昨年4月の市長選で新人の椎根健雄氏(49)が初当選を果たしてから約1年3カ月。新市長誕生の〝立役者〟となった人物たちは、市政運営について積極的に助言しているのかと思いきや、意外にも微妙な距離感を保っているのだという。
〝一市民〟を強調する品川萬里前市長
昨年4月20日投開票の郡山市長選は、3期12年務めた品川萬里氏が引退を表明したのに伴い、新人4人による選挙戦となった。その結果、元県議の新人椎根健雄氏が、次点で元県議の新人勅使河原正之氏に1万票以上の差を付け、初当選を果たした(別表参照)。
郡山市長選の結果
当 54,639 椎根 健雄 48 無新
41,076 勅使河原 正之 73 無新
3,845 髙橋 翔 37 無新
3,820 大坂 佳巨 54 無新
投票率40.28%(前回40.66%) 当日有権者数259,605人

当選時48歳は郡山市長として歴代最年少であり、当時の県内の現職市町村長の中でも最年少だった(その後、昨年11月の福島市長選で33歳の馬場雄基氏が当選)。
当初は自民党郡山総支部が推薦する勅使河原氏と、立憲民主、国民民主、社民の各県連や県民連合、連合福島の支援を受ける椎根氏がしのぎを削る展開になるとみられていた。
ところが、自民党重鎮の佐藤憲保県議が早々に椎根氏を推す方針を表明。県連会長の星北斗参院議員、森雅子参院議員も椎根氏に為書きを寄せるなど、自民党は一つにまとまれなかった。

さらに前市長の品川氏が椎根氏の総決起集会で「後を継いでもらう」と事実上の後継指名をし、品川市政に距離が最も近かった自民系の市議会第2会派「新政会」も支持に回った。激しい競り合いと報じられていたが、結果は予想以上の大差だった。40代の新市長に市政刷新を期待する有権者が多かったのかもしれない。
そんな椎根氏については、市長就任当初から「佐藤憲保県議や品川氏などベテラン政治家の後押しで当選しただけに、市政にその意向が反映されすぎなければいいが」と心配する声もあった。椎根氏は物腰が柔らかく、優しい人柄だけに、市政誕生の〝立役者〟から頼まれごとをされると断り切れないのではないか、と懸念されていたのだ。せっかく若い新市長が誕生したのに、ベテランに主導権を握られてしまっては、若さを打ち出した意味が薄れてしまう。
佐藤憲保県議や品川氏は、椎根氏に市政運営に関する助言をしたり、情報交換することはあるのだろうか。
まず佐藤憲保県議に率直に質問したところ、次のように答えた。
「私自身は椎根市政には100%ノータッチです。ただ、周囲からは『どんな集まりにも顔を出し、気軽に接してくれる市長だ』と評価する声が聞こえてくるし、職員もいい雰囲気でやっているようです」
一方で「人口減少対策についてだけは提言した」と述べる。
「県内全域で人口減少や流動化が進む中で、県内における人口流出の〝防波堤〟となれるのは郡山市しかないと考えています。そういう意味では大きなポテンシャルがあり、それを見越した政策を打ち出していけば、いま以上に活気ある地域をつくることができる、と伝えました」(佐藤憲保県議)
できるだけ市政に口出ししないようにしつつ、大局的な政策について助言するというスタンスのようだ。
品川氏に関しては、昨年4月の市長引退後は市内の自宅で暮らしているが、市役所にたびたび顔を見せる姿が目撃されている。
「市長時代から思いついたことはすぐ電話やメールで連絡するタイプだったが、いまも一部の職員とは連絡を取っている。市長時代に世話になった人物を招いて感謝の思いを伝えたり、会合に出席するなど、活発に動いている。その流れで椎根氏にあれこれ助言していたとしても不思議ではない」(市内の経済人)
実際のところはどうなのか。品川氏に確認するべく、自宅を訪ねたところ、「家の中は散らかっているので」と、自宅の外で取材に応じた。
――前市長として椎根氏に助言することはありますか。
「私はいま一市民の立場。求められれば一市民としてアドバイスするが、求められたこともないので」
――市役所に足を運んだり、職員と連絡を取り合うなど、引き続き市政に関心を持っているようですね。
「一市民として、公開されている情報の最新版を求めて担当部署に足を運んでいるだけです。それに連絡を取り合うと言っても、一市民として思いついたことを旧知の職員に連絡しているだけなので。一市民の話なのでこれ以上深掘りせず、忘却してください」
真価が問われる2年目

ひたすら一市民であることを強調し具体的なコメントを避けた品川氏。ただ、「アドバイスを求められたこともない」とも話していたので、前市長として思うところがあるのかもしれない。その胸中まではうかがい知れないが、本人いわく〝一市民〟とのことなので、椎根市政に深く介入している様子はなさそうだ。
このほか、市内の事情通によると、市長選の際には、椎根氏がかつて秘書を務めていた増子輝彦元参院議員の支持者が、旧後援会のネットワークを使い、実質的な支援に回っていたという。そこで、増子氏が理事長を務めるシンクタンク・一般社団法人未来構想会議を通して事実確認を申し込んだが、期日までに連絡はなく、支援の実態は確認できなかった。
「増子氏本人やその支持者は、椎根氏の実質的支援に回ったことは公に出していないようです。ただ、支持者らと行動を共にしている人物がある会合で『自分は椎根氏と一心同体』などと公言し、市議会の議員控室などに出入りしようとして、問題視されたそうです。そうした人物の言動も椎根氏の評判に関わってくるので、今後注意する必要があると思います」(市内の事情通)

ある市議は「椎根氏は人の話をよく聞くタイプだから確かに心配」と語りながらもこう指摘する。
「プロパー上がりの野﨑弘志副市長と、県から出向している齊藤紀明副市長がうまくフォローしているんです。特に齊藤副市長は頭の回転が速く、市議会対応なども丁寧にやっているので、〝陰の主導権争い〟のような事態にはならないのではないかと考えています」
椎根市政誕生の立役者たちは当初懸念されていたほど椎根市政に介入せず、意識して一定の距離を置いているようだ。だが、今後の市政運営の中で助言を求める場面では、現在の微妙な距離感が崩れてしまうかもしれない。椎根氏は①選ばれるまち、②暮らしの充実・笑顔になれるまち、③経済の活性化――の3つの基本方針を掲げる。就任後の1年3カ月ほどの間には、少子高齢化と人口減少、公共施設再編、交通渋滞などの課題が顕在化した。本誌では▽ごみ減量問題、▽「産廃銀座」と化す田村町、▽いびつな入札制度の見直し――などの問題を取り上げている。
やるべきことは山積み。選挙を支えた人々とも適切な距離感を保ちながら、市民本位の市政運営を続けられるか。2年目以降は、その真価が問われる。

























