRコードからは同様の内容がYouTubeでも見られるようになっていたが、動画中でも櫻井氏の名前は出していなかった。

1月12日に開かれた門馬氏の総決起大会では来賓の立谷秀清・相馬市長(当時)、森雅子参院議員、太田光秋県議が10万円給付公約を厳しく批判。会場内にいた市議からは「詐欺だ!」と激しい言葉も飛んだ。司会者も「市民に誤解を与えないよう皆さんで正しい情報を発信していきましょう」と呼びかけた。

だが、当の櫻井氏は意に介さず。今やるべきはロケット事業や南相馬鹿島サービスエリア周辺開発などの大型事業でなく、物価高で困っている市民に手を差し伸べることだとして、両手を広げて10のポーズをする櫻井氏のイラストを用い10万円給付を全面に打ち出した。

そして迎えた投開票日。投票結果を見ると、櫻井氏の10万円給付公約は市民の賛同を得られなかったことになる。門馬氏の大型事業を「バラマキだ」と批判していた櫻井氏が10万円給付を打ち出したことで「同じバラマキだ」「自己矛盾」と批判を招いた面もあった。門馬氏がいいということではなく、前回、前々回より票差が大きく開いたことが、今の櫻井氏に対する評価を物語る。

門馬氏は当選が決まった直後の取材に「世の中には突拍子もない公約で当選する人もいるが、最終的には市民がよく判断してくれた」と正直な感想を漏らした。10万円給付公約を批判しつつも、脅威に感じていた証拠だろう。

前回の市長選後は市議選でトップ当選し、市政に復帰した櫻井氏。今年71歳になる櫻井氏の身の振り方にも注目が集まる。

3選を果たし支持者と万歳する門馬氏(中央)

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