事務所移転に揺れる【会津若松地方森林組合】

事務所移転に揺れる【会津若松地方森林組合】

 会津若松地方森林組合の事務所移転をめぐり、土地取得費用が当初の予定より膨れ上がり、一部役員が執行部に不信感を抱いている。同組合の内部で一体何が起きているのか。

土地費用〝倍増〟に内部から疑問の声

土地費用〝倍増〟に内部から疑問の声【会津若松地方森林組合の事務所】
会津若松地方森林組合の事務所

 会津若松地方森林組合(会津若松市城前、島田正義組合長)は、会津地方の民有林所有者によって組織されている協同組合だ。組合員の経営相談や森林管理、森林施業の受託、資材の共同購入、林産物の共同販売、資金の融資を担う。

 対象区域は会津若松市、猪苗代町、磐梯町、会津坂下町、湯川村、柳津町、会津美里町、三島町、金山町、昭和村の1市7町2村。昨年3月末時点での組合員数は6369人(正組合員6144人、準組合員225人)。役員は組合長のほか理事13人、監事3人。職員29人。

 過疎化による林業就業者の減少や高齢化、木材価格の低迷で採算性が低下していることが慢性的な課題となっている。そうした中で同組合が直面する「もう一つの課題」が、事務所移転だという。

 昨年5月の総代会で配布された資料には次のように書かれている。

 《森林組合事務所は平成23年に発生した東日本大震災の影響を受けた状況の中、築50年を超え老朽化が進んでおります。これらを踏まえて新たな事務所移転について調査・審議することを目的とした事務所移転検討委員会を設置し、進めております》

 島田組合長は就任時から移転を〝公約〟として掲げ、この間会津美里町、会津坂下町などの候補地を視察してきた。だが、定款で会津若松市内への設置が謳われていることなどから、本格的に決まるまでには至らなかったという。

 複数の関係者によると、そうした中で助け舟を出したのが、組合員でもある会津若松市の不動産業者だった。会津若松市河東町にある約3000平方㍍の土地を移転候補地として提案。所有者はマルト不動産などで、不動産業者が仲介役となってまとめるという。同組合としてもこの案を歓迎し、約6000万円で購入する方針が理事会で決議された。

 ようやく長年の問題が解決に向けて前進したと思われたが、その後、事態は暗転する。

 不動産業者は「約3000平方㍍では足りないのではないか。買い増してほしい」、「少しばかり残っても他に売れないので、すべて土地を買ってほしい」と、進入路を含めた約5700平方㍍を1億1500万円で購入するよう島田組合長らに打診してきた。島田組合長らは理事会で、それを受け入れる方針であると一方的に報告したという。

 複数の役員から一連の経緯を漏れ聞いたという総代の男性は次のように説明する。

 「理事会で決めた予算がいきなり倍の金額に膨れ上がったので、一部役員が『なぜ一方的に方針を決めるのか。もう少し慎重に検討すべきだ』と反発しているのです。残った土地を買わされた格好なのに、値引きもしてもらっていないため、不動産業者としっかり交渉せず、言い値をそのまま受け入れた疑いも持たれている。事情を知って反発している総代もいると聞いています」

 役員らによると、もともと事務所移転費用は建物建設費も含めて3億円はかかると見込まれていたという。年間収益規模5~6億円の同組合にとっては一大事業となる。そのため、歴代組合長は剰余金を貯めることに努めながら慎重に検討を進めてきた経緯がある。

 複数の関係者に確認したところ、「3月29日の理事会で購入金額を決議した。5月26日の総代会で承認されたらそのまま契約する流れになっている」という。疑問を抱いている理事は少数派で、理事会でそのまま決議されたようだ。

 「理事の多くは日和見主義で、執行部に批判的なことを言わない。何も聞かされていない総代らも『理事会で決めたことなら』と追認すると思われるが、看過できない問題だと思うし、この間の経緯について島田組合長が説明責任を果たすべきだと思いますよ」(前出・総代)

注目される総代会の行方

注目される総代会の行方【会津若松市河東町の移転候補地】
会津若松市河東町の移転候補地

 移転候補地とされる土地は同市河東町のJR磐越西線広田駅のそばに位置し、パチンコ店・ダイエー河東店が隣接している。進入路には砂利が敷かれ、資材、土砂が置かれていた。正式契約後にあらためて整備し直すものと思われる。

 前出・組合員によると、機械を置く倉庫などは数カ所に設置されているとのこと。総代会などは別の会場で行われるので、一般の組合員が事務所を利用する機会は少ないようだ。そう考えると、広い敷地は不要のように思える。駐車場は広く取れそうだが、建物を2階建てにすればスペースを確保できるし、パチンコ店の駐車場の一部を借りる手もありそう。執行部はそこまで議論したうえで土地取得を決めたのだろうか。

 島田組合長宛てに質問を送ったところ、文書で回答が寄せられた。一問一答形式で紹介する。(表記など一部リライトしている)。

 ――事務所移転を検討している理由は。

 「当組合の建物は築50年を迎え、建物全体が老朽化しており、耐震の問題等もあり、事務所移転を検討したところです」

 ――移転候補地が決定した経緯は。

 「当管内の中心的な市町村で探したが見つからず、会津若松市は市街化区域や市街化調整区域があり、事務所建設が制限されている中で河東の土地が希望する候補地として見つかり進めてきたところです」

 ――土地取得費用が当初予定から倍増したため、疑問に思う役員・総代もいるようだが。

 「移転計画の詳細を固めていく中で、将来に向け、さまざまな条件を積み重ねた結果であり、理事会において正式に承認されております。理事会で承認されてから総代会に提案するため、疑問に思う総代の方がいらっしゃることについて考えたこともありませんでした」

 「移転計画の詳細を固めていく中で、将来に向け、さまざまな条件を積み重ねた結果」としているが、具体的にはどういう考えで不動産会社からの提案を受け入れたのか、いま一つ見えない。一方の不動産会社にも取材を申し込んだが、タイミングが合わず、入稿期限までに話を聞くことはできなかった。

 「以前から一部理事が組織内の問題点を指摘しており、ガバナンス強化に乗り出さない執行部を批判してきた。今回の件は、そうした対立構図や同組合の体質を象徴する事例とも言えそうです」(同組合の内情に詳しい事情通)

 今年は3年に1度の役員改選期でもある。総代会に質問が出され、活発な議論が展開されるのか、シャンシャンと議決されて終わっていくのか、注目が集まる。

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