中通りを南北に貫く国道4号。県内主要幹線道路の1つだが、県内全線4車線化はなされていない。そもそもこれまで、ぶっ通しで走行したことはなかった。そこで、難所を探るべく9月中旬、県内の〝始点〟から〝終点〟までをぶっ通し走行してみた。(末永)
約20%が片側一車線で県南地区に集中
国道4号は東京都中央区の日本橋を起点に、青森県青森市まで続く。総延長は838・6㌔で、日本最長の国道である。このうち、福島県は約111㌔で全体の約13%を占める。中通りを貫き、郡山市、福島市の主要都市を通る。
県内の〝始点〟は西郷村、〝終点〟は国見町。管理者は国(国土交通省)だが、西郷村から本宮市に入るまでの約54・4㌔は郡山国道事務所の管轄、本宮市から宮城県に入るまでの約56・7㌔は福島河川国道事務所の管轄と分かれている。
9月中旬、「国道4号県内ぶっ通し走行」を実行した。
最初に、その中で分かった基本データを記す。
まず、道の駅は安達(上下線)と国見(上り車線沿い)の2カ所しかない。もっとも、幹線道路だけあって、休憩・トイレなどで立ち寄れるところは多数ある。その代表格がコンビニエンスストアだが、本誌が数えたところ、上下線ともに20軒ずつ(計40軒、道の駅安達と国見に併設されたコンビニは除く)あった。ただ、立て続けに3、4軒並んでいるところもあれば、10㌔以上ない区間もあった。
ガソリンスタンドは、上り車線が27個所、下り車線が21個所。こちらもコンビニ同様、立て続けに数軒が並んでいるところもあれば、何㌔もない区間もある。
信号機は全部で180個所。市街地では、1分以上連続で走行できることはほぼない。かなりの頻度で信号待ちが生じる。朝夕のラッシュ時は1つの信号機を越えるのに、何度も待つこともあろう。
国道4号に直結している高速道路のIC(スマートICは除く)は、白河IC(東北道)、矢吹IC(東北道、あぶくま高原道路)、本宮IC(東北道)、伊達桑折IC(東北中央道)の4カ所。
以下は実際の走行記録と、その中で感じた課題について述べていく。
県南編
栃木県那須町から福島県西郷村に入るところがスタート地点。最初は片側1車線で、西郷村内を約3㌔走行すると片側2車線になり白河市に入る。ここから約6㌔は片側2車線だが、〝始点〟から約9㌔のところ、白河厚生総合病院への入り口を過ぎた辺りで、また片側1車線に戻る。
地元住民によると「郡山方面に向かう場合は、そこから道が狭く(片側1車線)なるほか、厚生病院に行く車も多いため、朝夕を中心に混雑(渋滞)する」という。
そこから片側1車線が約9㌔、白河市北部から泉崎村を経て、矢吹町に入るまで続く。〝始点〟から約18㌔のところ、矢吹町の東北自動車道、あぶくま高原道路の矢吹IC付近の1㌔ほどは片側2車線だが、すぐに片側1車線になる。
地元住民によると、「矢吹町の片側2車線から1車線になるところで、前方車のスピードが緩むため、追突事故などが起きやすい」という。同所に限らず、片側2車線から1車線になるところはそうした問題があるようだ。
このほか、地元住民によると、「以前は金勝寺交差点(白河市)の渋滞がひどかった」とのこと。同交差点は国道4号から、JR白河駅、市役所、小峰城などの市街地方面に向かう市道と交差していた。慢性的に渋滞が発生し、追突事故や交差点内の出合い頭事故が多かったが、2013年に立体交差点につくり変えられ、渋滞・事故が減少したという。
福島河川国道事務所が事務局となり、県(土木部)、県警本部(交通部)、国道沿線の市町村、東日本高速道路(ネクスコ東日本)東北支社などで構成する「福島県渋滞対策連絡協議会」という組織がある。その下部組織として、各地区のワーキンググループがあり、県南地区は県中・県南ワーキンググループに属する。
その中で、「主要渋滞箇所」がピックアップされ、対策が協議されている。県南地区の国道4号の「主要渋滞箇所」(交差点)は、白河市の女石(T字路、国道294号と交差)、泉崎村の泉崎(T字路、県道75号塙泉崎線と交差)、矢吹町の矢吹中町(県道44号棚倉矢吹線、県道58号矢吹天栄線と交差)の3カ所。
その中で、女石交差点は、交差する国道294号のバイパス(白河バイパス)が今年2月4日に全線開通した。現在はその後の状況をモニタリングしており、状況によって「主要渋滞箇所」からの解除を検討するという。
こうした事例はあるものの、まだまだ〝難所〟は多い。渋滞対策連絡協議会としての課題は多いということだ。これは、これから出てくる市町村(交差点)についても同様だ。
県中編
矢吹町から鏡石町に入り、〝始点〟から約25㌔地点、久来石交差点の手前で片側2車線になる。以降は、国見町まで約82㌔、片側2車線が続く。つまり、県中地区は鏡石町の一部(約1・3㌔)を除き、すべて片側2車線化されている。
前述・福島県渋滞対策連絡協議会では、須賀川市内は、大黒町(県道63号古殿須賀川線と交差)、須賀川駅入口(市道と交差)、池下(市道と交差)、滑川(市道と交差)、十貫内(市道と交差)が「主要渋滞箇所」に指定されている。郡山市内はバイパス(あさか野バイパス)化されたこともあり、都市規模の割に国道4号の「主要渋滞箇所」は、それほど多くない。大池北(市道と交差)、仁池向(県道143号仁井田郡山線と交差)、荒池下(県道357号岩根日和田線と交差)の3カ所(国道4号以外は多数ある)。
〝始点〟から郡山市までは郡山国道事務所の管内。片側2車線化されていないのは、西郷村の〝始点〟から約3㌔地点まで、白河市北部から泉崎村を経て矢吹町の矢吹IC付近までの約9㌔、その先から鏡石町久来石交差点付近までの約5㌔で、計約18㌔。
鏡石町内は、「国道4号 鏡石拡幅」として事業化され、昨年3月に完了した。この区間の沿線は商業施設や企業・工場が立地し、通勤や施設利用、物流などで交通が混在していた。拡幅(片側2車線化)後は、渋滞の緩和のほか、児童・生徒の通学の安全も図られたという。
現在、「国道4号 矢吹鏡石道路」として、矢吹町北浦から鏡石町久来石交差点付近までの整備が事業化されている。区間は4・8㌔で、2021年4月に事業着手した。このほか、矢吹IC付近の北側0・9㌔、南側1・3㌔(泉崎村)が、それぞれ「矢吹地区事故対策事業」、「泉崎地区事故対策事業」として片側2車線化が進められている。前者は拡幅工事、後者は改良工事という位置付けだが、片側2車線化にするという点では一緒。
それらの事業化までの一般的な流れについて解説しておこう。
まず道路ネットワークの課題調査、路線の必要性と効果の調査が行われる。その後、拡幅(4車線化=片側2車線化)するのか、バイパス化するのか、バイパス化する場合、高規格化するかどうかなどのルート・構造の検討が行われる。
「矢吹鏡石道路」を例にすると、交通混雑が発生していること、交通事故の多発地点が存在していること、東北復興の阻害要因となる物流のボトルネックが生じていることなどが課題だった。この対策について、地域住民の意見聴取(「矢吹鏡石道路」ではアンケートを実施)を行い、それを踏まえた方針策定、その方針についてさらなる意見聴取、それを踏まえた方針に改定――といった流れで決定していく(計画段階評価)。その過程で、前述したルート・構造なども決定される。
「矢吹鏡石道路」は、2018年1月に計画段階評価に着手し、翌年12月に計画段階評価が完了。その過程で、一部バイパス案も出たようだが、現道拡幅することになった。
その後は、都市計画・環境調査などを経て、国交相の諮問機関「社会資本整備審議会」に諮られる。「矢吹鏡石道路」は2021年3月の同審議会道路分科会東北地方小委員会で「概ね妥当」と評価された。これを受け、同年4月に事業着手した。
期待される効果は、渋滞緩和によるスムーズな交通、交通事故軽減、物流の効率化とそれに伴う地域産業活性化、迅速な救急搬送など。事業完了年度は示されていない。計画段階評価から事業着手まで3年かかっており、それだけでもかなりの時間を要することが分かる。
もっとも、これは事業者側(郡山国道事務所)の手順で、その前段で地元からの要望等がある。
ある首長経験者はこう話す
「道路でも、それ以外でも同じだが、国や県に事業をしてもらうために問われるのはプレゼン力。現状がこうで、こういった課題がある、だからこれが必要だ、と説得できるだけのものが必要になります。もう1つは熱意。プレゼン力に加えて、根気強く要望することが重要だと感じました」
実際に片側2車線化が図られるのはまだ先になるが、事業化されている「矢吹鏡石道路」、「矢吹地区事故対策事業」、「泉崎地区事故対策事業」の対象区間を除くと、郡山国道事務所管内(県中、県南)の片側一車線は約11㌔。郡山国道事務所によると、現状、その区間の片側2車線化の事業計画はないとのこと。
国交相「令和3年度全国道路・街路交通情勢調査 一般交通量調査結果」によると、片側1車線の区間が多い西郷村から矢吹町までの1日の交通量(上下線の合計)は、約1万2000台から約2万台。片側2車線化が図られている鏡石町から郡山市までは同約2万台から約4万5000台だから、前記区間の約2倍。さらに、前回調査(2015年)では、西郷村から矢吹町までの1日の交通量は約1万4000台から約2万3000台。この辺も拡幅が計画されない要因なのだろうが、混雑が発生しているのも事実。
関係者の熱意とプレゼン力が問われる。
県北編
郡山市を抜けて本宮市に入る。前述したように、鏡石町からはずっと片側2車線で、本宮市、大玉村、二本松市、福島市と続く。冒頭で触れたように、意外(?)にも二本松市ではじめて道の駅が登場する。福島市に入る直前にある道の駅安達は上下線それぞれに設置されている。そこから、伊達市、桑折町と続き、国見町に入り、同町役場を過ぎたところで片側1車線になる。そこから県境までの約5㌔が片側1車線化。ただ、下り車線(仙台方面)は「ゆずりあい路線(登坂車線)」として、約4㌔が片側2車線になっている。最後は片側1車線になり、宮城県白石市に入る。
国見町には道の駅国見があるが、上り車線(福島・郡山方面)側で、反対からは少し入りにくい。
〝始点〟からの走行距離は約111㌔、走破時間(途中、車を止めての写真撮影や休憩した時間などは除く)は約3時間だった。
前述・福島県渋滞対策連絡協議会では、本宮市の荒井(県道304号大橋五百川停車場線と交差)、本宮IC入口、二本松市の安達ヶ原入口(県道62号原町二本松線と交差)、油井(県道114号福島安達線と交差)、福島市の伏拝(市道と交差)、黒岩(市道と交差)、鳥谷野(国道115号と交差)、仲間町(国道114号と交差)、岩谷下(国道115号と交差)、鎌田(市道と交差)、北幹線東入口(県道387号飯坂保原線と交差)、伊達市の伊達(国道399号と交差)国見町の国見町役場入口(県道107号赤井畑国見線、県道320号五十沢国見線と交差)が「主要渋滞箇所」に指定されている。
本宮市から宮城県境までの区間は福島河川国道事務所の管轄。片側1車線区間は「伊達拡幅」として長年事業が進められている。事業がスタートしたのは、40年以上前の1981年度。最初に、伊達市(当時は伊達町)の伊達交差点から北側、桑折町上郡までの3・6㌔区間の片側2車線拡幅事業に着手した。拡幅が完了した個所から順次供用開始となり、1995年10月に同区間は開通となった。
1995年度には、桑折町上郡から国見町石母田までの5・5㌔が事業に加えられ、全体延長が9・1㌔になった。桑折町上郡から同町北半田までの2・2㌔は2011年12月までに開通し、そこから国見町役場前までの1・7㌔は2020年3月に開通した。残る1・6㌔は、今年度中の全線開通予定。
その先は、「国見地区付加車線整備事業」として2015年に事業着手している。前段で、下り車線(仙台方面)は「ゆずりあい路線(登坂車線)」として片側2車線になっているところがある、と書いたが、同事業はその延長。つまり、下り車線(仙台方面)に限り、県境付近まで「付加車線(ゆずりあい路線)」が設けられ、片側2車線化される。事業完了年度は示されていない。
上り車線(福島・郡山方面)は、いまのところ「(片側2車線の)事業計画はない」(福島河川国道事務所の担当者)とのこと。
県内の国道4号で片側1車線区間は約23㌔で全体の約20%。その大部分が県南地区に当たる。このうち、片側2車線化の計画がないのは、上り車線が約16㌔、下り車線が約11㌔ということになる。
長年、県内の政治・経済を見てきた人物はこう話す。
「かつては、天野光晴氏や亀岡高夫氏(いずれも故人)など、建設大臣経験者で、建設省に強い影響力を持つ国会議員がいたから、それほど強く頼まなくても整備が進んだ。いまはそれだけの影響力を持つ人がいないのだから、もっと強く要望しなければなかなか進まない。要は、県を始めたとした地元関係者のアプローチが足りないのだと思う。加えて、県選出国会議員も、あまり熱心ではないように感じる」
前段で、事業化には熱意とプレゼン力に優れた地元からの要望が欠かせないと書いたが、やはりそういうことなのだろう。
総じて言うと、この道路の連続走行は決して快適とは言えない。全線片側2車線化、渋滞対策など、まだまだ改善すべきところは多い。