財政がひっ迫する須賀川市と喜多方市

財政がひっ迫する須賀川市と喜多方市

須賀川市と喜多方市の財政状況がひっ迫している。その要因としては、人口減少が進む中で歳入増加が見込めないこと、新型コロナウイルス感染症対策、災害対応、物価高騰対策など、喫緊の事業が立て続いたことなどが挙げられている。ただ、それは両市に限ったことではない。両市の現状とほかの県内市町村の状況を調査した。

「適正」には程遠い経常収支比率と財政調整基金残高

須賀川市役所
須賀川市役所
大寺正晃市長
大寺正晃市長

須賀川市は2024年4月に「須賀川市行財政改革取組方針」を策定した。これは橋本克也前市長時代に策定されたもので、以下の市長メッセージが記されている。

《本市を取り巻く環境は非常に厳しく、様々な課題が山積しており、市民ニーズが多様化する中、人口減少と少子高齢化、原油価格などの物価高騰、さらには、頻発し激甚化する自然災害など、広範にわたる課題に間断なく対応する必要があります。これまでも、市民生活の安全・安心を第一に、東日本大震災からの復旧及び創造的復興、度重なる地震や豪雨による災害、新型コロナウイルス感染症対策などに、時機を逃さず、スピード感をもって対応するため、基金からの繰入れ、あるいは市債の借入れが続きました。一方、新たに生じる財政需要に対し、経常的な収入は不足しており、基金の取り崩しで補填せざるを得ないなど、財政構造の硬直化が進んでおります》

このため、行財政改革が必要ということ。

その後、2024年7月の市長選で大寺正晃市長が誕生すると同時期に「集中改革プラン」が策定された。先の「方針」は2024年度から2028年度までの5年間が対象だが、その中でも2025年度から2027年度までの3年間で集中的に取り組むべきことをまとめたのが同プランだ。

同プランでは①事務事業の見直し、②公共施設マネジメントの推進、③健全な財政運営の推進、④税外収入の確保・拡大といった重点取り組み事項が定められている。

その中でも話題になっているのが公共施設マネジメントの推進についてで、昨年3月、大寺市長は以下の声明を発表した。

「集中改革プラン」では、「公共施設マネジメントの推進」を早期に取り組むべき事項としておりますが、本市の現状は、多くの施設で耐用年数の経過が進み、老朽化が進行しているため、今後、このまま大規模改修や建替えを進めると、多額の更新費用が財政を圧迫することが見込まれております。

特に、令和2(2020)年度に策定した「市公共施設等個別施設計画」では、今後36年間の施設の維持更新費用の推計を算出しておりますが、全ての施設を維持した場合、約3166億円の費用が必要となり、計画策定時の推計でも2158億円の不足が見込まれております。

(中略)このため、今後、一部の公共施設において、実験的に開館時間の短縮や休館日の追加を実施するとともに、「市公共施設等個別施設計画」における再編時期の前倒しにより、施設の統廃合を進めるなど、経常経費の削減を図りながら、「集中改革プラン」の目標である「経常収支比率の改善」と「財政調整基金残高の確保」の達成を目指し、各種取組を推進してまいりますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。

この件については市議会とも協議しながら議論を深めており、昨年12月にはふくしま森の科学体験センター「ムシテックワールド」など12施設について、民間事業者への市場調査を実施し、利活用の提案を募っている。

市によると「今年度はそうした点での準備の期間で、新年度から本格的に取り組むことになる」という。

一方、喜多方市は昨年9月に「喜多方市財政健全化プラン」を策定した。その前文には次のように記されている。

《少子高齢化・人口減少により市税の大幅な増加が見込めず、普通交付税が減少する中、喜多方市総合計画等に基づく各種施策を着実に推進し、国の少子化対策・こども政策やDX、カーボンニュートラルの推進の取組など、多様化・複雑化する行政課題に対応するとともに、学校給食費負担軽減などの子育て支援、産業の振興等を図り、若者が定住し、安心して生み育て、働くことができる喜多方の実現のための様々な施策を進めてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症、エネルギー価格・物価高騰、令和4(2022)年8月発生の豪雨災害に対する迅速な対応、さらに令和6(2024)年度の近年まれにみる豪雪災害に加え、人件費・物件費の高騰による職員人件費や扶助費等の経常的支出の大幅な増加への対応等により、財源不足を補うための財政調整基金の残高は合併後における最高額(2017年度末約32億円)と比べ大幅に減少しており、新たな行政需要や不測の事態への機動的な対応に苦慮する財政状況にあります。また、財政運営では、「真に必要な行政サービスに要する経費の計上」を基本とし、全事務事業の継続的な見直しや終期設定等の補助金の適正化等を前提とした予算編成を行うとともに、公共施設の統廃合等を進めてきましたが、結果として十分な見直しに至らなかったことも、経常的支出が増加している要因の一つと考えています》

こうしたことから、財政健全化に取り組む必要があるということ。期間は2025年度から2027年度の3年間。

財政調整基金が枯渇

喜多方市役所

遠藤忠一市長

同市の問題は財政調整基金が枯渇しつつあるということに尽きる。財政調整基金とは、一般家庭でいう「貯金」に当たる。当然、あればあっただけ何かあった時の安心材料になる。プランの前文にあったように、2017年度に約32億円だったが、2024年度は約5億6000万円まで減少した。

一般的に、財政調整基金は標準財政規模の10%程度が適正とされている。「何があった時のためにそのくらいの貯金は持っておいた方がいい」という目安のラインだ。それで言うと、喜多方市は約15億円が適正ラインで、現状は10億円弱足りていない。

「歳出超過が課題で、そうした構造から脱却するため、財政健全化プランに基づいて歳出削減などに取り組んでいます。この実施期間の中で、(目安のラインとされる)『財政調整基金15億円以上の確保』を達成できればと考えています」(喜多方市財政課)

県内他市町村の状況

以上、両市の状況と各種計画に基づく取り組みについて簡単に見てきたが、両市が財政ひっ迫の要因として挙げた人口減少が進む中で歳入増加が見込めないこと、新型コロナウイルス感染症対策、災害対応、物価高騰対策などの不測の事態に対応するための事業が相次いだこと等々は、両市に限ったことではない。人口減少が進む中で歳入増加が見込めないということは、県内のみならず地方の多くが抱えている共通の課題だ。同様に新型コロナウイルス感染症対策、物価高騰対策も全国共通。地震、水害、雪害などの災害対策は、全国・県内共通ではないものの、近隣市町村は同様の対応を迫られた。

そこで気になるのが、ほかの県内市町村はどうなのかだが、その前に県議会でも関連の話題が出たので紹介したい。昨年12月定例会で、渡辺康平議員(須賀川市・岩瀬郡)が以下のような一般質問を行った。

「令和6年(2024)度の県内市町村の経常収支比率は、30市町村が90%を超え、財政の硬直性が問題となっている。私の選挙区の須賀川市は、経常収支比率が101・2%で、人件費、扶助費、庁舎管理費等が5年間で30億円以上増えた。その理由として、令和元年東日本台風、新型コロナウイルス感染症、物価高といった災害や社会情勢を原因としたもの、東日本大震災で倒壊した庁舎、公共施設の建て直し、新設など、これらの維持管理費が増大し、経常収支比率が上昇している」

質問は、こうした状況を説明しつつ、「財政状況が厳しい市町村への支援にどう取り組むか」という趣旨だった。

これに対し、内堀雅雄知事は次のように答弁した。

「福島県市長会との意見交換会で切実な声をうかがった。県では、これまでも将来の財政運営に関する財政診断の実施など、様々な機会を捉え、各市町村の実情や財政需要を踏まえた技術的な助言等を行ってきた。健全な財政を維持していくために、市町村が財政改革をどのように進めていくかを共に考え、後押しをしていくことが広域自治体として重要な役割と考えている。財政状況が特に厳しい市町村に対し、福島県市町村振興基金を活用した支援の方法についても検討を進めていく」

別表に、県内市町村の経常収支比率と財政調整基金残高の推移をまとめた。須賀川市と喜多方市の状況からコロナ禍が1つの転機と捉え、コロナ禍前(2019年度)と直近(2024年度)を比較した。

2024年度の経常収支比率を見ると、渡辺議員が指摘したように、多くの市町村が90%を超えていることが分かる。

経常収支比率は、収入に対して絶対に必要な支出の割合を示すもの。一般家庭に例えると、収入に対して、家賃、生活費(食費・日用品費)、水道光熱費、通信費といった固定費が必要になる。固定費の割合が低ければ自由に使えるお金が多い。自治体財政も同様で、この数値が低いほど、新規事業や貯蓄(財政調整基金)に回せるお金が多いことを意味する。一般的には70%から80%程度が妥当とされ、80%を超えると「財政が硬直化し始めている」と判断される。

それを踏まえて言うと、県内市町村の大部分が80%超で、90%オーバーも少なくない。須賀川市は100%を超え、喜多方市は2019年度と比較すると多少良化はしているものの、97・4%と高い水準になっている。全体的に見ても、2019年度と比較すると多少ながら良化しているところが多いものの、財政の硬直化が見て取れる。

一方、財政調整基金を見ると、やはり須賀川市と喜多方市の減少が目立つ。須賀川市はこの5年間で約29億5000万円から約3億3000万円に、喜多方市は約26億6000万円から約5億6000万円になっている。いずれも前述した目安のラインを下回っている状況だ。

こうして比較すると、やはり須賀川市と喜多方市は、財政状況がひっ迫していることがうかがえよう。

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