相双地区で生コンクリートの共同生産・販売を行っている相双生コンクリート協同組合で、組合員企業4社のうち2社が脱退する分裂騒動が起きた。同組合本部の建物が仮差し押さえ処分を受ける騒動に発展し、業界内で話題になっている。
元組合員が本部建物を仮差し押さえ
生コンクリートとは、工場で練り混ぜられて固まる前のコンクリートのこと。時間が経つにつれて固まっていくので、JIS(日本産業規格)で90分以内に工事現場に納品することが定められている。
そのため、ダムやトンネル、大規模インフラが整備される際は、周辺の既存プラントに加えて、現地プラントが新設されることも多い。東日本大震災後には復旧工事に使われる生コンを供給するため、被災地に新たなプラントが増設された。
福島県の原発被災地で使われる生コンを供給しているのが、相双生コンクリート協同組合(富岡町小浜、相澤勇栄代表理事=下越物産・福島広野レミコン社長)だ。
1978年設立。出資総額800万円。生コンの共同販売を目的に製造業者6社で立ち上げられた。初代代表理事は加藤建材工業社長(当時)の加藤久氏。
昨年4月時点で①福島広野レミコン(広野町)、②草野建設(楢葉町)、③双葉住コン(双葉町)、④双葉日立生コンクリート(双葉町)の4社が組合員となっていた。
ところが、今年3月、双葉住コン、双葉日立生コンクリートが脱退。それに伴い出資総額は1600万円から800万円に減少した。
さらに同組合の本店として登記されている富岡町の建物の不動産登記簿を確認したところ、元組合員の双葉住コンが債権者となり、地裁いわき支部が仮差し押さえを命令していたのだ。
一体内部で何が起きたのか、相双生コンクリート協同組合に問い合わせたところ、次のように回答した。
「組合員間の利益配分が脱退2社に偏っていたので、それを平準化しようとしたところ、2社の賛同を得られませんでした。その後、2社は話し合いにすら応じなくなり、昨年12月に自ら脱退届を提出し、本年3月31日をもって脱退しました」
「元組合員企業(※双葉住コン)の仮差し押さえに関する請求は、当組合の生産委託事業に関するものです。これについては、脱退した元組合員らが非協力的であったため、当組合の総会で正式な費用として承認されておらず、支払いを停止せざるを得ませんでした。2社が当組合から脱退した後、 6月の定時総会で生産委託に係る支払いを承認し、各社への支払いに向けて手続きを進めていた矢先に、元組合員から仮差し押さえを受けた次第です。現状、他社に先駆けて、同社に対して支払いを進めています」
浜通りの業界関係者によると、「同組合の生コンプラントや共同試験場を建設する際の出資金の扱いをめぐって内部で意見の相違が生じ、仮差し押さえにまで発展したようです」とのこと。生コンの協同組合といえば地域内での価格競争を避け、安定供給と利益確保を行うために設立されるものだが、足並みがそろわなくなったようだ。
同組合の回答には「組合間の利益配分が脱退2社に偏っていた」、「非協力的であった」など穏やかでない言葉が並ぶ。脱退した2社の言い分も聞きたいと取材を申し込んだが、「担当者がしばらく対応できない」(双葉住コン)、「いまはお話しできることがない」(双葉日立生コンクリート)との回答だった。
ただ、前出・浜通りの業界関係者によると「内部分裂の経緯については業界関係者だけでなく、商社や砕石業者などの間でも注目されており、もはや誰もが知るウワサとなっています」という。
組合関係者が新会社設立

さらに不可解なのは、元組合員の2社が脱退した3月31日、組合員関係者により、双葉生コンクリート(浪江町)、浜通り生コン(双葉町)という2つの新会社が設立されていたことだ。
双葉生コンクリートは資本金400万円。役員は①大塚将展氏(代表取締役=同組合理事兼事務局長、下越物産グループのケーティーホールディングス取締役)、②相澤勇栄氏(取締役=同組合代表理事、下越物産社長)、③鈴木章夫氏(取締役=同組合副理事長、MUCC商事いわき営業所長)、④草野正氏(取締役=草野建設社長)の4氏。
なお下越物産は仙台市本社の土木建築資材の卸売業者で、複数の子会社を抱える。MUCC商事はUBE三菱セメントのグループ会社で、販売店として同組合に名を連ねる。
浜通り生コンも資本金400万円。役員の顔触れは全く同じで、こちらは鈴木章夫氏が代表取締役を務める。
この2社がどういう経緯で設立されたのかについても同組合に確認したところ、次のような回答だった。
「福島県中小企業団体中央会の指導を受けて、協同組合から生コンクリート製造事業を移管するために設立されました。今後は相双地区の生コンクリート需要に対応していくものと認識しています。会社設立は組合が理事会などで決定すべき事項ではありませんが、新設された会社への事業の移管については理事会の決議を経ています」
同組合の生コン製造事業を担う会社として立ち上げられた2社も同組合に加入し、再び4社体制になったとみられる。
全国の生コン出荷量は減少傾向にあり、2023年度はピークである1990年の4割を下回った。福島県も復興需要が一巡し、出荷量が下がる一方となっている。
民間信用調査機関によると、同組合の業績も安定していない(別掲のグラフ参照)。ただ、同組合は東京電力関連の工事にも生コンを供給しており、安定した売り上げを見込める。東電は「個別の取引状況は明かしていない」と回答するが、同組合ホームページの納入実績の欄には東電の名前が記されている。

特に福島第一原発ではこの先、燃料デブリ取り出しに伴う施設整備などの工事が予定されており、生コン需要が続くとみられている。
現在は、廃炉作業で発生したがれき類や放射性固体廃棄物を容器に収納した状態で一時保管する「固体廃棄物貯蔵庫」11棟の建設工事が構内で進められている。工事には大量のコンクリートを使用するため、東電は同原発近くの自社敷地にコンクリートプラントを新設したほど。こうした動きが、今回の内部分裂騒動に関係していると見る向きもある。
同組合によると、顧問会計事務所は脱退した元組合員の顧問でもあり、中立性や利益相反を理由に契約終了になったという。組織の混乱ぶりがうかがえる。業界内では以前から続いていた主導権争いが大型事業を前に再燃したと囁かれている。脱退した2社の言い分が気になる。
真相は判然としないが、福島第一原発の収束作業や原発被災地の復興が進む中、それを支える生コン業界で何が起きているのか、引き続き注視する必要がありそうだ。





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