南会津町「観光施設」の指定管理者更新で紛糾

南会津町「観光施設」の指定管理者更新で紛糾

南会津町は町有観光施設の管理・運営を指定管理者に委託しているが、今年度(今年3月末)で指定期間が満了となるため、新たな指定管理者の募集を行った。昨年秋に募集し、町指定管理者候補者選定委員会の審査を経て、候補者を決定した。その後、昨年12月議会で指定管理者委託の承認を求める議案を提出したのだが、そのうちの1件について、議員から「適切ではない」旨の指摘があった。

背任行為を指摘された三セクの社外取締役

別表は、南会津町が指定管理者の募集、選考を行った施設と指定管理者(選定された事業者)の一覧。現在の指定管理者の指定管理期間が今年3月末までとなっていることから、町は昨年9月2日から10月3日まで募集を行い、町指定管理者候補者選定委員会での審査を経て、昨年11月までに指定管理者候補者を選定した。指定管理期間は今年4月1日から5年間。

指定管理者選定結果

施設名指定管理者候補者備考
会津高原だいくらスキー場株式会社みなみあいづ継続
会津山村道場電脳株式会社新規
林産物展示販売施設(道の駅たじま)株式会社みなみあいづ継続
地場産品展示販売施設(南会津ふるさと物産館)会津よつば農業協同組合継続
会津高原憩の家株式会社みなみあいづ継続
祇園公園(再公募)――
会津高原たかつえスキー場等株式会社 DMC aizu新規
会津高原たかつえカントリークラブ株式会社 DMC aizu新規
舘岩農林水産物処理加工・販売施設(そば処曲家)会津高原たていわ農産有限会社継続
舘岩農産物直売所(道の駅番屋)(再公募)――
古町温泉赤岩荘いなGO!新規
会津高原高畑スキー場株式会社 DMC aizu継続
会津高原南郷スキー場株式会社みなみあいづ継続

半分以上は、いまの指定管理者が継続されることになるが、新規で指定管理者が選定された施設が4つある。そのうちの2つ、会津高原たかつえスキー場等と、会津高原たかつえカントリークラブの指定管理者になったDMC

aizuは会津高原高畑スキー場の指定管理者になっており、運営施設が1つから3つに広がった格好。

古町温泉赤岩荘は、地元のNPO法人・いなGO!が指定管理者になった。同法人は昨年、NPO法人の認証を得たばかりで、伊南地区を中心に、地域経済の活性化、地域コミュニティーの促進、健康福祉の増進等に関する事業を行い、地域振興に寄与することを目的としている。

会津山村道場はコテージやオートキャンプ場を有する施設で、電脳(本社・東京都)が新たな指定管理者になった。

なお、今回、新規事業者が指定管理者になった4施設は、現在(今年3月末まで)は町100%出資の第三セクター・みなみあいづが指定管理者になっている。

同社は、もともとは町有観光施設の運営を担うために設立された会社で、かつては別表で示したほぼすべての施設の運営を担っていた。しかし、指定管理者の選考レースに敗れる形で、徐々に運営施設を失っていった。今回も4施設を失ったことになる。

もっともそれは、町の三セク改革や、町有観光施設のあり方を検討していく中で、「指定管理者選考で別事業者の提案の方が優れていた」「別事業者に任せた方が今後の展開に期待できる」といった判断からそうなったもの。

議員が山村道場指定管理者に疑義

会津山村道場
会津山村道場

それはともかく、こうして新たな指定管理者が選考され、昨年12月議会で、各施設の「指定管理者の指定について」という議案が提出された。町の指定管理者選考結果について議会の承認を求めるものだ。

この中で、会津山村道場については少し揉めた。

その理由はこうだ。第三セクター・みなみあいづは昨年5月に役員の入れ替わりがあった。新たな役員(取締役)の1人に室井亨氏という人物がいる。実はこの室井氏は電脳の代表取締役会長にも就いている。会津山村道場はみなみあいづと電脳の2社が指定管理者に応募し、電脳が候補者になったが、議員からこの構図について、「おかしい」と指摘があったのだ。

株式会社みなみあいづ
株式会社みなみあいづ

議員の指摘はこうだ。

「室井亨氏はみなみあいづの社外取締役になっている。役員になっている以上はみなみあいづの利益を最大限追求していく、あるいはその努力をする必要がある。一方で、室井氏は電脳の会長でもある。社外取締役をしている会社(みなみあいづ)と、自分の会社(電脳)が同じ施設の指定管理者に応募し、別企画を出すのはあり得ない。背任行為に当たるのではないか」

こうした指摘に対する渡部正義町長、町当局の答弁は以下のようなもの。

町長「電脳の社長が(会津山村道場は)可能性がある施設ということで(指定管理者の応募に)提案された。そこに、会長である室井氏の力が働いているかどうかは承知していない。(みなみあいづの中で)室井氏には情報発信や社員教育などの面で、外部の視点として、いろいろな提案をしてもらっている」

総合政策課長「みなみあいづの指定管理者応募に関する企画会議の場に、私もオブザーバーとして出席したが、その時点では確定した企画書ではなく、それについて社外取締役が意見を言う場面はなかった」

副町長(町指定管理者候補者選定委員長)「選定の中で、室井氏の存在がどうということはない。純粋に企画・提案の内容を点数化して選定に至った」

議員からは「室井氏は町の政策アドバイザーの立場にあり、各種情報を入手できる状況にあった」との指摘もあった。

これに対し、渡部町長は次のように答弁した。

「室井氏は南会津町の出身で、知り合いを介して昨年(2024年)6月に会った。そこで、町有観光施設の運営に悩んでいるという話をし、政策アドバイザー、みなみあいづ社外取締役に就いていただいた。指定管理者選考については、最終的により優れた提案をしたところに任せるのがベストだと考えている。室井氏に対して疑念を抱いているようだが、信頼に足り得る人物だと思っている」

こうした質疑の後、討論が行われた。反対討論は前述したような事情から「町民から疑念を抱かれるような状況でとても賛成できない」というもの。

一方、賛成討論では次のような意見があった。

「会津山村道場は、公費(指定管理料)を年間1000万円ほど投じて運営がなされてきた。電脳の提案では、それを徐々に減らし、いずれは(指定管理料が)ゼロでもやっていけるようにするというもので、そういった部分を踏まえ、点数化して選定に至ったと町から説明があった。町民目線で考えると、施設がどれだけ利用され、外部から人を呼び、福祉向上につながるかが重要で、そういった視点で考えたときに、電脳に任せることは賛成」

賛成・反対の討論の後、起立による採決が行われ、賛成11、反対4の賛成多数で可決された。これにより、会津山村道場は4月から電脳が指定管理者となることが正式に決定した。

町民からも疑問の声

南会津町役場
南会津町役場

11対4という結果は、接戦でもないが、「反対者はごく一部」と切り捨てていい数でもない。議会の決定が覆ることはないが、納得していない人もいる。実際、本誌には同議会後、町民からこんな声が寄せられている。

「南会津町の第三セクター・みなみあいづの社外取締役が、町施設の指定管理者公募において、自らが代表取締役をしている会社も応募して競争行為をした。この行為は明らかに競業避止義務違反であるものと考える。議員は『この社外取締役はみなみあいづへの背任行為の疑いがある』旨を質したが、町長はその答えを持ち合わせていないとの答弁だった。公平な競争行為ではないものと考える。違反状態での競争を認めるのはいかがなものか」

こうした指摘も踏まえて、町に問い合わせたところ、総合政策課の担当者は次のように話した。

「選考については、議会で選考委員長の副町長が答弁した通りですが、みなみあいづが会社として正しかったのか、そこは明確にしなければならないと思います。その場合、重要になるのは、みなみあいづとして損失があったかどうかということになるんだろうと思っています」

その点で言うと、町が2023年度に実施した「町有観光施設に対する外部評価」では、会津山村道場は「いったん廃止」を提言されるほどの状況だ。

外部評価によると、「指定管理料として毎年1200万円から1500万円が支出され、これがなければ毎年多額の赤字を計上する状況にある」と指摘されている。そのほか、施設の老朽化への対応や、ターゲット層の明確化が課題とされた。キャンプ需要の高まりを受け、キャンプ場としての利用は堅調だが、通年での収益確保や経費削減の工夫が求められるとされていた。業績予測では、営業利益が毎年800万円弱のマイナスとされている。

つまりは、儲かっている施設ではないということ。その施設の運営権(指定管理)を失ったことが、みなみあいづにとって、どれだけの損失になるのか。損失になるとしたら、みなみあいづの会社としての対応が正しかったのかどうかを検証する必要があるというのが町の見解だ。加えて、町は疑念を抱かれないようにするためにも、選考結果の詳細を公開することを検討しているとも明かした。

電脳の見解

一方で、電脳に問い合わせたところ、以下の通り回答があった。

――山村道場の指定管理者に応募した理由。

「当社オーナー(※室井氏)は70歳を過ぎ、今年10月より海外への留学・移住を計画しておりましたが、同町出身者として町の窮状を知り、これまでの自身の経験や人脈を活かし、人生の節目に南会津町のお役に立ちたいとの思いから、応募に至ったものです」

――山村道場の指定管理者応募提案にあたり、御社内で室井会長はどのような立場であったのか。

「応募に際しては、当社社長及びわたくし総務人事部長が、町の商工観光課担当者への質問・説明を受けたうえで申請書を作成しております。そのため、株式会社みなみあいづの申請内容については把握しておらず、内容が一語一句重複する可能性はないと考えております。従いまして、先方の提出内容につきましては当社では確認できかねますので、南会津町の担当者へご確認ください」

――南会津町議会で「利益相反」「背任行為」といった指摘があったがどう捉えるか。

「対象施設は長年赤字が続いており、町民とのタウンミーティングの内容からも、他施設も同様に町の財政悪化をこれ以上招くべきではなく、時限的に管理費を削減すべきとの見解が示されています。このため、当社では本年4月より自社資金を投入し、管理期間中に早期黒字化を目指し、町の活性化に繋げていきたいと考えておりますが、場合によっては当社における経営リスクも十分に想定され、利益相反どころか、赤字を抱え込む可能性の方が高い状況です。新規集客のためのシステム構築、各施設の老朽化に伴う改修工事、寝具・電化製品・什器・和式トイレの入れ替え、冬季使用に対応するための暖房器具増設、県外からの芸術家誘致による施設内の目玉制作、園内の草花・樹木の植栽に伴う材料費・人件費等を考慮すると、高額な投資が必要であり、室井自らの退職金の一部をそこに充てる考えのようです」

南会津町は2006年に田島町、南郷村、舘岩村、伊南村の南会津郡4町村が合併して誕生した。旧町村ではそれぞれスキー場をはじめとした観光施設を所有しており、それら施設を運営する第三セクターがあった。合併後は南会津町が引き継ぎ、財政規模がそれほど大きな自治体ではないにもかかわらず、多くの観光施設を抱えることになった。そのため、それらをどうしていくかは合併直後から課題だった。

そんな中で、一部施設は「廃止」の方向性が示されたこともあったが、なかなかそこまでは踏み切れなかった。そこで、指定管理者を公募し、さまざまな事業者のノウハウを取り入れることで事態を打破しようとした。それが十数年前のことで、いまもそれが続いているわけだが、課題が克服できたわけではない。

少なくとも、かつての振興公社や第三セクターでの運営では、先が見えている。だからこそ、新しい事業者に期待する声もある。今回はその過程でちょっとした疑念を生み、そうした指摘も理解できるが、電脳が結果を出せば最終的には「任せて良かった」ということになるのではないか。

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