国から芳しくない発注者と指摘された郡山市

国から芳しくない発注者と指摘された郡山市

 郡山市は受注企業に冷たい――そんな調査結果が明らかになった。中小企業庁が受注企業に対し、発注者が価格交渉、価格転嫁にどの程度応じてくれたかを尋ねたところ、同市は全国下位の評価だった。もともと建設業界内には「市は地元業者に冷たい」との不満が燻る。地元業者を蔑ろにすれば地域が廃れていく、その認識が同市には薄いのではないか。

いびつな入札で「地域の守り手」が消滅の恐れ

 ここで取り上げる調査とは、中小企業庁が毎年3月と9月の「価格交渉促進月間」に合わせて行っているものだ。

 光熱費、原材料費、労務費などが上昇する中、中小企業が適切に価格転嫁しやすい環境をつくるため、中小企業庁は2021年から3月と9月を価格交渉促進月間に設定。同月間終了後、中小企業に主な取引先との価格交渉、価格転嫁の状況を調査し、業界ごとの結果や順位を取りまとめている。「状況の芳しくない発注者」に対しては事業所管大臣名で指導・助言もする。

 中小企業庁は8月5日、今年3月の価格交渉促進月間の後に行った調査の結果を公表した。その中で、郡山市が「状況の芳しくない発注者」に挙がっていたのだ。

 調査では、中小企業に対し、発注者との間で▽価格交渉が適切にできたか、▽コスト上昇分について何割くらい価格転嫁に応じてもらえたか――などを聞き取り点数化しているが、郡山市は価格交渉、価格転嫁ともア、イ、ウ、エの4段階評価で下から2番目の「ウ」だった。

 結果一覧を見ていくと「エ」と評価された自治体はなく、例えば価格交渉は「イ」だが価格転嫁は「ウ」と評価された自治体はあった。しかし、どちらも「ウ」と評価されたのは神戸市と郡山市だけだった。

 ただ補足すると、調査は全国の30万社にアンケートを配布し、6万5700社が回答。この中で挙がった国の機関・地方公共団体は郡山市を含む71だった。さらに言うと、回答した6万5700社の中で郡山市の価格交渉と価格転嫁について回答を寄せたのは12社だった。

 「回答者は微々たるもの」「統計的に疑問」との意見もあるかもしれないが、国が定期的に行う調査に回答が寄せられた事実は重い。中小企業庁も、こうした発注者をわざわざ公表するのは「発注者に、より一層の自発的な取引慣行の改善をしてもらうことが目的」と謳っている。

 今回の結果を郡山市はどのように受け止めているのか。担当の契約検査課は次のように話す。

 「結果が出た後、中小企業庁に詳細を問い合わせると、回答者は主に建設業であることが分かりました。ただ、どの業者がどこの工事について価格交渉・価格転嫁が不十分と回答したのか、詳細までは教えてもらえませんでした」

 業者名や工事名が分かれば、問題点を洗い出し、具体的な改善につなげることができるが、中小企業庁は個人情報保護の観点から名称は明かさなかったという。

 「ただ、公共工事にはスライド条項(※)が設けられ、当市でも受注者から申し出があれば、請負金額の変更に応じる体制はとられているのですが……」(同)

※スライド条項=工事の契約締結後に賃金水準または物価水準が変動し、その変動額が一定割合を超えた場合、請負代金額の変更を請求できる規定のこと。

 さらに今年2月からは、原材料費や労務費が上がる可能性がある場合は、契約の段階で受注者から事前に申し出てもらう制度もスタートさせている。

 「今回の結果は昨年度の工事が対象なので、2月から始まった制度は(調査結果に)反映されていない。ですから、スライド条項と併せて、この制度の周知も強化していく必要があると考えています」(同)

 ともかく「結果は真摯に受け止めたい」とする市。ならば、市内の建設業者の反応はどうか。老舗業者の役員はこう漏らす。

 「市が価格交渉や価格転嫁に応じてくれないと感じたことはないが、受注者に冷たいと思うことはしょっちゅうある」

 特に感じるのは、協会や組合に加盟する業者への配慮の薄さだ。

 市内には、こおりやま建設協会、県建設業協会郡山支部、県造園建設業協会郡山支部、郡山建設業者同友会、郡山電設業者協議会、郡山市管工事協同組合、郡山鳶土工建設業組合など十数団体あるが、地震や洪水などが発生すると、市はこれらの協会、組合と交わしている「災害時における応援対策業務の支援に関する協定書」に基づき緊急点検や応急復旧を依頼している。

 「うちも組合に加盟しながら『地元がピンチの時に地元業者が出動しなくてどうするんだ!』と、災害ボランティアには積極的に協力しています」(同)

 しかし、協会、組合に加盟する業者が全て協力的かというと、そうではない。

 「例えば夜中に災害が起きて夜通し応急復旧をしても、翌朝には通常通り現場に行かなければならない。その現場が市発注工事の場合、本音を言えば応急復旧に出た分、工期を伸ばしてもらえるとありがたいが、市は『それとこれとは別。工期は守ってもらう』というのです」(同)

 災害ボランティアは無給だ。そちらに時間と労力を割かれ、本業に支障が出ても、市が工期延長などのインセンティブを認めてくれれば協力した甲斐もある。しかし「それとこれとは別」と言われてしまったら、せっかくの善意も失せてしまう。

 「おかげで組合に加盟する業者は年々減っている。市から『災害ボランティアに協力してほしい』と依頼されるのが面倒だし、会費を払って会員であり続けても何のメリットもないから、社長の代替わりを機に会員をやめる業者が相次いでいる」(同)

落札できるかは運次第⁉

 災害ボランティアに消極的にならざるを得ない理由はほかにもある。

 市は、1000万円以上の工事は制限付一般競争入札、1000万円未満の工事は指名競争入札を導入している。指名競争入札は、金額は低いが、発注件数は制限付一般競争入札より4倍近く多い。

 市の指名競争入札に参加するには2年ごとに市の審査を受け、入札参加有資格業者になる必要がある。その手引きを見ると、市に提出する書類に「災害協定の締結」「除雪委託契約の締結」の有無に関する記載欄があるが、市がそれをどれくらい重視しているかは分からない。

 ある土木会社社長も「少しは加点要素になっていると思うが、入札で有利に働いたと感じたことはない」と漏らす。つまり業者にとっては、せっかく災害ボランティアに協力しても、市が正当に評価しているとは思えないのが実感なのだ。

 挙げ句には、こんな出来事も。

 「どの協会、組合にも加盟していない業歴の浅い業者が(指名競争入札より参加制限の緩い)制限付一般競争入札にどんどん参加し、落札している。彼らは地元を支える意識が薄く、災害ボランティアにも協力しない。そういう業者と地域貢献に熱心な老舗業者が横並びで制限付一般競争入札に参加し、金額が安いという理由だけで業歴の浅い業者が落札しているのです」(土木会社社長)

 業歴の浅い業者からすれば「市のルールに則って落札しているだけ」、市からすれば「業歴の浅い業者が落札しても何ら問題はない」ということになるのだろう。しかし、災害ボランティアに協力している老舗業者からすれば、やるせない気持ちになるのは当然だ。

 それによって頻繁に起きているのが、いびつな入札だ。

 「予定価格が1000~2000万円台のとび・土工・コンクリート工事や舗装工事の制限付一般競争入札で、多い時には80社が参加し、半数以上が最低制限価格未満で失格になるケースが続出している」(同)

 参考までに今年7月24日に行われた郡山市鶴見坦三丁目地内の側溝工事の入札結果を別掲する。参加者66社のうち35社が最低制限価格未満で失格。落札価格は予定価格の89・373%で、市が設定した最低制限価格と同額だった。

 「今は各社、高額な積算ソフトを駆使し、専門の社員を置いて札入れ額を積算している。ただ、最低制限価格は『市のさじ加減』で最終決定されるため、正確な積算ができたとしても、ほんの0・01%の差で落札を逃すことが度々起きる。正直、カネをかけて積算するのが馬鹿らしくなります」(同)

 おかげで郡山市の入札は「運が良ければアタリ(落札)が引ける」感覚に近いとか。

 昨今は業者同士が直接顔を合わせるのを防ぐため、電子入札が当たり前になり、談合を耳にすることもほとんどなくなった。代わって、業者が首長や職員から予定価格と最低制限価格を聞き出し、入札妨害で摘発されるケースが増えている。背景には、予定価格と最低制限価格が事前に分かれば、積算の手間が省け、他社を出し抜いて落札できるという算段があるのだろう。

入札制度に改正の動き

 こうした建設業界の現状を懸念する議員もいる。市議会9月定例会では、大河原裕勝議員(1期)が次のような一般質問をしている。

 「市の入札に参加する業者が増えている。5月に行われた制限付一般競争入札には80社も参加し、大変驚いた。仕事がない中で、多くの業者が受注機会を求めている状況がうかがえる。本市の入札参加資格登録事業者はS、A、B、C、Dのランクが付けられているが、制限付一般競争入札においては入札参加可能資格として等級別格付けと総合点を指定している。しかし、先程述べたような状況から、この参加可能範囲は現状に合っていない。ランクごとの業者数や発注件数などを勘案し、制限付一般競争入札の参加資格の範囲を見直すべきではないか」

 本誌の取材に、大河原議員は質問の意図をこう説明する。

 「他市の入札を見ると、地域の仕事はその地域に事務所を置く業者が落札できるように地域性を重んじていたり、叩き合いを避けて適正価格で仕事ができるように配慮されていると感じます。郡山市は常々、業者に品質向上と技術力アップを求めていますが、そうであれば過度な競争は見直すべき。業界内には制限付一般競争入札の落札状況を踏まえ、金額の安さだけで落札していないか、技術力は伴っているのか、という見方もあります。要するに、適正な競争になっていない、と」

 大河原議員の一般質問に、遠藤一芳財務部長は「10年前と比べて土木工事と建築工事の登録者が4割減ったのに対し、とび・土工・コンクリート工事と舗装工事の登録者は1・2倍に増えている」と答弁。前出・土木会社社長によると、原発事故の除染目的につくられた会社が、今はとび・土工・コンクリート、舗装を請け負っていることが影響しているという。「そういう会社が災害ボランティアに協力せず、技術力に乏しいのに安値で落札している」(同)。

 その上で、遠藤部長は「令和9、10年度の資格登録に向けては業者の格付けを見直す」と答弁。さらに来年4月からは、制限付一般競争入札の基準額を現在の1000万円以上から1500万円以上に引き上げることを明かした。

 制限付一般競争入札の基準額が1500万円以上に引き上げられることで、どのような効果が期待されるのか。前出・契約検査課の話。

 「これによって指名競争入札の基準額も1000万円未満から1500万円未満に引き上げられ、(指名競争入札の)件数も増えるので、地域貢献に熱心な業者の受注機会が増えることが予想されます。入札参加業者が80社に上るといった状況も解消されるのではないか」

 前出・老舗業者の役員によると、条件を満たせば誰でも参加できる入札制度は品川萬里前市長の時代に定着したという。それによって今のような行き過ぎた競争が生まれ、落札金額が下がる悪循環が生じた。市民の立場からすれば、工事費(税金)を安く抑えられていいかもしれないが、いわば「地域の守り手」である地元業者が経営を圧迫される状況に陥ったら、災害時にボランティアで駆け付けてくれる人がいなくなってしまう。その認識が、郡山市には薄いのではないか。

 「椎根健雄市長には、現在のいびつな入札を是非改めてほしい。健全な競争が確保されないと業者は生き残れないし、それこそ『地域の守り手』なんてやっている余裕もなくなります」(同)

 建設業者は民間企業だが「地域の守り手」としての役割は公益性が高い。その点を踏まえた入札制度の構築が求められる。少なくとも、別表のような60社以上が参加し、半数近くが失格になる入札は異常だ。

◎7月24日入札
鶴見坦三丁目2号線側溝工事
予定価格 10,360,000
最低制限価格 9,259,000
落札価格 9,259,000 (エンドー総建)
公益土木9,266,000
福田建設9,258,000(最低制限価格未満)
渡富建設9,276,000
東液流通9,255,000(最低制限価格未満)
二嘉組9,272,000
富士和工業9,250,000(最低制限価格未満)
エンドー総建9,259,000《落札》
森尾興発9,257,000(最低制限価格未満)
三栄建設9,265,000
武田工務店9,269,000
平晋建設9,240,000(最低制限価格未満)
ダイリ建設9,263,000
みほた建設9,265,000
むさし建設9,264,000
市川建設9,244,000(最低制限価格未満)
柳沼建設9,900,000
日建土木9,263,000
ノウチ工業公告条件により無効
山元工業所9,261,000
八光建設9,244,000(最低制限価格未満)
村上設備工業9,256,000(最低制限価格未満)
椎根建設9,244,000(最低制限価格未満)
東山工務店9,254,000(最低制限価格未満)
鳳伸10,220,000
宗形組9,250,000(最低制限価格未満)
早川建設工業9,263,000
郡山塗装9,227,000(最低制限価格未満)
だいわ大光建設9,249,000(最低制限価格未満)
保安企画9,217,000(最低制限価格未満)
開東産業10,360,000
国分組9,251,000(最低制限価格未満)
公益土木9,266,000
福田建設9,258,000(最低制限価格未満)
渡富建設9,276,000
東液流通9,255,000(最低制限価格未満)
二嘉組9,272,000
富士和工業9,250,000(最低制限価格未満)
エンドー総建9,259,000《落札》
森尾興発9,257,000(最低制限価格未満)
三栄建設9,265,000
武田工務店9,269,000
平晋建設9,240,000(最低制限価格未満)
ダイリ建設9,263,000
みほた建設9,265,000
むさし建設9,264,000
市川建設9,244,000(最低制限価格未満)
柳沼建設9,900,000
日建土木9,263,000
ノウチ工業公告条件により無効
山元工業所9,261,000
八光建設9,244,000(最低制限価格未満)
村上設備工業9,256,000(最低制限価格未満)
椎根建設9,244,000(最低制限価格未満)
東山工務店9,254,000(最低制限価格未満)
鳳伸10,220,000
宗形組9,250,000(最低制限価格未満)
早川建設工業9,263,000
郡山塗装9,227,000(最低制限価格未満)
だいわ大光建設9,249,000(最低制限価格未満)
保安企画9,217,000(最低制限価格未満)
開東産業10,360,000
国分組9,251,000(最低制限価格未満)
※金額は全て税抜

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