政経東北|多様化時代の福島を読み解く

私が出産後も働き続けた理由

私が出産後も働き続けた理由【福島県内在住フリーライター みきこ】

福島県内在住フリーライター みきこ 

県内の女性は働くことについてどういう思いを抱いているのか。県内在住のフリーライター・みきこさんに自身の体験や周囲の女性の声について執筆してもらった。

 就職して結婚、出産するまでの約10年間、介護業界で働き、副業でライターの仕事もしていた。なかなか子宝に恵まれず、「仕事との両立は難しい」とされる不妊治療を受けていたが、その間も働き続けていた。たとえ妊娠・出産しても仕事を辞めるつもりは全くなかった。

 ようやく子どもを授かり、1500㌘にも満たない極低出生体重児を出産した。子どもは病弱で心臓に疾患があった。育休が終わるとき、「仕事で代わりの人はいるけど、母親の代わりはいない」と考え、休職して子育てに専念することにした。

 ただ、「病気がちな子を抱えていたら、これからもっとお金がかかるはず」と、子どもが1歳を過ぎたころライター業を再開した。在宅で子育てしながら働けて、文章と向き合う仕事は性に合っていた。

 子どもは成長に伴い体が丈夫になり、運動制限が解除された。3歳になると幼稚園に入園した。自分の時間が増えて、まず考えたのは「これからどう仕事をしていくか」ということだった。

 「男性は妻を養う」、「女性は夫がいるからいつでも仕事を辞められる」という価値観を持つ人はまだまだ多い。実は私もその一人だった。

 しかし、子どもとの生活で、仕事に対する考えは大きく変わった。「生活の中心は子どもだが、ある程度経済的に自立したい」、「育児、家事の合間にできる仕事をしたい」と望むようになった。小さい子を持つ母親は同じく考える人が多いのではないか。もちろん、これは配偶者が収入を得ているからできることで、そのことに感謝しなければならない。

 一方で、「キャリアは捨てたくない」、「家計が厳しいから仕事したい」、「小さい子どもとずっと一緒だと息が詰まるから働きに出たい」という意見もある。どの意見も正しいし、その人が置かれた状況によって考えが違うのは当然である。

 私の場合、休職中も介護の仕事の同僚や上司から、定期的に連絡を受けていた。会社から必要とされていると実感できてうれしかったし、仕事自体も好きだった。だからパートとして復職し、ライターの仕事も副業として続ける道を選んだ。職場と同僚の理解を得て働き続けられるのだから恵まれている。

 もっとも、すべての女性が希望する形で働き続けられるとは限らない。

 介護業界に限らず、多くの業界でパート勤務を希望する女性は「平日の昼間だけ働きたい」という人が圧倒的多数だ。家事・子育てとの両立を考えてのことだろうが、当然好条件の仕事には応募が集中する。友人・知人からは「人にはないスキルや資格がないと、希望の条件で働くのは難しい」、「継続して働きたかったが派遣切りにあった」、「仕事は好きだったが職場で派閥があって、人間関係が苦痛で仕事を辞めた」という声をよく耳にする。

 逆に、キャリアを積んでバリバリ働きたい女性からは「やりたい仕事ができず自ら離職した」という意見が多く聞かれた。ちなみに、厚生労働省の令和2年雇用動向調査結果によると、女性の転職入職者が前職を辞めた理由のトップは人間関係だ。

 男性に比べ、女性は結婚・出産などライフステージの変化が多く、キャリアが中断されがちだ。

 家庭生活を充実させながらやりがいのある仕事に就き、キャリアアップしていける働き方が理想だが、それを実現できる企業は県内にどれぐらいあるのだろう。

 こうした点が、本県において女性の県外転出が多い一因となっているのではないだろうか。

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