草刈り業務の改善を求めた会員 クレーマー認定で弁護士案件に
郡山市在住の男性Xさん(63)は、これまで林業や造園業に携わり、「草刈りのプロ」を自認する。経験を生かそうと草刈りを業務の一つとする公益社団法人郡山市シルバー人材センター(郡山市、齋藤正夫理事長)に入会したのは昨年6月だった。しばらくは仕事の依頼がなかったが、今年5月に初めてセンターの草刈り業務に参加し意気込んで臨んだ。ところが理想と現実は違った。
「安全面や効率面から改善の余地が大いにありました。高い気温の中、高齢者がほとんど手作業で行っており、休憩も少ないので熱中症の危険が高いです。採った草を乾かさずに袋に入れて捨てるのは、ごみの増加につながります」
ではどうすればよいのか。
「自走式の草刈り機を使えば、例えば50㍍四方の作業に3人で3時間かかるところを1時間で完了します。草を粉砕する機能もあるため、袋に集める必要もありません」(同)
センター会員は個人事業主のため、自前で機械を用意して作業でき、その経費を上乗せした報酬が支払われる。Xさんは自前の草刈り機を使った作業では1時間当たり1400円の報酬となるとセンターから説明を受けたという。ところが実際は満額支払われなかった。センターに確認すると、「草刈り機を使用している時は1400円、それ以外の草集めなどの時は最低賃金の1033円で算定している」と説明を受けたという。Xさんの業務内容は草刈り機を使った作業と手作業に分けて記録され、その分報酬が少なく算定されたというわけ。
「誰がどの作業を何時間したかをまとめてセンターに申告しているのは草刈りチームのリーダーです。その人が実態とは違う業務報告をしたのでしょう。この仕組みはおかしい。会員はセンターやリーダーに雇用されているのではなく個人事業主です。労務管理はリーダーに一任するのではなく自分で行い提出するべきです」(同)
Xさんは草刈り業務が非効率的で安全面からも問題があること、報酬が事前の説明とは違うことを問題視し、センター職員に改善を申し出た。週3日の頻度で業務に従事していたが、疑問点が見つかるたびに説明や改善を求めたという。らちが明かないと労働局の他、センターに補助金を交付している郡山市や業界団体の県シルバー人材センター連合会などにも報告した。
すると、7月4日に内容証明郵便が届いた。弁護士法人滝田三良法律事務所の滝田三良弁護士、齋藤好明弁護士、小室未来弁護士の名で「受任通知書」とある。郡山市シルバー人材センターの代理人を受任していることを明かし、次のように要求した。文意を損なわない範囲で内容をリライトしている。
1 X氏は昨年6月16日にセンターに入会し今年5月ごろから職員に対し仕事に関する苦情を電話で頻繁にしている。センターとしてはその都度誠実に説明しているが納得していないようだ。県シルバー人材センター連合会や全国シルバー人材センター事業協会などにも苦情を申し立てている。
2 センター職員は対応に疲弊し業務に支障が出ている。センターとしては十分な説明を尽くしていると考えているのでもうやめてほしい。
3 これまでの行為や発言内容はセンターの定款や「就業不適格会員に対する取扱要領」の規定に抵触する恐れがある。したがって、X氏の対応次第では定款などに定める処置を講じる場合もある。
4 交渉の一切は滝田三良弁護士事務所の弁護士が受任しているので、センターへの直接の連絡は慎んでほしい。連絡は代理人である我々に書面でするように(担当は齋藤弁護士)。
要するに、Xさんが方々へ改善要望をした行為が度を超えた苦情と捉えられ、クレーマー認定されたということだ。不遇にも数日後、Xさんは出勤前に自家用車の軽トラックのバッテリーが上がり1時間の遅刻が確実になった。遅刻を電話でチームリーダーに報告した時に「もう来なくていい」と言われ仕事はなくなった。今は民間業者で草刈り業務に従事している。
弁護士の名で規定違反をちらつかせる書面が来ておののいていると思いきや、Xさんは闘志を燃やす。
「5月の総会では私以外にも会員たちから今のシルバー人材センターに不満を示す質問が多かったです。共同で改善を要望することでセンターが動いてくれるのではと感じました。改善を求める団体をつくろうと有志を募っています」
Xさんは、シルバー人材センターの主業務である草刈りについて、買い叩かれている現状を明かす。
「高齢化で体力的に草刈りが難しくシルバー人材内でも従事者が減っています。そうすると、少ない人にどんどん仕事の依頼が来て負担が増します。私がいたチームでは熱中症の危険があるのに休憩も余り取らず無理を強いる体制になっていました。実際、体が持たずチームを抜ける人も多いと聞きました。土手や石が転がっている場所は自走式草刈り機が入れないので、人に頼まなければならず、最低賃金でやってくれるシルバー人材が重宝されます。発注者である役所や地元業者が草刈りに求めているのは『非効率でもいいから安い人材』なのです」
Xさんの要求が正当なものなのか度を越したものなのかは別として、「高齢者のやりがい」で安く抑えられている草刈り業務の担い手は減っていきそうだ。
職員と事務局長の訴訟が佳境へ パワハラや不当配転の賠償請求
郡山市シルバー人材センターに対しては、職員2人が事務局長からパワハラや不当な配置転換、名誉毀損を受けたなどとして地裁郡山支部に損害賠償を求める訴訟を昨年9月に提起している。これまでに非公開協議が5回行われ、8月5日に6回目を迎えた。結果はセンターの行く末に関わり目が離せない。
原告は正職員の男性と嘱託職員の女性で、被告は法人としてのセンターと相楽利次事務局長兼業務執行理事。原告代理人は二瓶貴之弁護士。被告代理人は滝田三良法律事務所の齋藤好明弁護士。齋藤弁護士が前出のセンター会員Xさんに内容証明を送ったのは、先にこの訴訟でセンターの代理人となっていた縁からだろう。訴訟担当は百瀬玲裁判官。
地裁郡山支部で訴訟記録を閲覧すると、1月に裁判所からセンター側に和解を検討するよう打診があったが半年以上経っても主張は平行線をたどっているので成立しなかったとみられる。6月には職員側に和解の具体的な条件を検討するように打診があった。8月5日の協議で和解に向けて折り合えるかどうかが焦点だ。
























