本誌昨年8月号に「県立病院・学校閉鎖に翻弄される喜多方市 最初の課題は喜多方東高跡地の利活用」という記事を掲載した。喜多方市は、2021年3月に喜多方高校と統合して閉校になった喜多方東高校跡地の利活用について議論を進めており、その経過を取材したもの。その後、「旧福島県立高等学校利活用検討協議会」を立ち上げ、さらに検討を重ねている。
注目は民間パートナーが現れるか

喜多方東高校は県教委が進める県立高等学校改革基本計画」の一環として、2021年3月に喜多方高校と統合され、校舎が使われなくなった。それから約3年が経ち、昨年3月までに県が跡地利活用に関する補助メニューを定めたことから、それを踏まえて検討をスタート。
市では財政的な負担や「公共施設等総合管理計画」に掲げる目標・方針との整合、事業の実現性などを考慮しつつ、「都市計画(まちづくり)の観点から、土地利用や施設整備の方向性を踏まえたもの」、「人口減少抑制や人口定着につながるもの」、「地域活性化や賑わい創出が期待できるもの」、「経済波及効果や税収の増加が期待できるもの」といった視点で検討を行った。
その結果、商業施設に加え、観光的商業施設、スポーツ施設、多目的広場、保育施設、宿泊施設(ホテル)・コンベンション機能を備えた複合施設整備という素案を出した。それを基に、昨年4月から5月にかけ、3回にわたって「旧県立喜多方東高等学校跡地利活用に関する市民懇談会」を開催。昨年7月には、商工団体や業界団体・組合などの関係者を対象にした懇談会も実施した。
基本構想の素案

こうした意見聴取を経て、昨年9月までに「旧福島県立高等学校利活用検討協議会」を立ち上げた。協議会メンバーは、学識経験者、商工、観光、福祉、建築、文化、スポーツ、金融などの各団体関係者、女性団体関係者、一般市民(公募)など、13人で構成される。9月から会議を行い、12月17日に開かれた第3回会議をもって、中間答申(基本構想)がまとめられることになった。
本誌は第3回会議を傍聴した。その中で協議された基本構想の素案は、「更地化して商業施設を核とした複合施設」というものだった。具体的に想定している複合施設の機能としては、物販、飲食、観光案内、宿泊、コンベンション、集会、交流、健康増進、防災、駐車場など。整備に当たっては市の負担をなるべく軽くするためにも、民間活力を用いたい旨が明かされた。
一方で、建物の解体は県が実施するが、完了までに4、5年はかかる見込み。そのため、委員からは「いまの段階では手を挙げる民間事業者がいても、4、5年後に実際に動き出すときには状況が変わったということもあり得るのではないか」、「そういった民間事業者とのスケジュールが合わないと計画が進まない」といった趣旨の発言もあった。
実際にどのような機能を持たせるのか、整備・運営の手法はどうするのか等々は、この後の基本計画、実施計画を策定する中で、同協議会で詰めていくことになるようだが、同日の会議で明かされた基本構想の素案をそのまま実現しようと思ったら、想定している機能のうちの収益事業の部分について、手を挙げる民間事業者が現れるかどうかにかかっていると言えよう。もっと言うなら、交渉力が問われるということでもある。
今後は同日の会議を踏まえて、基本構想をまとめ、市長に答申(中間答申)し、それを議会に諮り、パブリックコメントを経て、基本構想が決定する。その後は、さらに前述したような詳細部分を詰め、基本計画・実施計画を定めていくことになるようだ。これは来年度(2025年4月)以降になるが、民間活力を用いるのであれば、どの時点でどのような形で民間のパートナー探しをするのか、ということが最大の注目ポイントになりそう。