いしづか・じんろう いしづか・じんろう 東北大医学部卒。1985年に渡米、テキサス大准教授だった1994年に帰国。2011年から田村医師会長。2016年より県医師会常任理事を4期務め、2024年6月から現職。
福島県医師会は6月、任期満了に伴う役員改選で、現会長の石塚尋朗氏(1期、医療法人慶信會石塚醫院理事長・院長=小野町)の再任を決議した。過疎地の医業承継、中東情勢悪化に伴う医療物資不足、勤務医の働き方改革、医療DXなど現場を取り巻く課題は山積する。健康県づくりと真の医療復興をどう進めていくのか、話を聞いた。
県民に寄り添い、医師が役割を果たす医師会を目指す。
福島県医師会は6月、任期満了に伴う役員改選で、現会長の石塚尋朗氏(医療法人慶信會石塚醫院理事長・院長=小野町)の再任を決議した。過疎地の医業承継、中東情勢悪化に伴う医療物資不足、勤務医の働き方改革、医療DXなど現場を取り巻く課題は山積する。健康県づくりと真の医療復興をどう進めていくのか、話を聞いた。
――6月に会長再任が決議されました。
「就任当初と比べ、代議員や各委員会の委員から率直な意見・提言をいただけるようになりました。各種委員会をウェブ会議でも参加可能にしたところ好評でした。多忙な医師の負担を実感し、今期からは委員会を診療時間外に開催して、可能な限りウェブ併用の会議とします。
『顔が見えない』という声を受け、4人の副会長、郡市地区医師会長との協力体制を徹底し、県内4ブロックの状況を全体で共有する仕組みを整えました。また、郡市地区医師会長全員による『医師会長s』ユニットで『減塩・禁煙・脱肥満』、『自殺予防』などの啓発動画を県民に配信しています。情報伝達システムは災害時に不可欠なため、全会員のアドレス登録徹底が今期の目標の一つです。
医師会報では『今 現場で何が起きているのか~現場の声を聴く~』、『会長通信』を柱に、シンクタンクによる『医師として認識すべき医療保険制度』、『医療現場のサイバーセキュリティー』の各シリーズを掲載し、ホームページ刷新、SNS委員会新設、定例記者会見開催で発信力も高めています」
――県からの委託事業「医業承継バンク」の進捗状況は。
「県のご支援で現在まで25件の承継が成立しましたが、大半は人口密集の市街地です。医師が持続可能な経営を考えれば当然ともいえます。地域医療の場を守りたい医師と、志す地域医療を実践したい医師とのマッチングが実現することは本県医療の希望です。一方、人口の少ない過疎地での医業承継は思うように進まず、地域の医師の高齢化が進む中で待ったなしのところにきています。
何より大事なのは自治体が住民の声に良く耳を傾け、10年先、20年先を見通して慎重に動くことです。立派な建物より、そこで医療に従事する医師の姿勢・志・スキル、支える人材が地域医療の質を決めます。
医師を選べない過疎地こそ志高くスキルの高い医師が求められるので、この問題は医業承継の枠を超えて対応すべきです。県・県立医科大学と協議し、本県医療をけん引する優れた資質の医師には、経験を積む若い時期に過疎地医療で力を尽くしていただき、行政・自治体に万全の体制づくりを担っていただきたいです」
医療供給網強化を要望
――中東情勢悪化に伴う医療物資不足などの影響は。
「3カ月前の当医師会内調査で、医薬品・医療用手袋などの医療材料やエネルギーコストの上昇、一部製品の出荷調整等が報告されました。ナフサ流通不足によるプラスチック製品の品薄や大幅な値上がりもニュースになっています。先日、福島県病院協会と連名で県に『中東情勢の影響による医療提供体制の確保に関する要望書』を提出し、医薬品・医療材料の安定供給、エネルギー価格高騰への支援、医療提供体制維持への財政支援、情報提供体制の強化を国に強く要望することをお願いしました。幸い現時点で医療用手袋が入手できないという報告は届いていませんが、中東危機が医療現場を揺さぶらないよう、生産・流通システムの再考が求められます」
――2024年4月から勤務医の時間外労働上限規制が適用されました。県内の医療現場、特に救急医療・基幹病院への影響と実態は。
「規制導入を前に各病院でシフト調整、タスクシフト、タスクシェアの取り組みがみられました。県内の二次救急・三次救急を担う病院ではどのような状況下でも医療現場を守るという強い使命感で取り組みを強化してきました。私も医師会報で『今 現場で何が起きているのか~現場の声を聴く~』の連載を提案し、県内の病院長や勤務医の先生方に働き方改革の影響などを執筆いただいており、いずれ本にする予定です。
私と同年代の院長たちが月に3~4回も当直をされていることに頭が下がります。医療DX推進で電子カルテ導入が進み、ウェブ問診やAIによる画像診断が将来的に医師の負担軽減の一助となり、特定行為研修を修了した看護師や医療クラーク(医療事務作業補助者)とのチーム医療も進んでいくと思います。どのような時代でも医師と患者との信頼関係がすべての医療の基本です」
――国や県に強く訴えたいことは。
「震災復興に向けて本県はたゆまぬ努力を続けていますが、原発事故の影響は自然災害と異なる様相を呈し、目に見えない傷を負った多くの県民が将来への希望を持てずにいます。そうした点を踏まえ、当医師会の要請に耳を傾けていただきたい。一つは災害時医療の拡充です。大規模災害やパンデミックが実際に起こる想定で、各病院や自治体の対応力をあらかじめ把握するとともに、本県のJMATを強力な集団として組織するための支援をお願いしたいです。
二つ目は地域の医療格差解消です。すべての地域に二次救急対応の病院を配置し、取り残される県民をなくす必要があります。国・県が強い指導力で県内の実態を把握し改革することが不可欠で、市町村任せでは改善されません。
三つ目は地域医療を守る医療DXです。高齢医師のシステム導入への消極姿勢や費用面が問題となる中、当会は誰も置き去りにしない医療DXを基本方針にサイバーセキュリティー対策も進めています。日本医師会でも主張している通り、システム導入やセキュリティー対策にかかる費用は本来国が全額負担すべきであり、同時に拙速な推進で現場を混乱させ、高齢医師が廃業を選ぶことがあってはなりません」
――今後の抱負を。
「福島県医師会をさらに実力ある医師会に成長させ、県民を医療で支え、健康指標を改善し、福島県を健康県にしていきたいです。約2700人の会員とともに真の復興への一翼を担っていきます。震災・原発事故から15年、本県の人々は今なお風評被害や偏見に悩まされています。この状況下で医師会がすべきことは他県の医師会に情報提供し、働きかけることだと考え、昨年より『〝医師会から医師会へ〟プロジェクト』を開始しました。復興が進む相双地域の医師会・各医療機関の紹介、地域復興に向けた活動をパンフレットにまとめ、他県医師会や東北6県医師会の会合などで配布していきます。これからも県民に寄り添い続け、一人ひとりの医師が役割を果たす医師会を目指します」

























