本誌昨年1月号で、猪苗代町と会津若松市にまたがって設置された「飛び地メガソーラー」が〝ある問題〟を抱えて稼働している疑いがある――と報じたが、同7月以降、このメガソーラーの設備IDが「認定無効」になっていることが分かった。認定無効とは、ここでの発電・売電ができなくなることを意味する。本誌が指摘した疑惑は事実で、国から事業者に行政処分が科されたとみられる。動かせなくなったメガソーラーは今後どうなるのか、行方を追った。(佐藤仁)
違法行為発覚!? 施設は撤去、更地に

くだんのメガソーラーは「Blue Power(ブルーパワー)猪苗代発電所」(以下、ブルーパワー猪苗代と略)という。筆者の知る限りでは、県内初の飛び地メガソーラーとして稼働していた。
飛び地とは、どういう意味か。
猪苗代町磐根字霜降地内の林を進むと、茶色のフェンスに囲まれた2枚の太陽光パネルが現れる。周囲にはこの2枚以外にパネルはない。一方、ここから3㌔離れた会津若松市河東町八田字粟畑地内には大量のパネルが設置された場所がある。2019年に閉鎖されたゴルフ場「ナリ会津カントリークラブ」の跡地で、グーグルマップの上空写真を見るとコース跡に沿うようにパネルが並んでいるのが分かる。

ブルーパワー猪苗代は、この両所がセットになって形成されている。車で行き来すると20分もかかる距離なのに、両所は「同一のメガソーラー」だというのだ。
カラクリはこうである。
業界では、2枚のパネルがある場所を「種地」、大量のパネルがある場所を「飛び地」と呼び、両所を「自営線」と呼ばれる電線で結ぶことで同一のメガソーラーとしている。離れてはいるが電線でつながっているので一体、という理屈だ。
異例の設置方法だが、違法ではない。ただ、国が想定していた飛び地は離れた場所ではあるが同一と見なせる距離に設置することだった。それを拡大解釈し、種地から何㌔も離れた場所にパネルを設置する事業者が現れた。そこで国は、2020年7月以降は同一と見なせない場所への設置を認めないこととした。
では、なぜブルーパワー猪苗代は飛び地になったのか。
ブルーパワー猪苗代は2014年3月に再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の認定を受けた。FITは認定を受けた時期が早いほど電気の売値が高い。同施設が認定を受けたのは制度開始の翌年で、1㌔㍗当たり31~38円とかなり高額だった(注1)
注1=2025年度は8.9~15円。価格はワット数や、地上設置か屋根設置かによって変わる。
ブルーパワー猪苗代の当初の予定地は2枚のパネルが置かれた猪苗代町磐根字霜降地内の土地と、隣接する磐梯町更科字沼平の土地だった。しかし、予定地の大半を占めていた磐梯町の土地が何らかのトラブルで使えなくなり、パネルの設置場所がなくなってしまった。ただ、猪苗代町の土地はそのまま残り、FIT認定も継続された。そこで、高い買い取り価格を維持するため、残った土地を種地に、3㌔離れたゴルフ場跡地を飛び地にしたとみられる。
いわば苦肉の策で実現した飛び地メガソーラーだったが、2024年1月の運転開始後に〝ある問題〟が取り沙汰される。2枚のパネルとゴルフ場跡地のパネルが、自営線でつながっていない疑いが浮上したのだ。
以下、本誌昨年1月号「猪苗代町「飛び地メガソーラー」に渦巻く疑惑」から引用する(※は本誌注釈)
《昨年(※2024年)11月、筆者はこの役員(※県内でメガソーラーを稼働させる首都圏の再エネ会社の役員)と2枚のパネルが置かれた場所に行った。役員が解説する。
「(パネルの下に)パワーコンディショナーが付いているが、見てください、電源が入っていません。近付いて耳を澄ましても何の音も聞こえませんよね? つまり、この2枚のパネルはただの飾り、ダミーということです」
この場所はFIT認定を受けている地番なので、ここが未稼働なら高い買い取り価格が適用されるのはおかしいというのが役員の主張だ。筆者が昨年(※2024年)12月に訪れた時もパワーコンディショナーの電源は切れていた。
役員がもう一つ指摘するのは自営線の存在だ。2枚のパネルがある一帯は地面が土だが、パネルの近くから東に向かって細長い道のように砂利が敷かれた箇所が確認できる。
「一見すると砂利の下に自営線が敷かれている印象を受けるが、もしかすると敷いたフリをしている可能性もあり、本当に自営線があるかどうか分からないのです」(同)
もし自営線が敷設されていなかったら、ゴルフ場跡地にある大量のパネルとはつながっていないことになるので、飛び地メガソーラーは成立しない。従って高い買い取り価格の適用はおかしい、となる。(中略)2枚のパネルが置かれた土地は合同会社いわき綜合開発(東京都八王子市)の所有地と猪苗代町が管理する公道に囲まれているため、ここから飛び地に自営線を向かわせるには、どちらかの土地を「通らせてもらう」必要がある。だが、いわき綜合開発に聞くと「自営線を通させてほしいという話はきていない」と言い、猪苗代町建設課も「公道を通すなら許可が必要だが、申請はされていない」と話す》
この時、筆者は東北経済産業局エネルギー対策課にも事実関係を尋ねたが、当時の課長は「個別の事案にはお答えできない」としながら「寄せられた情報は内部で精査し、必要があれば現地調査をして、事業者を指導したり、行政処分を科したりしている」と話した。
撤去費用は2・5億円か
Xで「政経東北が報じた飛び地メガソーラーがFIT認定失効」と投稿されているのを発見したのは昨年10月だった。
投稿は事実なのか。資源エネルギー庁の失効等認定情報照会を使ってブルーパワー猪苗代の設備IDを照会してみると《設備ID「A654×××××××」(注2)の認定は、2025年7月4日以降、認定が無効です》《「認定が無効」というのは、失効、廃止又は取り消しによって、当該認定が既に無効となっているものになります》と表示された。
注2=正確な設備IDはもちろん把握しているが、誌面では伏せ字とする。
資源エネルギー庁が2023年9月に発表した「認定失効制度について」という資料を見ると、①FIT認定を取得後、現在まで長期間未稼働状態が継続する案件が多数存在、②改正再エネ特措法では一定の期限までに運転開始に向けた進捗が見られない未稼働案件について、認定を失効する制度を導入、③失効期限が近い認定事業者に対し、周知活動を実施中――と書かれている。
ただ、これはあくまで未稼働の施設を念頭に置いたもので、ブルーパワー猪苗代のように稼働中の施設の認定失効には触れていない。
ブルーパワー猪苗代の認定失効はどう解釈すればいいのか。再び東北経済産業局エネルギー対策課を訪ねると、千葉雅幸課長が「個別の事案にはお答えできない」としたうえで次のように説明した。
「失効とは稼働せずに運転開始期限(太陽光の場合はFIT認定から3年)を過ぎてしまったもの、廃止とは運転開始前あるいは開始後に事業者がメガソーラーそのものをやめてしまうこと、取り消しは行政処分によって認定が強制的に取り消されることを指します」(同)
事業者がFIT認定を受ける際には、国に認定計画を申請し、法律に定める基準に合致していれば許可される。この許可された計画に従って発電すれば、認定された金額で買い取ってもらえるが、計画から逸脱した発電、すなわち法律違反が見つかると行政処分を科され、認定は強制的に取り消されてしまうのだ。
これをブルーパワー猪苗代に置き換えると、飛び地メガソーラーとして稼働することを条件にFIT認定を受け、2024年1月に運転開始したが、その後、本誌の指摘で種地と飛び地が自営線でつながっていないことが判明。認定計画に従った発電をしていないため、国から認定取り消しの行政処分を受けた――という経緯を辿った可能性が浮かぶが、
「ブルーパワー猪苗代の認定無効が事実としても、失効、廃止、取り消しのどれに該当するかは個別の事案になるので答えられない」(同)
問題は、FIT認定が取り消されたメガソーラーが今度どうなるのかである。県内でメガソーラーを稼働している事業者に話を聞くと、
「取り消しによって高値買い取りはしてもらえなくなるが、そのまま発電・売電を続けるのは可能ではないか。正直、旨味はないが、バックに出資者がいることを考えると、とりあえず運転して回収できる分は回収したいのが事業者の本音」
という見解を示したが、千葉課長はこれを真っ向から否定する。
「事業者は国に廃止届を提出し、施設をどう処理するのかを報告する義務があります。そのうえで、施設は全て撤去してもらう」(同)
具体的には、設備や架台などは全て撤去し、更地にする。パネルは他所で再利用しても構わないという。
廃止届の提出は法律で定められているため、前出・事業者が言う「とりあえず運転」は認められない。つまり、ブルーパワー猪苗代はたった半年、発電・売電しただけで撤去、更地にしなければならないのだ。
気になるのは、撤去にかかる費用をどう捻出するのかである。
事業者は運転終了後のパネル等を適切に処分するため、運転開始11年目から10年間にわたり、外部組織に撤去費用を積み立てることを義務付けられている。しかし、ブルーパワー猪苗代は積み立て開始前に認定失効になった、いわば国が想定していないケース。積立金ゼロでどうやって撤去費用を捻出するのか。
「廃止されるメガソーラーの撤去費用は全て事業者の負担です」(同)
ならば撤去費用はいくらになるのか。経産省の資料では、メガソーラーの設備の廃棄費用は「1㌔㍗当たり1万円」と試算されている。ブルーパワー猪苗代の発電容量は2万5286㌔㍗なので、単純に2億5000万円以上かかる計算だ。ちなみに、建設費は「1㌔㍗当たり17・6万円」となっており、これに基づくと同施設の設置には44億円以上が投じられた計算になる。
これだけの費用をかけながら数カ月しか運転できず、ほぼ利益を生まなかったわけだから、事業者が受けた損失は相当大きかったはずだ。
いわく付きの事業者
ブルーパワー猪苗代を設置したのは再エネ、不動産、投資などの事業を行う㈱ブルーキャピタルマネジメント(東京都港区)だが、運転開始前に売却され、現在の事業者はCEISIEC(サイズイク)合同会社(東京都千代田区、代表社員・NSC一般社団法人、業務執行者・本間理志氏)となっている。
ただこの会社、事務所はレンタルオフィスで、代表社員のNSC一般社団法人も調べてみたが、同じレンタルオフィスに事務所を置き、代表理事も同じく本間理志氏だった。本間氏の本業は税理士で、他のメガソーラーの事業者にも関与していることが分かっている。
これだけでは事業者の実態は判然としないが、実は、CEISIEC合同会社は現在地に事務所を移した際に法人登記簿の役員欄を閉鎖している。この閉鎖された役員欄を調べると、業務執行社員として「中川企画建設㈱」という会社が出てくる。
中川企画建設(大阪市中央区、中川廣次社長)は1966年設立。資本金8000万円。土木建築工事を主業とする。2019年から2023年までCEISIEC合同会社と同じ住所に支店を置いていた。福島県内にも富岡町に支店がある。
中川企画建設は昨年10月9日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請し同日、保全命令を受けた。負債は債権者608人に対し222億円。
経営破綻を報じた民間信用調査会社・東京商工リサーチの記事に興味深い記述がある。
《建築・土木工事を中心に、メガソーラーの新規建設工事にも参入し事業を拡大させてきた。2019年5月期には売上高が200億円を超え、この間、SPCを通じて大規模メガソーラーの新規工事を請け負い、2022年5月期は売上高283億7665万円にまで伸ばしていた。
しかし、メガソーラー工事は工事費用が先行する一方で、回収までの入金サイトにズレが生じ、資金繰りが徐々に悪化。さらに一部の工事トラブルや災害による追加工事などが発生した。加えて、一部メガソーラーの転売において、契約先とのトラブルも生じた》(TSR速報、昨年10月9日付より抜粋)
さらに続報では「法的申請の一因が、メガソーラーの権利移転に伴う25億円の資金トラブルだったことが分かった」とも伝えられた。
中川企画建設は、複数の違法森林伐採が見つかり工事が中断している千葉県鴨川市のメガソーラー、工事現場で土砂災害を起こした鹿児島県姶良市のメガソーラー、建築物の建設が原則認められていない市街化調整区域でパネル製造工場の併設が計画されている仙台市のメガソーラーなど、表面上は名前は出てこないが各事業者の関連先として取り沙汰されてきた会社だ。
猪苗代町の飛び地メガソーラーを報じているマスコミは本誌以外に見当たらないが、こうした各地で起きている様々なトラブルが引き金になり経営が行き詰ったということか。
「森林法を改正すべき」
筆者は昨年11月、1年ぶりに猪苗代町にある2枚のパネルを見に行った。パワーコンディショナーは相変わらず電源が切れていた。フェンスの一部がグニャリと曲がっていた。
会津若松市のゴルフ場跡地にも行ってみた。出入口に軽トラが停まっていて、2人の男性が立ち話をしていた。話を聞こうと近付くと、2人は軽トラに乗り込んで場内へと走り去った。出入口はフェンスで閉ざされ、部外者は中に入れない。道路から敷地をのぞくと、何やら作業をしている様子がうかがえた。

CEISIEC合同会社と中川企画建設に、ブルーパワー猪苗代が認定失効になった理由、施設の撤去工事の進捗状況、撤去後の跡地利用などについて質問するメールを送ったが、期日までに返答はなかった。
メガソーラーをめぐっては、福島市の先達山をはじめ全国で環境破壊が問題視され、反対運動も起きていることを踏まえ、国が安全性に関する規制の強化や新規事業の売電価格への上乗せ補助を廃止する方針を打ち出している。
外資のメガソーラーの現場責任者はこう指摘する。
「森林法に問題がある。付け焼刃の規制では、事業者はいくらでも抜け道を見つける。メガソーラーを厳しく規制するドイツなどを参考に、日本も森林法の抜本的見直しを進めるべきだ。今の森林法は、メガソーラーがつくられることを想定した立て付けになっていないのだから」
飛び地メガソーラーで起きた問題は氷山の一角に過ぎない。国は必要な法改正を急ぐとともに、行政には無秩序な開発・稼働は許さないという厳しい姿勢が求められる。

























